第6話「チームの試練と信頼」
新たに手に入れた日本刀「霧霞」を腰に下げ、順一はギルドの掲示板を眺めていた。次のクエストを探しているのだが、最近はやや難易度の高い依頼が多い。これまではガルドやリナと組んで挑んできたが、新しい武器を手に入れたことで、彼は自信が湧いていた。
「これなら、今まで以上に戦えるはずだ」
そんな中、ガルドとリナがギルドの扉を開けて入ってきた。ガルドは順一の腰に下げられた新しい刀を見て、感心したように頷く。
「いい刀を手に入れたな。異世界の技術で作られたってやつか?」
「ああ。軽いけど切れ味は抜群だ」
順一が答えると、リナが目を輝かせて近づいてきた。
「順一、すごく似合ってるよ! なんか、ますますカッコよくなったね!」
「そ、そうか?」
リナの無邪気な言葉に少し照れる順一だが、内心では喜びが隠せない。彼の容姿に振られたステータスが、さらに「霧霞」を引き立てているようだ。
三人は掲示板をじっくりと見て回り、次のクエストを選んだ。今回の依頼は――。
『鉱山を占拠した岩魔獣ゴーレム討伐』
推奨人数:3~5名
報酬:銀貨80枚+鉱石の収益分配
「ゴーレムか。岩でできた魔獣だから、物理攻撃が効きづらいけど……うまく弱点を突けば勝てる相手だ」
ガルドが依頼書を見ながら分析する。リナもその横で頷いた。
「ゴーレムは魔法が効果的だよ! 私の炎魔法で硬い外殻を崩せるかもしれない!」
「報酬も悪くないし、挑戦してみる価値はありそうだな」
順一の提案にガルドも同意し、三人はゴーレム討伐の依頼を受けることにした。
鉱山へ向かう途中、三人は険しい山道を歩いていた。道中には小型の魔物が現れることもあるが、これまでの経験を活かして簡単に対処している。
「しかし、順一のその刀……やっぱり特別な感じがするな」
ガルドが歩きながら話しかけてきた。順一は「霧霞」を抜いて軽く振りながら答える。
「軽いし、扱いやすい。それに切れ味も抜群だよ。これがあれば、ゴーレムにも多少はダメージを与えられるかもな」
リナが横から笑顔で付け加える。
「でも順一って、動きが本当に洗練されてるよね! 初心者には見えないもん!」
「そ、そんなことないよ。二人が頼りになるから、なんとかやれてるだけだ」
順一は笑顔で答えたが、内心ではスキル「万能適応」の存在を隠していることに少し罪悪感を覚えていた。自分の動きが優れているのはスキルの影響であり、実力だけではない。だが、その秘密を明かすわけにはいかないと決めていた。
鉱山に到着すると、内部はひんやりとした空気と湿気で満たされていた。通路は複雑に入り組んでおり、壁には宝石のように輝く鉱石がちらほらと埋め込まれている。
「ここにゴーレムがいるのか……」
順一が呟いたそのとき、大地が揺れた。振動とともに奥から巨大な岩の塊――ゴーレムが現れる。
「来たぞ! 気を引き締めろ!」
ガルドが盾を構え、リナが魔法の詠唱を始める。順一も刀を抜き、構えを取った。
「行くぞ!」
ゴーレムはゆっくりと巨大な腕を振り上げ、地面に叩きつける。衝撃で岩の破片が飛び散り、三人は散開して回避する。
「リナ、外殻を崩せ!」
「任せて! ファイアボール!」
リナの放った炎の玉がゴーレムの胸部に直撃する。表面の岩が熱でひび割れ、小さな破片が崩れ落ちた。
「効いてるぞ! 続けてくれ!」
ガルドがゴーレムの正面で注意を引きながら、順一に指示を出す。
「順一、外殻が崩れた部分を狙え!」
「了解!」
順一は「霧霞」を握りしめ、崩れた部分を目指して駆け寄る。スキル「万能適応」が発動し、自然と最適な動きでゴーレムの攻撃をかわしながら接近する。
「これで終わりだ!」
刀を振り下ろし、ゴーレムの胸部に深々と切り込む。その瞬間、ゴーレムが大きく揺れ、ガラガラと崩れ落ちた。
「やった……倒した!」
リナが歓声を上げ、ガルドも笑顔で頷く。
「順一、やるじゃないか。いい動きだったぞ」
「いや、二人が支えてくれたおかげだよ」
順一は微笑みながら答えたが、心の中ではスキルの力を使いこなすことに対する自分への疑問が渦巻いていた。
「俺はこのままでいいのか……?」
その一方で、彼は確かな仲間との絆を感じていた。リナの無邪気な笑顔や、ガルドの頼れる背中が、彼の胸を温かくした。
ゴーレム討伐の報酬として銀貨80枚を手にした三人は、ギルドで次の計画を練っていた。
「次はもっと難しいクエストに挑戦しようぜ。順一なら十分ついて来れる」
「うん! 私たち、いいチームだもんね!」
順一はその言葉に笑顔で応えた。
「そうだな。俺ももっと強くなって、稼いで……そして、絶対に推しに会いに行く!」
こうして、新しい武器を手に入れた順一の冒険者生活は、さらなる成長の道を歩み始めるのだった。