表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役からヒロインになるすすめ  作者: 龍凪風深
一章 物語プレリュード
7/66

06 改めて考える

長い説明文みたいです……。


改めて考える鎮馬ちゃんのお話。

 ばふり。

 自室に戻って真っ先にした事は、ベットに飛び込む事だった。

 今日は酷く疲れた。多分、攻略対象者二人と遭遇したから、心労だろう。

 身体を包み込むようなマットレスの柔らかさに、眠気を触発されながら、うつ伏せで身動ぎした後、寝返りを打って仰向けになる。

 今、室内には誰も居なく、静けさだけが漂っている。

 気を抜くと眠ってしまいそうだ。

 今寝てしまうと、夜中に目が冴えてしまいそうなので、何とか閉じかける瞼を持ち上げる。

 私は襲い来る眠気を振り払いつつ、ぼんやりと室内を眺めた。

 寮内の二人部屋は広くはないが、狭くもない。

 キッチンはあるし、小さいながら冷蔵庫もあるし、クローゼットはちゃんと二つある。

 炊飯器、オーブンレンジ、それらを乗せる台と、これまた小さな食器棚に、四角いテーブル、そして暖房機。

 床は全面にベージュの余り目立たないカーペットが敷かれ、壁は白塗りで窓にはブラインド。

 室内の一番奥には、今私が寝ているシングルベットと、その隣に同じ物がもう一つ置かれている。

 逢魔ヶ時学園の寮は少し変わっていて、部屋によって作りが少し異なり、入居者の希望通りの部屋が与えられるのだとか。

 私と安泉さんの場合は、希望が自炊だった為、キッチンのある部屋が与えられた。

 自炊を希望する人は余り居ないそうで、キッチンが備え付けの部屋の数はそこまでないらしい。入居費が少し高くなるし、自炊は面倒臭いからだろう。

 私は料理を作るのは嫌いじゃないし、食堂で余計な接点を作るのも嫌だったので、この部屋を選んだが、食材をまだ買っていない為、もう暫くは食堂でお世話になろうと思う。

 幸い、人が込む時間はある程度把握しているし、それを避ければ、人目を引く美男美女等と遭遇する確率は低いのだ。

 ──きしり、スプリング音を立てながら、私は上体を起こしてベット脇に腰掛けると、そのまま思案する。

 私の当初の目標は学園への入学回避であったが、それは失敗に終わり、第二目標の攻略対象者との接触回避も失敗に終わった。篠之雨先生は担任な訳で、僅かに接触回避の対象外扱いにするとしても、今日栞宮悠里と接触してしまった時点でアウトだ。

 そもそもな話し、私は簡単に思っていたが、同じ学校に通っていながら、完全に接触を回避する事など出来るんだろうか……?

 ゲーム内のように、攻略本があり、正確にキャラクターの行動が分かる訳でもないのに。

 頑張れば確かに妖気や霊気を探る事で、妖怪と陰陽師である攻略対象者達を避ける事は可能だが、そうするとこちらが陰陽師である事が露見し兼ねない。

 陰陽師と妖怪は、霊力と妖力により、それぞれ互いに互いをある程度は認識出来る力を持っている。あいつは弱い、こいつは強い、あいつは妖怪でこいつは陰陽師だ……と、言った感じに。

 普段、私は周りの一般人の霊力に自分の霊力を紛れ込ませる事で、自分が陰陽師である事を隠している。

 故に、力の使用は自らを陰陽師だと吐露しているようなもので、死亡フラグ建設に繋がるため却下だ。

 やはり、成る可く接触回避を目標にしつつ、場面に応じて対応を変えるしかないか。

 ゲーム内の登場キャラクターと接触してしまった場合は、親しくならず、記憶に残らない名無しさんになれれば上出来だろう。

 今の所はそれくらいしか思い付かない。具体的にこれをすれば死亡フラグは立たない、助かる、だなんて道筋など端からないように思う。ならば、日々の中で模索し、その時々の対応を考え、行使するしかない。


 ──と、思うのは私の頭が悪いからだろうか……?


 小さい時からずっと悩んできた事だが、いまいち解決策が思い付かないのだ。

 唯一これをすれば、と思うのは今と変わらずゲームの内容を全て避けると言うものだけ。

 後は、陰陽師としての力を研く事くらいだろうか?


 「……うーん」


 酷い猫背になりながら、足に腕を置いて頬杖を付く。

 口からは独り言のように、悩ましげな唸り声が洩れた。

 ゲーム内を見る限り、私こと綾部鎮馬の死亡フラグ建設においての重要事項は、私がヒロインと攻略対象者達の仲を引き裂く。または、邪魔をする。妖怪を嫌い、攻略対象者達学園側から嫌われる。式神契約を行わず、いざと言う時に式神を呼び出せない。自分が安倍家の陰陽師だと公言する。無謀にも自分より強い妖怪に単身で立ち向かう。

 私の記憶が正しければ、以上である。

 今はまだ何一つとして満たしてはいないが、これからどうなるか分からない訳で、それを考えると気が滅入る。

 『桃色妖怪記─契約の口付け─』の物語は今から一年間。その一年を無事に凌ぎきる事が出来れば、安穏な学校生活がやっと私に訪れる。そう思えば、少しはマシか。


 「ふぅ……」


 頭の中を渦巻き、占拠しようとする憂鬱を全て吐き出すように、息を付いた。

 いつの間にやら去っていった眠気の変わりに、空いてきたお腹をさする。

 時刻は五時過ぎ。この寮の食堂は今なら空いているだろう。混雑する時間はもう少し後だし。


 「! おかえり、安泉さん」

 「た、ただいま。あの……綾部さん! ご飯、食べに行かない? 今なら、食堂……空いてると思うの……」


 まるでタイミングを見計らったように、丁度よく戻ってきた安泉さんが控えめに私を食事に誘ってくれる。

 願ってもないお誘いに私は笑顔で頷いた。

 いつも食事に誘うのは私からで、安泉さんから誘われたのはこれが初だ。何だか嬉しい。


 「……良かった。じゃあ、食べに行こう?」

 「うん、行こっか」


 ホッと安堵の息を洩らした安泉さんが、柔らかな微笑みを浮かべる。

 そんな安泉さんに連れられるまま、私は食堂へと向かうべく、部屋を後にした。




.


 


最後にちろっと雛乃ちゃん登場!

次回はまたまた新キャラ登場です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ