表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

塩小さじ1

作者: 夢香
掲載日:2025/12/02

子どもの頃、世間には専業主婦がたくさん居て、昼時や夕時にはお料理番組がたくさん流れていた。


その中で出てくるマジックアイテムに、淡い憧れを抱いていた。


「ここで塩小さじ1を入れます」

事務的な声でお料理の先生が解説しながら、前もって測っておいた小さなガラスの小鉢の中の塩をフライパンにあける。

その後も、次々と小さな小鉢に準備された様々な調味料が加えられていく。


あの小さなガラスの小鉢。

家では見たことのない不思議なツール。

母も祖母も料理の時は大抵目分量だったし、時々分量を測る時は計量スプーンから鍋に直接投入していく。

食器屋さんでも見たことない

だから、テレビの中にしか存在しない不思議なアイテムとして、親指と人差し指でつまむ小さなガラスの小鉢は私の中で特別なポジションを占めていた。それは、魔法の杖や空飛ぶほうき、変身に使うコンパクトや飛行石と同格だった。


調味料をあらかじめ準備して並べることに憧れていたのだろうか。


否。


調味料を入れることにしか使えない謎のアイテムのミステリアスさがたまらなかったのだ。


そんなことを思い出しながら、私はキッチンツールを扱っているお店の中で運命の出会いを果たす。

あの小鉢だ。

これまで生きてきて一度も実物にお目にかかることがなかったのに、ついに見付けた。

他人には説明のつかない感動と興奮が駆け巡り、愛おしさをこめてそっと指先で小鉢をつまむ。


ついに私もここまで来たか。

大人の世界の門がやっと開かれたのだ。


そこに一緒に買い物に来ていた母がやって来る。

私の手元を見て一言。

「あ、塩小さじ1のお皿だ」

親子で同じことを思っていたようだ。


小さなガラスの小鉢は、サイズが何種類もあった。私は手に取った小鉢や他のサイズの値段を確認した。高い物ではない。サイズが違っても値段はさほど変わらなかった。


私は、一番大きいガラスの小鉢を購入した。

タルタルソースを作れそうな大きさだ。

憧れは、実用性の前には無力であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ