第21話「見下すやつらを見返せ!」
ギルドの掲示板の前で、順一はじっくりと依頼を吟味していた。
「そろそろ、もうちょい報酬がいいやつを狙ってもいいかもな……」
最近の依頼で得た銀貨は順調に貯まりつつある。だが、コンカフェ通いを安定させるためには、もっと効率よく稼ぐ必要がある。
「どうする? ちょっと難しめの依頼に挑戦するか?」
隣でガルドが腕を組みながら言う。リナも興味深そうに順一の選ぶ依頼を見ていた。
「うん、今の俺たちなら、少し格上の敵でもなんとかなると思う」
「それなら、こいつはどうだ?」
ガルドが指さしたのは、比較的高難易度の依頼だった。
『オーク討伐』
推奨人数:4~6人
報酬:銀貨180枚+討伐対象の素材持ち帰り可
「オークか……最近、群れで出没してるらしいな」
「結構手強い相手だけど、報酬は悪くないね」
リナも頷く。しかし、その時――
「へぇ、オーク討伐だぁ? お前らみたいな半端者がやるには、ちょっと難しすぎるんじゃねぇか?」
鼻につくような高圧的な声が響いた。
順一が声の主を振り向くと、そこには見るからに高慢そうな男と、その取り巻きらしき冒険者たちが立っていた。
「お前ら、確か最近そこそこ名が知られてきた『新入りパーティー』だったよな?」
「なんだよ、それ。別に俺たちは新入りってわけじゃねぇぞ」
順一が肩をすくめながら言うと、男はニヤリと笑い、嫌味たっぷりに続ける。
「ハハッ! そうかよ。でもな、オーク討伐ってのは、そこらの雑魚モンスター狩りとは違うんだぜ?」
「俺たちみたいに実力のある冒険者じゃねぇと、痛い目見るんじゃねぇの?」
「そうそう、それに剣士のくせに魔法に手を出す中途半端な奴が、ちゃんと戦えるのか?」
順一の肩がピクリと動いた。
(ああ、なるほどな……俺が魔法を使い始めたのを知って、バカにしてるわけか)
「まぁ、せいぜい頑張れよ? 俺たちの足を引っ張らないようにな!」
男たちは嘲笑を浮かべながら、別の依頼を取ってギルドを後にした。
「……ムカつくな」
ガルドが大剣を握りながら、不機嫌そうに呟く。
「順一、大丈夫?」
リナも心配そうに順一を見つめるが、彼はニヤリと笑っていた。
「見てろよ……俺たちがどれだけ強くなったか、証明してやる!」
目的地の森に到着すると、オークの群れがうろついているのが確認できた。
「全部で……七体か」
「数は多いけど、前よりも強くなってるし、いけるはず!」
順一は剣を抜き、魔力を集中させる。
「いくぞ! 『炎よ、槍となり敵を穿て!』」
詠唱とともに、手のひらに火の玉を作り出す。そして、それをオークの足元に向けて放つ。
「……!」
爆炎が広がり、オークたちの動きが鈍る。
「今だ!」
ガルドが前に出て、大剣でオークの腕を叩き斬る。リナは後方から雷撃を放ち、さらにオークたちの動きを制限する。
「順一、右のやつ!」
リナの声に反応し、順一は霧霞を握りしめる。
「もらった!」
オークの脇腹に深々と斬り込むと、痛みによってオークは叫びながら膝をつく。その隙にガルドが止めを刺し、さらにリナの魔法が次のオークを撃ち抜く。
「よし、あと三体!」
「油断するな!」
最後に残ったオークが武器を振り上げ、順一に襲いかかる。しかし、順一は素早く後ろに飛びのきながら次の詠唱を開始する。
「炎よ、弾丸となりて敵を撃て!」
手のひらから放たれた火球がオークの顔面を直撃し、その隙に順一が跳び込み――
「はぁっ!!」
霧霞でオークの首を一閃。
「……終わったな」
「ふふっ、楽勝だったね!」
「くっそ、なんであんな嫌味言われなきゃならねぇんだよなぁ!」
ガルドが吐き捨てるように言う。順一は剣を鞘に納めながら、ふと思った。
(そういえば、あの嫌味な連中はどこに行ったんだ?)
ギルドに戻ると、さっきの嫌味な男たちがいた。だが――
「う、うそだろ……?」
彼らは傷だらけで、ボロボロの状態だった。
「なんか随分とやられてるみたいだな?」
順一がニヤリと笑いながら近づくと、男はギリッと歯を食いしばった。
「チッ……まさか、オークの群れがもう一ついたとは……」
「へぇ、俺たちには偉そうに言ってたくせに?」
「……ぐっ」
順一は銀貨150枚の報酬を受け取りながら、ゆっくりと男たちに近づく。
「なんか言うことあるんじゃねぇの?」
「……チッ!」
男は何も言えず、悔しそうに立ち去っていく。
「ふぅ、スカッとした!」
「うん、やっぱり順一たちは強くなってるね!」
「当然だろ? 俺たちが格下なわけねぇんだからよ!」
順一は銀貨を手にしながら、心の中で呟いた。
(これでまた、マイちゃんに会いに行ける……!)
こうして、順一たちは見下していた連中を見返し、さらに一歩成長するのだった。




