2 バスッチャはやめてほしいのだが?
「イヤダ!イヤダ!イヤダ!戦いたくない!戦いたくない!!」
大の大人である30歳が、全力の駄々こねをしてる。こいつ…
時間は少し戻り、聖剣召喚した後
「あ、自分眠いんで寝ます。ベッドどこっすか」
図々しく寝床を要求し、上等な客室で寝た。朝11時の出来事である。
そして起きたのは夜7時、起きた気配を感じたのか、老執事が入っていくと、この30歳ニートの中山健二は、おもむろにベッドへ戻り、今に至る。
「戦いたくなーーい!!」
その駄々こねには、さすがのベテラン老執事もフリーズした。やがて疲れたのかピタリと止まり、もそもそと二度寝を決め込もうとする。
「っ!勇者殿!起きてください!」
「まったくあなたという人は、あの3人の若者の方がしっかりしていらっしゃいました。あなたは30歳になっているというのに、大人としての自覚はないのですか!」
がっつり説教された。いい気味である。
「…すいません」
「はぁ、当面の問題は、勇者殿の生活習慣でありましょう。若者たちからお聞きしました。なんでもそちらの世界では夜の時間に働いている者は珍しくないと」
「ウッ…!」
「?いかがなさいました?」
「イエ、ナンデモアリマセン」
そっぽを向いてどうしたのでしょうか。無職のニートくんは。目が泳いでいますよ。中山健二くん
「ところでご老人、お名前は?」
「申し遅れました。わたくし、勇者殿のお世話を仰せつかったセバスチャンと申します。以後お見知りおきを」
(うわぁ~執事の定番の名前~!)うわぁ~執事の定番の名前~もっと捻ろ作者。
「ん~~…そうだなぁ…うん!あなたのことはバスッチャと呼ぶよ!」
「…は?…バスッ…チャ?」
「そう!バスッチャ!」
正気か?30歳ニートよ。
「…セバスと、お呼びしていただければ…」
「いいや!バスッチャだ!」
「…はっ……」
ものすごく不服そうだが、表情には出ていない。さすがはバスッチャである。
「勇者殿、この後の予定ですが」
「っ!イヤダ!」
「は?」
「俺は戦わないぞ!」
「はぁ、話は最後まで聞いていただきたい。湯浴みの準備が整っております。その後、お食事のご用意ができますが、いかが致しますか?」
「あ~…じゃあ、そんな感じで」
「かしこまりました。」
中山健二が湯浴みを浴びてる間に、できる老執事セバスチャンは動く。
まずは中山健二が起きたことを関係者各位に連絡、現在王宮では晩餐会の真っ只中、あの3人の若者たちは出席している。
本来であれば、30歳ニートも出席させるつもりだったが、駄々こねを見たセバスチャンは、今は出席させるのは得策ではないと判断し、欠席させることにした。英断である。
だが、欠席させてそれで終わりではない。誰かが『勇者様』に訪問しに来るだろう。
そしてその誰かに、あの所業を報告しなくてはならない。可哀想なバスッチャである。
(それにしても、バスッチャはやめてほしいのだが?)