第5話「新たな武器との出会い」
ゴブリン討伐に続いて、巨大魔獣グランボアの討伐も成功した順一たち。銀貨50枚の報酬と、売却した魔力のコアの収益を合わせ、順一の手元にはこれまでになく多くの資金が集まった。
「よし、これで少し余裕ができたな」
順一はギルドの酒場で銀貨の数を数えながら小さくガッツポーズを取る。生活費を気にせず、さらに次のクエストに挑戦するための準備を整える資金も確保できたのだ。
「ねぇ順一、武器を見直してみるのはどう?」
隣に座っていたリナが、順一の初心者用の剣を指さしながら言う。順一もその言葉に頷いた。
「確かに、この剣だと威力不足を感じることもあるな」
初心者用の装備では、大型モンスターに対抗するのは難しくなりつつある。ガルドも真剣な表情で口を挟んだ。
「武器の質が戦闘力を左右するのは間違いない。今のうちにいい装備を手に入れておくべきだな」
「そうだな……よし、武器屋を探してみるか」
こうして順一は、初めての本格的な武器を求めて街の武器屋巡りを始めることになった。
街には数多くの武器屋が軒を連ねていた。それぞれ独自の武器を取り扱っており、店主たちが自慢の品を順一に見せてくれる。
「こちらは最新型の魔法剣だよ! 初心者でも扱いやすくて人気なんだ!」
「いやいや、こっちの大剣だ! 重量感があるけど、一撃の破壊力が違うぜ!」
順一はあれこれと勧められる中で、自分にしっくりくる武器を探していた。しかし、どれも悪くはないが決め手に欠ける。
「うーん、なんかしっくりこないんだよな」
そんな中、ふと目に入ったのは、少し外れた場所にある小さな店だった。外観は地味で目立たないが、何か惹かれるものを感じた順一は、その店の扉を押した。
店内は薄暗く、どこか神秘的な雰囲気が漂っていた。壁には整然と並べられた武器が光を反射し、その中には見慣れた形のものがあった。
「これは……日本刀か?」
順一が目を奪われていると、奥から店主らしき男が現れた。彼は年配で、小柄ながらどこか落ち着いた風格を持っている。
「よく気づいたね。これは異世界人の俺の祖先から伝えた技術で作った刀だよ」
「日本か……!」
順一の胸が高鳴る。この異世界にも日本人が存在し、彼らが文化や技術を伝え残していることを改めて実感した瞬間だった。それに加えて本物の日本刀だ、感動しないわけがない。
「使いやすさと鋭さを追求している。しかも、軽いのに頑丈だ。試してみるかい?」
順一は手渡された刀を慎重に握った。軽やかな感触と、手に吸い付くような握り心地に驚く。
「……すごいな、これ」
「その刀は『霧霞』と名付けた一本だ。扱いやすさを重視しているが、初心者から上級者まで満足できる仕上がりだよ!ただ持ってるだけじゃ分からないだろ。外に試し切り用の藁束がある。試してみな。」
店の裏手に案内された順一は、試し切り用の藁束を前に立った。霧霞を手に構え、少し緊張しながら息を整える。
(『万能適応』のスキルがあるんだ。初めてでも……俺ならやれる!)
刀を振り抜くイメージを頭に描きながら、一気に藁束へと刃を走らせた。
――スパッ!
藁束が音もなく真っ二つに割れる。その断面はまるで鏡のように滑らかで、順一自身も驚くほど美しい切れ味だった。
「す、すげぇ……これが霧霞の切れ味か。」
「おお、初めての割には見事な腕前だな。いや、それ以上に刀が気に入ったみたいだ。」
「え?」
「こういう名刀はな、使う者を選ぶんだよ。お前さんみたいに扱える人間じゃないと、ただの飾りにしかならない。それがこれほど綺麗に切れたんだ――あの霧霞も満足してるってことさ。」
順一は店主の言葉に思わず笑みを浮かべる。
「この刀、俺が買います。値段はいくらですか?」
「銀貨100枚だ。高いと思うかもしれないが、それだけの価値はある。」
順一は迷わず銀貨の袋を差し出した。
「高くなんてないですよ。この刀と一緒なら、どんな冒険でもやれる気がします。」
店主は満足げに笑いながら金貨を受け取った。
「気に入った。そいつを手にしたからには、剣の名に恥じねぇ生き方をしな。」
「もちろんです。霧霞と一緒に、最高の冒険をしてみせますよ。」
こうして順一は新たな相棒となる「霧霞」を手に入れ、その切れ味と共に新たな冒険へと踏み出した。
「これで次の戦闘も安心だな」
ギルドに戻る道すがら、順一は新しい刀を眺めながら呟いた。次のクエストに向けて、さらに強くなりたいという意欲が湧いてくる。
「絶対に稼ぐ。そして推しに会いに行くんだ!」
順一の冒険者としての成長は、確かな一歩を踏み出した。新たな武器と共に、次なる挑戦に挑む準備が整ったのだった。
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