表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグメーカー  作者: 夏野ゲン
ある合コンの話
20/35

追及(下)

「ある意味、ここからが、オレの想像の最大にして、最後の決め手です」


オレの宣言に対して、彼女は薄く微笑むばかり。


「フラグメーカー。知ってますよね」


彼女は小首をかしげて微笑んで見せた。

この化け物ギツネ!!


「昨日橘に見せてもらったんですよ。『僕はこんな機械で石川の心をのぞいて怒らせてしまったんだ。軽蔑したかもしれないけど、僕はお前に聞いておいてほしかったんだ』そんなふうにいって、あいつはちょっと寂しそうに笑ってました」


「でも、そのとき、オレの中で何かがつながったんですよ。ストーカー男のいってた、『赤い糸』最初はキチガイの妄言だと思ってました。でも、違う。赤い糸を視覚化できる道具は確かにあった。ならば、その占い師も見せたのではないか?やつに赤い糸を。そのフラグメーカーとやらで」


ここでいったんきって様子を伺う。

笑顔は、崩れない。


「探しました。問題の占い師。ちょっと大変でしたが、すぐに見つかりました。赤い糸を見せる占い師。そんなのがいたら評判にならないわけないですもんね」


「彼女が持っていたのはフラグメーカーでした。虫眼鏡の形をしていたけれど、あの機能は間違いなく橘のそれと同じだった」


…はぁ、とオレはここでため息をつく。


「ここからは、やりたくなかったんですが…まぁいろいろやって、占い師の口を割りました。フラグメーカー、その道具をあの占い師にあげたの、あなたらしいですね。白川さん」


彼女は「ふふふ」っと笑った。


「これで一応は筋が通る。あらかじめ誘惑してストーカー男に気を持たせ、フラグメーカーを持った占い師が、ストーカー男に告白するための、勇気という最後の一押しをプレゼントする。そして、告白してきたその男を、あなたがふる…。でも、やってることに一本の筋が通ったのに、オレにはあなたが何をしたかったのかさっぱりわからない。巻き添えに橘まで大怪我させて…本当にわけがわからないし、許せない」


オレは、ここで大きく息を吸った。


「ついでに、もうひとつ聞きたいことがある。あなた…橘に恋なんてしていないでしょう?あなたを見ていればわかるし、ついでに言えば、橘のフラグメーカーを使って橘を見てみても、伊藤さんとばかりつながっていて、あなたとの間に糸はなかった」


「しつこく橘の見舞いに来るのは、最初あいつに気があるからかと思った。それなら合コンの件も、『橘と近づきたかった』それで解決する。でも違う。あなたは橘に恋なんてしていない!!」


彼女はここまで来ても、きらきらした目でオレを見るだけだった。


「あなたは、橘に、何をしたかったんですか?それには、あの道具、フラグメーカーが関係してるんですか?教えてもらえませんか?」




………ぱちぱちぱち。




目の前に立つ底の知れない女は、オレに拍手を送った。




「名推理ですね」


そういって穏やかに彼女は笑う。

勝負は、オレの想定どおりに進んだ。しかし、まったく勝った気がしないのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ