首都へと向かう道2(修正予定)
大幅に変更をしました。 興味があったら読んでいただけるとありがたいです。
レブを探しながら、村の奥へと向かう俺たち。 レブとは俺たちに散々煮え湯を飲ませてきた卑劣漢だ。
奴を追い、村の奥まで来た俺たちは、殺風景な風景に唖然としていた。 村の奥とは言ってもほとんど、廃屋しかなく、手入れをされていない住居の数々は草が生い茂っている。 村の奥と言うよりも森と言った方が正しいかもしれない。
「レブの野郎どこに行ったんだ?」悪態交じりに、俺は確認を取る。 役に立たない俺だが、レブを懲らしめてやりたい気持ちは、人一倍だ。 なんたって今回の被害者一だからである。
「そんなこと知っていたら私かザヘル様がすぐに向かいますよ」イーナスは呆れ気味に俺の質問に答える。 髪の毛をファサーとかき上げ、周囲に目を凝らしている。
俺たち四人は途方に暮れている。
「このままではらちがあきません。 二手に分かれて行動をしましょう」ザヘルがこの状況の打開のため、提案をする。
「そうですね。 このままだとカナルさんの毒の進行も気になりますし」イーナスは少し考え提案に承諾した。
「分け方としたら、私は一人で大丈夫ですよぉ。 イーナスとカナルさん、少年は任せました」イーナスと俺に任せザヘルは周囲の散策を始める。
「じゃあ、探しますか。 カナルさんは少年を守ってください」イーナスと行動を共にし、一緒に森の中を散策する。 森の中は特に何もなく、誰かの隠れ家のような場所もない。 俺たちの方は、このまま収穫なしのまま終わりそうと思っていたが、小さな声が聞こえてくる。
足を止め、周囲を見渡すが誰もいない。 俺の行動に疑問を抱いたイーナスが話しかけてくる。
「どうしましたか? カナルさん。 何か見つけたんですか?」イーナスの質問に対し俺は答えず、人差し指を立てる。
「あ……きづ……」小さな声が聞こえてくる。 男のように野太い声ではなく、少女のような声である。
イーナスも俺と同様に気が付き、周囲の警戒を始める。 聖剣リーリスを抜き、構え始めた。
「気が付かれちゃったね!! リン!!」謎の少女が木の上から俺たちを見下ろしている。 妙にテンションが高く、馬鹿そうだ。
「だから、言ったじゃない、馬鹿みたいに話すのはやめようって」リンと呼ばれる少女が、冷静に馬鹿そうな少女に話しかける。
「でも、暇じゃん!!」相変わらず馬鹿そうな声で話を続ける。
「私たちは奇襲がメインだから我慢しなさい」リンは冷静ではあるが少し怒りを覚えた口調である。
「あなたたちは一体? 何者ですか?」イーナスは二人の会話にあっけを取られて、困惑しながら確認する。
馬鹿そうな方がまず口を開く。「あたしはレンっていうんだよろしくね」馬鹿そうでいてあざとくウインクをしてくる。 活発そうな外見で、いかにも盗賊と言うイメージの少女である。 髪の毛は淡い赤のポニーテールで、身長が低く、素早そう。
冷静な方はその光景をヤレヤレと見ながら、「私はリンです。 お見知りおきを」と丁寧に返してくる。 レンとは同じ格好だが、顔が常に無表情でまったく笑っていない。 髪の毛は淡い赤のサイドポニーである。
どう考えてもこの二人はレブの仲間だが、一応の確認を込めて、俺は質問をした。
「レンとリンはレブの仲間なの?」
「残念ながらそうです。 あのクズ男は私たちの仲間です。 できることなら私たちが殺したいですが、残念ながら仲間なので……」リンはレブを嫌っているようで散々な言い様である。
「まあ、でも散々言っても仲間だから、あんたたちの邪魔はさせてもらうよ。 っと、その前に、そこの子供と男の君、物陰に隠れなよ。 危ないからさ」レンは俺たちにアドバイスをしてくれた。 確かにこの戦闘に入ると少年にも、俺にも危険が及ぶ。
「なんで俺にまで気を遣うんだ?」俺は恐る恐る質問した。
「だった、君、戦力外でしょ」ズバッとレンが俺について言い当てる。 そうです。 確かに戦力外です。 少女に慰めてもらうような男です。 想像通りの言葉にプライドがズタボロだが、変に男気を見せても迷惑なだけである。 そんな役に立たないプライドならば、犬に食わせてしまえと思い、少年一緒に物陰へ隠れた。
「あんたら、いい奴だな」俺は素直に二人をほめると。
「ま、まあ、敵だけどね」とレンは照れながら一言。
対照的にリンは俺を見て舌打ちをし「プライドはないんですか?」と苦言を呈してきた。
「こんな状況で足手まといになるようんプライドは持ってはいない」と俺はその苦言に反論した。
俺たち二人が隠れた後、レンは杭のようなものを取り出し木の上から、そこら中に投げ始める。 同時に、リンも同様の杭を投げ始めた。
杭は四方八方へと飛び散っているが、中にはイーナスを直接狙うものもあった。 その杭を、容易く撃ち落とし、一言。 「これだけですか?」
「そんなわけないじゃん」レンはいつの間にか持ったナイフをイーナスめがけて投げてくる。 何も問題ないかのように、イーナスは剣で薙ぎ払い、一言。
「上空からのナイフでの攻撃、中々面倒な戦闘スタイルですね」イーナスは相手を褒めつつも、まだ余裕の表情である。
「その余裕、いつまで続くかしらね」リンも同様にナイフを投げてくる。 だが、イーナスのは軽く受け流す。
このまま、ナイフを投げる、受け流す。 ナイフを投げる。 受け流す。 と言う単調な勝負が続くと思ったが、そんなに相手も甘くなく、徐々に投げるナイフの数を増やしていった。
「どんなに数が増えようと、私には届きませんよ」イーナスはいまだ余裕である。 だが次の瞬間自身の甘さに気づくこととなる。
「強そうな奴にこんな単調な攻撃はだめだよね」レンはそう言うと、何か持ち上げるような仕草をする。 後ろに刺さっていたナイフが突如宙を舞った。 予想だにしないナイフの軌道に驚きながら、イーナスの甲冑へとダメージを与える。
「失敗だったかぁ。 うまくいったと思ったんだけど」残念そうにレンは一言。
「驚きました。 使い捨てだと思っていたナイフを何か紐のようなもので結び、鞭のようにもできるんですね。 奇襲として素晴らしいです」イーナスは驚きを素直に言葉にした。
「中々でしょ? 結構苦労したんだから」軽口をたたくレンに対し、リンが「もうそろそろあれを使うわ」と言い出す。
「わかった。わかったぁ」レンも提案に同意し、ナイフを一旦全て回収した。
イーナスは動きに違和感を感じながらも、この機会を逃さまいと、跳躍し、リンへと攻撃をしようとする。 だが、次の瞬間。
「ぐはぁっ、なんで? 飛ぶことができないの?」イーナスは自身の体の変化に驚愕をする。 そして、動揺している隙に、リンとレンはナイフを投げてくる。
「イーナス上だ」俺は咄嗟にイーナスに対し、警告をする。 その警告が届いたからだろうか、イーナスは無数のナイフが刺さることなく、立っている。 だが、無傷と言う訳ではない。 剣を持っていない左腕に切り傷を負っている。 とても痛そうで、血がどくどくと流れている。
「くっ」悔しそうに腕を抑え、二人を睨んでいる。
「あっ、失敗した。 行けると思ったのに。 ダメだよ、そこの人助言なんかはさ」俺に対し、顔を膨らませながらレンが言ってくる。
「二対一で何を言ってるんだ。 あんたら」至極当然のように反論をする。
「それも、そうだね。 ごめんごめん」すごく頭の悪そうな返答に俺は唖然とした。
だが、どんなに馬鹿が相手でも、この状況は良くない。 飛躍を封じられ、複数のナイフの応酬、これだけでもかなり悪い。 それにリンとレンはまだ隠し玉を持っているように余裕の表情だ。
「さっきの失敗しちゃったから次はあれね」レンはリンに確認する。
「じゃあ、さっさとやっちゃいましょう」リンは複数のナイフを取り出し、レンと一緒に投げつける。
最初のような捌ききれそうな数のナイフではない。 とにかく無数のナイフである。 いくらイーナスと言えど、この状況は考えていなかった様で、打開策などなく必死に避け続けているようだ。
俺はイーナスを見ながら、どうにか助けになりそうなことを考えている。 きっとジャンプができないことは魔法道具を使った影響だろう。 だが、魔法道具として考えられるのはあのナイフ。 どのような条件で発動するんだ。 考えろ、考えろ俺、カナル考えるんだ。 そもそもジャンプをするときに行った行動は何だった? あの二人はイーナスがジャンプをする前に、ナイフを回収していた。 なぜ回収したんだ? わざわざ何かを行うと見せかけて、隙を見せる必要があったのか? まさか、そういうことか!!
イーナスに対し、「今だ、今ならジャンプできる。 飛ぶんだイーナス」と叫びかける。
「へっ? 今は飛べないはずですよ!!」怒りにも似た声で俺を諭そうとするが、俺は「とにかく信じて飛んでくれ」と懇願する。
イーナスは天高く飛び上がり無数のナイフ全てを回避した。 イーナスがいた場所には無数のナイフが刺さっている。
俺は「やはりそういうことだったのか」と納得した。
俺の言葉に驚きリンが質問する。
「まさか、あなた私たちの魔法道具の特性を見抜いたんですか?」今まで無表情だった、少女は動揺しながら聞いてくる。
「ああ、わかったさ、結構単純な話だからな」俺は得意げな顔をし、イーナスに話しかける。
「簡単に言うとジャンプできなくさせる方法はナイフを手元に持つことだ。 そうして相手が向かってくるときに飛躍をしようとするだろう。 でもできなくて飛べないと思い込ませる。 そして、飛べないと思っている状態の敵に向かい無数のナイフを投げつけるという戦術だ」
リンは悔しそうに「わかったところでこの無数のナイフは処理できないでしょ」と先ほどと同じ無数のナイフを投げてくる。
「それが本当に無数のナイフならな」俺はイーナスに向かいある言葉を投げかけた。 イーナスは納得したかのように、ナイフへと向かっていき、ある特徴のあるナイフだけ叩き落していった。 その特徴とは、後ろに紐が見えるというものである。 細くて目を凝らさないと見えない紐だが、少しの光反射で見ることができる。 紐がついているナイフは全部で16本あり、すべて撃ち落としたところ、その他無数のナイフ全てが地面へと落ちていた。
俺は二人の少女に向かい説明をしだす。
「このナイフのトリックは、簡単に言うと幻影だろう。 それもナイフだけのだから、無数のナイフなんて存在しない」
「そのことになぜ気づいたんですか?」リンは俺たちがトリックを説いた理由を聞き出そうとする。
「それは、血だよ。イーナスの血。 イーナスは一度だけしか、攻撃を食らっていないにもかかわらず、複数のナイフに血がついていたからもしかしたらと思たんだ。 案の定正解だったが」
俺の説明を聞き、「カナルさんあなたの洞察眼には恐れ入りました。 この窮地を救っていただきありがとうございます」と丁寧にイーナスがお礼を言う。
「いや、いやいいって今までのお礼だと思ってね」俺は照れながらお礼を受け取った。
一方、そのころ、二人は相談をしている。
「やばいよリン、ネタがばれたらあたしたちじゃ勝てないよ」今までの態度とは違い本格的に焦りを見せだすレン。
「確かにまずいわ、どうしようもないし、見逃してもらうしか」諦めがとにかく早いリンは直ぐに敗北宣言の準備をする。
二人の意見がまとまると、リンが代表として俺たちに向かい話しかけてきた。
「私たちの負けです。 今回は見逃してくれないでしょうか?」丁寧でいて落ち着いた口調だ。 まあ、俺らを攻撃している事体で、どんな口調でも関係ない。 問題はイーナスが許すかどうかで、俺の意見なんて関係ない。
「どうする? イーナス」
「私は別にいいですよ、ただし条件があります。 私はかなり痛い思いをしたので、賠償金をいただきます。 今持っているお金と魔法石とか宝石とか、まあ、いろいろです」まるで野盗のようなことを言っているが、まあ、正当な対価だろう。 イーナスは日ごろ優しいが、お金や魔法石関係を貰えそうな状況になるととてもがめつい。
二人は再度相談を開始した。
「どうしようかリン私少ししかないよ」自分の財布を見ながら下を向く。
「私なんていま、ゼロですよ」一番お金にうるさそうな方が、お金に無頓着のようだ。
「はした金なんていらないのでもういいです」二人の会話が聞こえていたイーナスは呆れたように一言。
「今回は本当にすみませんでしたぁ」レンが深々と礼をする。 なんか上下関係に厳しそうな話し方だな。
「ほら、行きますよレン」リンはレンの手を掴んでスタスタと森から逃げていく。 だが、その前に見覚えのある男が現れる。
「ちょっと、何逃げようとしてるんですか? リンさん、レンさん」嫌味のこもった声が森の間でこだまする。
レブだ。 奴は二人と話し込んでいる。
「なんだレブ私たちは負けたんだ」リンはこの状況で堂々としているが、本来ならシュンとしているべきだろう。 と俺は思ったが、まあいい。
「ごめんねぇレブ、あたしたちじゃ勝てそうにないんだぁ」友好的にレンはレブに説明をする。
「はぁ、やっぱり使えませんねこの双子」レブは呆れたように目つきで二人を眺める。 俺だったらたぶん殴り掛かりそうな雰囲気だ。
案の定、レンが「なんだとぉ、この出っ歯ぶっ殺すぞ」馬鹿なりのプライドがレンを駆り立てて、掴みかかる。
「暴力ですか。 正論を言われたから。 やはり野獣だ。 使えないだけでなく獣にまで落ちるとは……」と一言言い、レンの手を払いのける際に何か針のようなものを突き刺す。
「いったぁ、何するんだ」レンは半泣きになりながら文句を言う。
「大丈夫ですかレン」リンは心配そうに近づく。
レブは少し距離を置きながら、二人の少女に向かて語り掛ける。
「まあ、獣は獣なりの使い方がありますがねぇぇえええええ。 さあ、見ていなさい。 これから最高のショーが始まりますよ」
「うぐぅう」レンがいきなり苦しみだし、うずくまる。 どう考えてもレブが原因である。 レブがまたよくわからない毒なりなんなりを注入したのだろう。
「痛い、いたいよぉ、何をしたのレブ。 あたしに何をしたのぉ」苦痛の表情をしながらレブに質問する、レン。 だがその答えは「役立ってくださいね。 ふふふははははははははは」の言葉のみ。
リンは必死で言葉を投げかける。
「大丈夫ですよレン、きっとすぐよくなりますから」まったく信憑性のない慰めをしている。
「痛い、体が、熱い、なにこれ、なにかよくわからないものが、体から湧き上がってくる。 こわいよ、こわいよぉリン」恐怖で震え切った言葉にリンは涙を流している。
そして、「うわぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ」レンと呼ばれた少女は、何か違うものに変化をした。 全身獣のような毛が生え、目は赤く瞳孔が開いている。 元々来ていた服は体の巨大化に伴いすべて破れ、全裸に近い状態になっていた。
「あいつ、仲間を使って魔物を作りやがった」俺は状況を理解できずにイーナスに質問した。
「と言うよりも狂獣化ですね。あれは」怒りに震えたイーナスは聖剣を必死で抑えている。
狂獣化とは、獣ベースの亜人が力の暴走により手が付けられなくなり、魔獣へと落ちてしまうことである。 本来亜人でもまれなケースで、人間で起こることはまずない。そのため状況の異常さを物語っている。
「やったぁ、やったぞぉ成功した。 これで、最強の軍団が作れるぞぉ」レブは心底嬉しそうに叫び続けている。
一方、リンはこの状況を理解できず、下を眺めながらぶつぶつ言っている。
「レン、レンどこに行ってしまったの。 私よ、リンよ。 かくれんぼは終わりだから早く出てきて」精神が壊れてしまったようにフラフラと歩き続けるリン。 その先には、変わり果てたレンが立っていた。
「レン、やっと見つけたわ。 早くそんな衣装を脱いで、私と帰りましょう」優しく、元レンを抱きしめるリン。 だが、理性の残っていないリンに振りほどかれ、廃屋の壁に頭をぶつけ倒れていた。
「馬鹿な女だ、リンさんあんたは」レブはそれを言い残し、俺たちに向かい話しかけてくる。
「この状況どうしますか? まだ、戦いますか? 狂獣化した物と私両方相手にするのは大変でしょうね」調子に乗ったレブは、圧倒的有利な状況から俺たちを睨みつける。
だが、俺たちは屈しなかった。
「散々、いろいろなことしてくれたな。 レブ、いい加減お前とお前の仲間にはイライラさせられているんだ」力もないのに強気なことを言ってしまったが、今はとにかく言いたいことをぶつける場面だと考えた。
「そう、あなたにはもう慈悲もかけません。 ここで、永遠の痛みに震えなさい」イーナスの威厳のある声が響き、レブとの最終決戦が始まった。