別れ
あれはまだ俺が12歳の頃だった。
外は蝉の聲で五月蠅くまだ6月なのに真夏のような暑さだった。
「あっちぃーな」声にしても決してなにも生まれない。わかっていても声に出さなければ気が済まない。そんな頑固なのかわがままなのかよくわからない子供のような感情を声に出した。
部屋は太陽の直射日光で蒸し風呂だった。
1階の冷蔵庫からさっき持ってきた茶はさっきまで角ばった氷もいまではすでに丸くなって小さくなっていた。
サイダー飲みてぇーと思いながら
海崎陸人はお茶の入ったコップを傾けた。
にしても大阪は暑すぎる
なぜ暑いかについてこの前友達に教えてもらった?
海辺の工業地帯が昼夜問わずに火を炊いてその熱は浜風と共に平野に流れていきそして金剛山地にぶち当たり平野に停滞する。
そして開発されている大阪は特に緑が少なく道路が多く太陽光を吸収しやすく熱は逃げにくい。
こんな条件が重なり深夜にならないと温度が下がらない。
まったく開発してくれなんて誰が頼んだのやら。
12歳の子供が知ったとこで何も解決しない事はわかっていた。でも12歳の俺には変えれるという希望は無くはなかった。
最近父さんに会ってないな〜
ふと飾ってる家族写真を見てそう思った。
父さんは海軍の何かでずっと家にいない。
会えたと思ったらまた任務。
まったく扶桑海軍ってそんなに人員不足なのか?と思うほどだった。
父のことを考えてると今度は一階の母から声が掛かった「陸人〜!七海ちゃん来たわよー!」と大きめの声で伝えてくれた。
「もう来たのかよ…はーい!すぐ行くから待っててもらって!」と適当に返事をした。
七海は俺が小学校からの幼馴染でよく気が合う。
男女同士って事だからいっその事と思い最近付き合った。
付き合ったといっても実質何も変わらない。いつもの二人であった。
Tシャツを着替えて急いで下に降りて玄関で靴を履いてるときに母からまた声が掛かった。
「え?」半分母の話を聞いてあんまり理解できなかったけど意味はわかった。
でもすぐにわかりたくないからあえて
え?って反応になってしまった。
それは生まれてから経験したことのない
人との【別れ】であった。