解答(下)
最後に、なぜ興味もないのに橘君に付きまとったのか、でしたね。
ここまで話を聞いてきた、賢い斉藤君ならわかると思います。
橘さんの見舞いに通い詰めた、この行動も新しい『実験』です。
今度は伊藤さんを交えて、橘さんを取り合う、『擬似三角関係』を演じて、愛憎劇の定番、三角関係からの痴情のもつれを演出しようと思ったわけです。
しかし、いくらいびってみても、伊藤さんという子も橘さんと同じく、あまりにまっすぐで、とても愛憎劇に発展しそうにはありませんでした。
正直、発展性の見えない実験は…面白くありません。
最初はなんとかしてものにしようと努力しました。
意味もなく彼女の神経を逆なでるようなことを言ってみました。
意味もなく橘さんに体を寄せてみたりしました。
しかし…次第にむなしくなってきました。
やはり理解できない対象を実験に使うなんてそもそも無理があったんです。
私の実験はことごとく橘さんにくじかれました。
それこそ完膚無きまでに粉々にされて、すべての実験が失敗まで追い込まれました。
こんな経験は…初めてでした。
でも…私は見つけたのです。
次の観察対象を。
それは………さて誰でしょうか?