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認知症ダンジョン〔ノンフィクション〕

食事中の方はお控えくださいませ。

 おはようございます。

さあ、主婦である私は家族より三十分早く起きて何をするのでしょうか。

まず朝ごはんの準備と思うでしょ。

違うんですね、その前にやらなければならないことがあります。夜の間に仕掛けられたトラップを見つけ出し処理するのです。

そうです、私は家族からトラップ処理のプロとして勇者並の尊敬を得ています。その期待に応えるべくアンテナを張り巡らし嗅覚を研ぎ澄まし、歩き慣れたダンジョンを進みます。

階段を下り家を縦断する長い廊下がまず危険地帯となります。ここは過去かなり高い確率でトラップが仕掛けられる場所です。

左側にはトイレそして居間に続く廊下……。腰を低くし廊下の床面を眺めます。

ありました尿トラップ!!テカッっていますね、中央に点々と時には小さな水たまりとなっています。これを踏みますと履いたばかりの靴下が台無しになりますし、ただの水ではありませんので足を洗わねばなりません。

朝の忙しい時間にこれにはまりますと、大幅な時間のロスとなるので勇者である私はゴム手袋などのめんどくさいアイテムは使わず、素手に雑巾で素早く拭き消臭剤を撒きます。


さあ、次に向かいましょう。

危険地帯其の二居間に突入しますよ、居間は雑多に物が置いてありますので何処にトラップが仕掛けてあるのか注意を要します。透視能力に近い洞察力を駆使して探すのですがここはほぼ糞トラップとなります。ゴミ箱に糞がある確率が高いのですが匂いますのでたとえゴミ箱といえど処理しなければなりません。

今回はありませんね、ん? テーブルの上に置いてある畳まれた新聞紙に違和感があります。そっと広げてみますね。ありましたよ新聞で糞サンドイッチを作った模様です。このサンドイッチは朝食に不向きなので手早くビニール袋に入れきっちり口を結びます。


もう、トラップはお仕舞でしょうか? 

いえいえ最後に台所が待っております。衛生上ここのトラップはきっちり処理しなければなりません。

流しの三角コーナーに糞が入っていたことがありますので注意しなければならないのですが、無いようですね。でも今までの経験で分かっていますよ、これでは糞の量が足りませんまだ何処かにトラップがあるはずです。


ああ、風呂場のドアが開いています。

間違いない! あそこです!

ありましたよてんこ盛りで、しかもあちこちに擦り付けた糞!

やられた!これは大仕事ですよ時間が迫っています! そう皆が朝食に起きてくる前に片付けなければ!

しかし、風呂場で良かった。急いで糞をかき集め目にも止まらぬ早業で洗剤を撒きタワシでこすり、熱湯で念入りに流し漂白剤を撒き除菌完了。

はい、今日のミッションはこれでクリアですね。多分大丈夫でしょう。

これで、家族が安心して冒険に旅立てます。勇者である私が安全な道を開いておきましたので旅先でガッポリお宝をお持ち帰りください。

皆さん朝食が終りましたか? はい、いってらっしゃいませ!



それでは私も皆が頑張れるように食糧調達の旅に出かけましょう。

いつものトートバックをぶら下げてスーパーに着きましたよ、あっ、入れっぱなしの財布の中身を確認してくるのを忘れてました。

お金入ってるかしら?

トートバックを広げました。


……即閉じました。


絶句しました、笑いましたよ。バックの中にありました一握りの糞が……。

んー流石です父さん。あなたにはかなわないですね、勇者もこのトラップには参りましたと言うしかありませんでしたよ。



でも、父さん最近は淋しいですよ、またトラップ仕掛けてくださいな。

徘徊はもうしないのですか? 夜中も昼間もベットの上じゃないですか?

私の隙を窺って、外に出るのが得意だったじゃないですか、また追いかけっこしましょうよ。

ほぼ寝たきりなんて、情けないですよ父さん……。

私をまた勇者にしてくださいな、お願いします。





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