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フラグメーカー  作者: 夏野ゲン
ある合コンの話
25/35

追及、真相(上)

ここからは完全に私の想像、妄想の世界の話です。バカみたいな話です。

違うと思ったのであれば、怒っていただいていいですし、嫌だと思ったら聞いていただかなくても結構です。


ただし、私は最後まで話すつもりでいるので、よろしくお願いします。


私は、フラグメーカーという道具のことを石川君に説明しました。


「赤い糸が見える道具だ」


そう言いました。




そんなことを話した理由は、彼をだます作業に、いい加減疲れたからです。

今回の実験はうまくいかなかった。私は実験を切り上げて、次の実験へと移り、少なからずできた石川君との関係を清算するつもりでした。

私のしていた「実験」のあらすじを告白すれば、軽蔑や幻滅を通り越して、私から離れていってくれると思っていましたから。


あらすじを語りました。

橘さんに運命の赤い糸が見える道具を譲り、それを悪用してほしいと願ったこと。私はその結果起こる惨劇を観察しようと思っていたこと。うまくいかなかったこと。ストーカー事件も私の計画だったこと。


でも、驚いたことに、私の告白を受けても、彼は全く動じませんでした。

おかしな話です…。本当におかしな話です。


まるで、「大体わかっていた」そんな顔をして聞いていたのです。

ひょっとすると、私よりも彼の方がよっぽど化物ダヌキかもしれませんよ…。




彼は何も言いませんでした。

しかし、目には、何か強い感情を持っているように私には見えました。




私の告白の後、彼は橘さんのところへ向かいました。

私は彼の様子が気になって、あとをつけて、そして、橘さんへの追及のシーンに行きあいました。


私には、理解できませんでした。

なぜ、私の告白のすぐあとに、被害者である橘さんを石川君は責めるようなことをいったのだろう?私には理解できませんでした。


石川君は盗み聞きしていた私の脇を、振り返りもせずに通り過ぎました。

一言、


「想像してみてください」


とだけ言い残して。




私は理解できないままに終わるのが嫌でした。

想像しました。石川君の行動の意図を。なんとかして手繰り寄せようとしました。

そいてたどり着いたのが、


石川君の言っていた「白川」が別人だったのではないかという想像です。

彼は、怒っていた。橘さんに本気で怒っていた。それだけは間違いありません。


それならばなぜ、石川君は怒る必要があったのか。


きっと石川君は正直だから、怒った理由はそのままのはずです。

心をのぞいて、上から目線で、当たり障りなく人間関係をやり過ごそうとしていた、そのことに対して怒っているのは間違いないと考えました。


しかし、私は当たり障りなくやり過ごされ、向き合ってもらえない悲しみなんて味わっていませんから、彼が変わりに怒るというのは筋違いです。

それでは、彼が変わりに怒ってあげたのが私、「白川」ではない人物ではないか?と考えました。


最初は「伊藤さん」が「白川」のところに当てはまる人物ではないかと思いました。

明らかに好意を意識しながら、当たり障りなくやり過ごされている彼女のことを憂いて変わりに怒っているのではないかと。


しかし、橘さんは、すでに伊藤さんを意識しています。たがいに惹かれています。

そんな状況下で、石川さんが彼に対して怒りをぶつける理由などあるとは思えません。


私の想像は行き詰りました。

そこで、今度は別のプロセスで想像してみました。

石川君が、変わりに怒ってあげたくなる、変わりに怒ってやらないと気が済まなくなるような人物は誰か?


…真っ先に橘さんと、あなたの顔が浮かびました。


橘さんに対して怒っているのに、橘さんのために怒る…言い得て妙な表現ですが、これは少し今回のケースには当てはまらない気がします。


それでは…白川を「斉藤」に当てはめて考えてみてはどうだろうか?




橘と斉藤は同性の友人同士。


斉藤さんは異常と知りながら、橘さんを特別な感情で…想う。

二人の友人である石川君はそれを脇で見ていてそれとなく察している。


斉藤さんは自分の想いの異常さゆえに動けない。

橘さんは、斉藤さんの想いの異常さゆえに、その想いに気がつかない。

傍観者である石川君は、傍観者であるがゆえに、二人の関係を動かすことができない。


そんな状況で、石川君は私から「橘さんが赤い糸を見ていた」という情報を得る。

石川君は思うはず。「橘さんが斉藤さんに想われていることを知りながら、気づかぬふりをして無下にしてきたのだ!!」と。「親友の想いを、ないものとして扱い、その先の苦痛を避けて通るために、ないがしろにしていたのだ!!」と。


しかし、それは石川君の勘違い。フラグメーカーは自分に関わる糸は見えない。

橘君は斉藤さんから伸びている糸の存在に気がついていない。


そんなかみ合わせの違いから、彼は大事な友人の気持ちが、大事な友人によって踏みにじられていると勘違いをする。


石川君は悩んだ。自分が斉藤さんの名を出して、橘さんが行っている残酷な所業を追い詰めて、友人関係を崩壊させるのは正しいことなのか?

斉藤さん本人の口から告白、追及がなされるべきではないのか?と。


そこで彼は考えた。

私という、「白川」という絶好の立ち位置にいた人間を斉藤さんに見立てて話をすることによって、想いを知りながら、向き合わないことの残酷さを問い詰めてはどうだろうか?と。


それならば石川君が斉藤さんの気持ちに気が付いていることは明かされないし、二人の関係の軋みにとどめを指すことがなく、これまでのように二人の関係の傍観者として、橘健太郎という人間の所業の残酷さを訴えることができるのではないか?と


そして、先日の追及に至る。

彼は私というクッションを利用して、


「斉藤という大事な友人の想いをないものにするな。向き合ってやれ!!」


という、強い想いをぶつけたのです。






…どうですか?ここまでの想像は。

誇大妄想だと思いますか?


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