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称号奪って……何するの?  作者: ペーパレス
アンちゃんとゆかいな仲間
5/5

首都にて1(編集予定)

首都はとても多く人がいる。

人種も様々で、中には猫や犬、ウサギなどの耳を持つ亜人から、もっと人間離れした、ゴーレムやトカゲ人間のようなものまで多種多様だ。

町並みはレンガや木で作られたものが多く、かなりにぎわっている。

基本的に高い建物はないのだが、中には例外もある。

その例外こそが、今回の目的地。

魔術機関マナルス支部である。

城のような外観で、かなり目立っている。


「今目指しているのはあのでかい建物だよな?」

「はい、あの建物が今回の目的地です」

「じゃあ、あそこに行ったら今回の目的は終了なんだよな」

「そうですね……名残惜しくはありますが」

「まあ、名残惜しいと言ってもらえたのはうれしいし、これからも仲良くしてくれ」

「これからは客と店主としての関係になるが」

「さてさっそく、魔術機関本部に行くのか」とイーナスに確認する。

「今日はもう遅いですし、一旦宿を探しましょう」

「問題ないですよね、カナルさん、ザヘル様」

俺とザヘルはともに一言。

「問題ない」

その返事に、イーナスは笑顔で答える。

「わかりました、私に任せてください」

「最高の宿を探しますよ」

意気揚々とイーナスが歩きだしたので、俺とザヘルはついていった。


イーナス先頭で街中を探していると、早速お気に入りの宿を見つけたようだ。

「ここ、ここは本当にいい宿ですよ」

笑顔で勧めてくるイーナス、今までで一番楽しそうである。

俺は、どれどれと思いながら前に出ると、その豪華さに驚きを隠せなかった。


確かにすごくよさそうな宿である。

豪華な外装はさほどされていないが、漂ってくる上品さがなんとも魅力的である。

白の外観が目立っていて、夜でもすぐに見つけられそうだった。

利用者はと言うと、俺のような貧乏人はいなく、貴族や金持ちがメインのように見える。

俺のような貧乏人には不釣り合いで、苦笑いしてしまった。


そんなこと気にせずに、指をさしながら嬉しそうにこちらを見てくるイーナス。

俺は正直違う宿がいいと考えていたため、ザヘルへと視線を飛ばした。

アイコンタクトで「他の宿がいいな」と送ると「わかりました」と言わんばかりの視線が飛んできた。

親指を軽く上げているため、俺の意思が通じたのだろう。

少しの旅だったが、少しはザヘルとも分かり合えたのかもしれない。

俺とザヘルの視線に気が付き、イーナスは首をかしげながらこちらを見てくる。

「どうかしましたか?」

「いや、別に」

「じゃあ、ここでいいですよね」

この瞬間俺とザヘルは一緒に言葉を発した。

「ここでいいです」

「他の宿にしよう」

あれ、意思疎通できたと思ったのに全然違う結果になったぞ。

その結果に俺とザヘルは困惑していた。


俺はこそこそ声でザヘルに確認をとる。

「あれぇ、俺はこの宿以外がいいなと思っていたんだが」

「えぇー!? 私はこの宿がいいと言うアイコンタクトだと思いましたよぉ」

「それなら、アイコンタクトなんかしないだろ、普通」

「あっ、確かにその通りです」

俺とザヘルのこそこそ話がイーナスには聞こえていたらしく、少し悲しそうに一言。

「この宿じゃダメですか?」

「ダメじゃないんだけど、正直予算がなくて……ごめん」

その言葉を聞いてイーナスは少し考えている。


「それなら大丈夫です」

「大丈夫って?」

「ザヘル様が払ってくれます」

小悪魔めいた顔でザヘルのことを見るイーナス。

「えっ!?」

ザヘルはなぜ? と言いたげだが、言葉には出していない。

「え??」

イーナスは、出さないんですか? と言いたげだが同じく言葉に出さない。


「ま、まぁこのぐらいなら払いますよ、カナルさんにもお世話になりましたし」

少し暗い雰囲気になりながらイーナスの話を了承する。

「やりましたね、カナルさん」

「お、おう」

申し訳ない気持ちでいっぱいの俺はザヘルの顔を見ることができずにいた。


宿では俺とザヘルが同室で、イーナスが一人部屋だった。

部屋の内観はきれいで豪華な装飾をされている。

ベッドはふかふかで夜ぐっすり寝れそうだ。

窓はピカピカで、外の夕焼けが部屋の中に入り込んで淡く赤い色をしている。


ザヘルとともに、とりあえず荷物を部屋に行き、くつろぎだすと、俺は重要なことに気が付く。

二人だけだと気まずい


沈黙の時が流れる。


さすがに、まだあって間もない人とこの沈黙は厳しいなぁ

だが、会話のネタが思いつかない。

じゃあどうするか……

そうだ、とにかく適当に会話を振ってみよう。

「ザヘルって」

「どうしましたか」

「貴族なんだよね?」

「そうですね」

「何で財を成したの?」

「武勲です」

「へぇー」

……会話が続かない。


じゃあ、どうするか

そうだ、イーナスのことについて聞いてみよう。

「イーナスとザヘルの関係って何なの?」

「友人です」

「へぇーそうなんだ」

「なるほど」


また沈黙だ。

どうしよう、もうこのまま寝ようかな……

そんなことを考えているとザヘルの方から話しかけてきた。


「カナルさんはあの店を一人で経営しているのですよねぇ」

「そうだけど」

「結構忙しいのではないですかぁ?」

「いやいや、基本暇だよ、常連しか来ないし」

「そうなんですか……まあ最近は不景気ですしねぇ」

「そうなんだよ、わかってくれる?」

「わかりますよ」

「貴族の友人に商人の家系もいますし」

「商人の家系の友人がいるなら今度紹介してほしいな」

「喜んで」


会話が終わりかけるとまた、ザヘルが話を振ってきた。

「そういえば魔法道具って具体的にどんなものなんですかぁ?」

「そうだよねぇ基本知らないよね」

「教えてくださいよぉ」

「魔法道具ていうのは、魔法を使えない人が魔法を使えるようにしたものなんだ」

「だから、少量の魔力で魔法を出すことができる」

「まあ、発動には条件があるけどね」

「前回の戦いで出てきた高度限界の能力は、ナイフを投げていることが条件みたいだね」

「もう一つの二回攻撃が入った奴は殴ることが条件」

「まあこんな感じだよ」

「なるほど・・・いろいろあるんですねぇ」

「そうだよ、今度また困ったことがあったら聞きに来てくれたら、すぐに答えるよ」

「ありがとうございます」

「じゃあ、私はそろそろ、外に買い出しに行ってきますねぇ」

「あいよ」と俺は手を振って見送った。


一人になってしまった。

正直二人の時よりは気まずくないが暇である。

三人の時は話しやすかったザヘルだが、二人になると本当に話しにくくなったな。

でも、こっちのことを気遣っていたのかもしれないな。

俺が必至で話をしようとして、ネタ探しをしている時に、自ら助け舟を出してくれるんだから。

あれが貴族のたしなみと言うやつなのかな。

俺はそんなことを考えながら、ベッドでごろごろしていた。


ごろごろしていたが寝付けない

「仕方ない、外に出るか」

俺はまだ暗くなりきっていない外へと出るのだった。


外はまだ市場がにぎわっている。

「滅多に来ない都会ならば、魔法道具のニーズを調査しよう」

とりあえず市場全体を見て回ることにする。


まずは一番近くにある魔法道具屋エルド魔法店に入ってみよう。

「いらっしゃい」店員らしき少女が快く迎えてくれる。

なかなか好感触な店だ、まあ、ライバルだけど。


店の雰囲気は雑多ではなく、スペースごとに明確に商品が並んでいる。

よく言えば見やすい店だが、悪く言えば、専門性がない店のようにも思えた。

とりあえず俺は店主のところに近づき、質問をする。

「どうも、あんた店長かい」

「そうだ、あんたはどんなものを探しているんだい」

「いやぁ、お恥ずかしいんだが、俺は同業者だ」

「なるほどライバルかい、そのライバルが何の用だ?」

「どんなものが売れているか聞きたくて」

「なるほど……それだと」店主は俺に対し手でしっしとやってきた。


だよなぁ基本教えないような

「わかったよ、今回は帰るよ」

渋々店から離れ、新たな店を探し出す。


リーナの魔法石店、女性店長が切り盛りする店だろう。

とりあえず入ってみると、こぎれいな内装をして、高級そうな魔法道具が多く置いてある。

先ほどの店とは違い、複数の商品があるわけではないが、一つの分野に特化した店構えだ。

店員などはなく一人の魔術師が経営しているようだ。

その魔術師は現在、客と話し込んでいる。

と言うか、値切られている。


「これは少し、高いと思うんですよね」

「そうは言われましても、この町ではこれが普通ですし」

「えぇーそんなことないでしょ」

「そんなことあるんです」

「じゃあ、これも買うから値切らせてもらえませんか?」

「いや、そういうことじゃなくて」

「これもダメか」

値切りをあきらめない客と店主の攻防。

見ていると店主がかわいそうになってくる。

確かに少し割高ではあるが、この金額を維持しないと店の土地代などが払えないのだろう。

事情が分かると尚かわいそうに思い、助け舟を出すことにした。


「ちょっと、そこのお客さん」

「こういうのはできない店もあるんだよ」

「むやみやたらに値引き交渉されたらお店の人も迷惑だろう?」

それに対して、文句を言っている客が振り返る。

「関係ない人は……あっ」

俺は、この瞬間話しかけた奴があいつだと気づいた。

そう、イーナスだった。


「イーナス、何してるんだ?」

イーナスは少し困惑気味に、一言。

「お買い物ですけどぉ」

「あんた、騎士だろ値切りなんかすんなよ」

「……う」

「反論できません」

分が悪そうにイーナスは店の店主に謝罪。

「申し訳ありません、先ほどのことは忘れてください」

悲しそうな顔であるが仕方ない。

俺も、咄嗟に一言。

「すみません、今回はこれで許してくれ」

「いえ、謝らないでください」と店主の方はと言う。

「昔はこんなに魔法石も高くなかったんですけど」

「最近はピアスが買い占めをしているせいで何処も品薄状態らしです」

「店にまでピアスの影響が出ているんだ」

「そうですね、ピアスは昔は義賊でしたが、現在では迷惑な盗賊のようになっています」


ピアスとは道中でからんできた集団のことである。

あいつら、こんなに迷惑かけていやがったのか。

まあ、俺には関係ないことだし、イーナスを連れて外に出よう。

「イーナス、行くぞ」

「うぅぅ」イーナスはとてもほしそうな顔で魔法石を眺めている。

「イーナス?」

「うぅぅ」

「イーナス!!」

「うぅぅ」

一向に動こうとしないイーナスに対し俺は仕方なく店の店主に提案をする。

「申し訳ないのだけど、魔法道具と魔法石を交換してくれないか?」

「えっ、ものによりますがいいですよ」

「じゃあ、これなんてどうだ?」

俺は手持ちの閃光玉10個を出した。

「これは、閃光玉ですね、それも10個も」

閃光玉は割と交換すると喜ばれる。

なぜかというと、魔物に襲われたときや野党に襲われたとき、逃げるのに使えるからだ。

実は俺の道中は平和だが、世界は割と危険であふれかえっているため、このような護身アイテムは非常に便利である。

「いいですよ、その魔法石は差し上げます」

店主は快く交換に応じてくれ、俺はその魔法石をイーナスにプレゼントした。

「これ、あげるよ」

「いいんですか? もらっても」

「別に構わない」

「こんな上等な魔法石まだ俺には不要だし」

「それなら、喜んでいただきます」

「ありがとうございます」

「礼ならいいって、さんざん助けてもらっているし」

「わかりました」

笑顔で俺に微笑みかけて、彼女は宿へと帰って行った。


俺も、一通り市場を歩き疲れ、宿に帰ろうとすると、いきなり少女がぶつかってくる。

「いてぇ」

「なんだ?」


少女も痛そうに尻もちをついている。

俺は咄嗟に少女に近づき、手をさし伸ばす。

「大丈夫かい? 君」

その手をつかむかと思いきや、払いのけ、勢いよく少女は走り抜けていった。


俺は、なんだったんだと思いながら服を確認すると、あるはずのものがないのに気が付く。

「あれぇ、財布がない」

「やられたぁ」


俺は財布をさっきの少女に奪われていたのだった。


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