4日目
勇者の日記
故郷を旅立ち4日目、ようやく宿があるような町にたどりついた。僕が寝ている間に大怪我を負った戦士さんにもこの4日間の料理や洗濯は全部やってくれていた僧侶さんにも楽をさせてあげられる。旅の初心者で家事が一切出来ない僕や魔法使いがこの町までこれたのは間違いなく僧侶さんのおかげだ。考えてみればこの4日間、僧侶さんは4人分の食事を作り4人分の洗濯をするという重労働をしているのだ。本当に僧侶さんには頭が上がらない。何度か僧侶さんに僕が洗濯をやりますよと言ったが、「私が好きでやっていることなんですから勇者君は気にしなくていいんですよ。それに勇者君は私の下着も洗ってくれるんですか?」と言われてしまったら何も言うことが出来ない。僧侶さんは美人な上に家事も出来て性格もいいという正に才色兼備という言葉がピッタリな人だ。料理もとてもおいしい。そういえば、魔法使いは僧侶さんの顔を一切見ようとしない。ひょっとして、僧侶さんが美人過ぎるから照れているのかな?昔から奥手なやつだったし。そういえば、朝起きたら家から持ってきた下着が一枚無くなっていた。どうやら旅の途中でなくしてしまったらしい。この町で補充しなければ。
魔法使いの日記
ようやく宿があるような町についた。これで洗濯や料理から一時的にだが解放される。僧侶は勇者に「みんなの料理や洗濯は私がやります!」と宣言していたが、当然のように僧侶は勇者と自分の分の料理や洗濯しかしてくれない。勇者が寝た後、泣きながら自分の服を洗ったことは記憶に新しい。3日目の夜、俺がテントを抜け出し服を洗おうとしたら世にもおぞましい光景が目に入ってきた。なんと僧侶が勇者の下着(使用済み)を頭からかぶり恍惚の表情を浮かべ笑っているのだ。あまりの恐ろしさに俺はすぐさまその場を離れ見なかったことにした。その夜以来、おれは僧侶の顔を見ることが出来ない…。今日の朝、何故かオッサンが大怪我を負っていた。怪我の理由を聞いたが何も答えようとしない。昨日の寝る前までは確かに無傷だったはず。一体、俺が寝ている間に何があったのか…
僧侶の日記
とうとう宿がある町にたどりついてしまった。これでは勇者君の洗濯や料理が出来ないではないか。旅に出てからの食事を思い出すと今でも自然と笑みがわいてくる。私の血入りスープを飲む勇者君、私の爪を細かく刻み生地に練りこんだパンを食べる勇者君、私が綺麗に舐めた食器で食事をする勇者君…。思い出すだけで鼻血が出るくらい興奮する。私の一部が勇者君の体に入り勇者君の血や肉になるとおもうだけでもう……。それに食べた後、「おいしかったですよ、僧侶さん。また作ってください。」と笑顔で勇者君に言われたとき、私は生まれてきた事を心の底から喜んだ。待っててね、勇者君。近い内に私というご馳走を心ゆくまで食べさせてあげるから。そういえば、昨日の夜に勇者君にまとわりつく害虫その2が何故か勇者君の洗濯前の下着にまとわりついていた。しっかりと追い払っておいたが、またまとわりつくかもしれない。殺した方がいいのかしら…?私が害虫対策に悩んでいると、害虫から守った勇者君の下着からこの世のものとは思えない極上の香りがした。私は周囲を確認した後、そっとそれを頭からかぶり至福の笑みを浮かべた。ああ、この部分が勇者君の『ピー』に一日中当たっていたんだ。それならこんなにいい匂いがして当たり前だ。もう、勇者君たら!下着だけで私を狂わせるなんて罪作りな人!今は下着ごしにだけどいつか直接匂いを嗅いじゃうからね!!ちなみに、その下着は私の勇者君コレクションで一番のお宝になりました!
戦士の日記
私はこの旅で自分の不幸を嘆かずにはいられない。今まで旅をしていた場所は全て近くに川が流れていた。おかげで、一日中着ていたせいでたまりにたまった芳醇で濃厚な汗の匂いがついた服が一日ごとにリセット(洗濯)されてしまう。私のイライラは溜まりっぱなしだ。何故洗濯なんかをするのだ!!!これでは旅をする意味がないではないか!!ところが、3日目の夜に神様は私にお宝をくれた。な、なんと勇者の洗濯前の下着を発見したのだ。ああ、いい匂いだ。一日中はいていたせいか、汗の臭いと共に男の股間の臭いが混ざり絶妙の香りがしている。本来なら、下着は3日目のものがベストだ。だが、こんなお宝を目の前にて我慢などできない!私が宝物に手をのばした瞬間、気が付いたら地面に寝ていた。私にも何が起きたか解らない。だが、目の前に修羅がいたことだけは確かだ。修羅は私が視認出来ない程のスピードで動き、痛みを感じたときには私の右腕の骨は全て折れていた。しかもご丁寧に指の骨まで一本一本まで。私はLV26の戦士だ。その私が視認できないほどのスピードで動き、一瞬で右腕は破壊するあの化け物(僧侶)はいったい何者だ!?しかし、こんなことぐらいで私はあきらめない!!必ず下着は手に入れる!!
3日目の夜の時系列
勇者が僧侶に渡し忘れた洗濯物をテントの外に置いておく
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戦士、勇者の下着を発見。しかし修羅に撃退される
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僧侶が害虫(戦士)を撃退。戦利品(下着)を頭にかぶる
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魔法使いが僧侶の奇行を目撃。見なかったことに