第8話「念願のコンカフェデビュー」
冒険者としてある程度安定した生活を手に入れた順一は、ついに目標だった異世界のコンセプトカフェ「スイート・ローズ」への初訪問を決意した。この異世界に来てからの日々を思い返しながら、期待に胸を膨らませて店の扉を押す。
「お帰りなさいませ、ご主人様!」
扉を開けた瞬間、メイド服に身を包んだキャストたちが明るい声で出迎えた。順一は一瞬驚き、そして胸が温かくなる感覚を覚えた。
店内は、全席がカウンター席という特徴的な作りになっており、目の前には整然と並んだ高級感のあるグラスやボトルが輝いている。キャストたちはカウンター越しに客と会話を楽しんでおり、その姿は和やかな雰囲気そのものだった。
「ここが……異世界のコンカフェか」
順一は感慨深い気持ちになりながら受付へと進んだ。
「初めてのご来店ですね、ご主人様!」
受付のスタッフが柔らかな笑顔で声をかけ、システムの説明を始める。
「『スイート・ローズ』は、メイドをコンセプトにしたバーでございます。全席カウンターのみとなっており、キャストは30分ごとに交代いたします。ただし、お気に入りのキャストがいらっしゃいましたら、銀貨2枚で指名することも可能です」
順一は頷きながら説明を聞く。
「1時間銀貨10枚の飲み放題制となっております。以降は1時間ごとに銀貨8枚で延長が可能です。有料ドリンクもございますが、基本的には飲み放題メニューをご利用いただけます。1時間ごとに延長の確認をさせていただきます。また、会計は退店時にまとめて行いますので、どうぞごゆっくりお楽しみください」
「わかりました」
順一の前に差し出されたのは、飲み放題メニューが中心のドリンクリストと、有料ドリンクやボトルメニューが記載された別のリストだった。
「これは……」
飲み放題のカクテルやビールのラインナップは充実しており、さらにシャンパンなどのボトルも、低価格なものから高額なものまで揃っていた。その内容に、順一は思わず笑みを浮かべる。
「本当に元の世界のコンカフェとそっくりだな……」
この異世界で、かつて自分が通った文化と同じものに出会えたことが、不思議な安心感をもたらしていた。
「では、ビールをお願いします」
順一はまず飲み放題メニューから軽くビールを頼んだ。
最初に順一の前に現れたのは、茶髪で明るい笑顔が特徴的なエリカだった。カウンター越しに、彼女は親しみやすい声で話しかける。
「初めまして、ご主人様! 私はエリカです。よろしくお願いします!」
「よろしくね、エリカちゃん。俺はジュンって言います」
順一が自己紹介をすると、エリカは目を輝かせて彼を見つめた。
「ジュンさん、めっちゃイケメンですね! こんなご主人様、初めてです!」
「えっ?」
順一はその言葉に驚きつつ、少し照れたように笑った。確かに異世界に来てからリナや冒険者ギルドの受付嬢から「イケメン」と言われることは多かったが、ここでの言葉はどこか特別な響きを感じさせた。
「元の世界じゃ、こんなことコンカフェで一度も言われたことなかったな……」
異世界に来て本当によかったと彼は内心でそう思いながら、エリカとの軽快な会話を楽しんだ。
30分が過ぎ、次に席に着いたのは黒髪で落ち着いた雰囲気を持つカレンだった。彼女は穏やかな声で挨拶をする。
「初めまして、ジュンさん。私はカレンと申します。どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ」
「よろしくね、カレンちゃん」
カレンの丁寧な接客に、順一は心地よさを感じつつも、まだ自分の「推し」ではないことを感じていた。そのため1時間延長することにした。
次に現れたのは、銀髪のポニーテールが特徴的なレイナだった。彼女は少し挑発的な笑みを浮かべて話し始める。
「ジュンさん、初めての割には余裕がある感じじゃない?」
「いや、そんなことないよ、レイナちゃん」
まあ「確かに元の世界では行きつけのコンカフェの常連ではあったからな....」と脳内で思いつつもこの世界では初なのでそう答えた。
レイナの毒舌交じりの接客に戸惑いながらも、順一は彼女の個性的な会話を楽しんだ。
そして、迎えた4人目。順一の目の前に現れたのは、小柄で初々しい雰囲気を持つマイだった。緊張した様子で、ぎこちなく挨拶をする。
「は、初めまして……私は新人メイドのマイといいます。よろしくお願いします、ジュンさん」
その瞬間、順一は心を奪われた。彼女のぎこちない笑顔や一生懸命な態度が、これまでのキャストとは全く違う新鮮な魅力を感じさせた。
「こちらこそ、よろしくね、マイちゃん」
ぎこちないながらも一生懸命に接客するマイの様子に、順一は心が温かくなった。
「ジュンさん、本当にイケメンですね……それに、冒険者なんてすごいです」
「いや、大したことはしてないけど……マイちゃんと話してると、すごく癒やされるよ」
彼女の初々しい笑顔に、順一は完全に心を奪われていった。
マイとの時間が終わるとき、順一は彼女が自分の「推し」だと確信した。最後に、彼女は少し恥ずかしそうに微笑む。
「今日はありがとうございました、ジュンさん。またお話しできるのを楽しみにしています」
「絶対にまた来るよ、マイちゃん」
退店時、順一は2時間分の料金とキャストドリンク代を支払いながら、次回は必ずマイを指名しようと心に誓った。
「よし、次はもっと稼いで、もっと彼女と話そう」
推しとの再会を胸に、順一の冒険者生活は新たな目標に向かってさらに充実したものとなっていく。