表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグメーカー  作者: 夏野ゲン
ある合コンの話
30/35

終わりと始まり(下)

なぜここで微妙な空気が流れるのだろうか?

二人は「友達」じゃなかったの?


私は怪訝に思いながらも、声をかける。


「橘さんも一緒に飲みますか?」

「…えっ?いや、邪魔しちゃ悪いでしょう?」


何のことを言われているのか、一瞬理解が追いつかなかったが、隣を見て思いいたる。

斉藤さんとデートか何かだと思われているんだ。

私とこの人は別にそんな関係じゃない。それに…


「迷惑ならもうかかってますから、気にしないでください」


私は笑顔で、首に抱きついたままゴロンゴロン言っているかえでを指差した。




ボックス席に移り、4人でお酒を飲み始める。

先ほどまでのこわばりは表面上はなりを潜めた。みんな見掛け上楽しそうに飲んで談笑している。

かえでは「にゃははは」笑っているし、橘さんは困った顔をしながらも楽しそう。

そして、先ほどまで一緒に話していた男だけは、うまく話をふったり如才なくやっているが、やはりどこか苦しそうなのだ。

見掛け上は平静で、でも、胸の奥に何かつっかえているみたいな、そんな感じ。そして私はそんな彼を見ていると、むずむずする感じがどうしようもなくもどかしくて気持ちが悪かった。

思えば、彼は必死にこらえていたのだ。自分の心を崩壊させるまいとして努力していたのだ。




数十分後、かえでが…眠った。それはもう、安らかに眠った。

橘さんはかえでを背負って割り勘より少し高い金額をテーブルにおいて、店を出ていった。


ボックス席には、最初からここにいた彼と私だけが残された。


私は、聞いてはいけない気がしながらも尋ねずにはいられなかった。


「なんでアンタ、あんなに苦しそうだったの?」


彼は元の笑顔に戻って首をかしげるばかりで、答えてくれない。

なぜだか妙に癇に障って、ムキになってまくし立てる。


「アンタ、一体何がしたかったの?私を飲みに誘ったの、きっとあの二人となんか関係あるんでしょう?アンタ、かえでとなんかあったの?それとも橘さんとなんかあったの?私を巻き込んだんだから、アンタには答える義務がある!」


私はなぜだか怒っていた。

ただ単にはっきりしないのが嫌だったとか、それだけが理由じゃない。


きっと、こいつは今吐きださせてしまわないとダメだ!

そんな直感が働いているのだ。そう、これはきっと弱いかえでと付き合っているうちに手に入れた特技みたいなもの。

私は性分として、この男にまとわりつく何かを取り払ってやりたくなったのだ。


「場所を変えよう」


彼はそれだけ言うと店を出た。

私は彼について夜の町へと出ていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ