第2話「異世界で冒険者デビュー!」
異世界に転送され、目を開けた順一の目の前に広がるのは、中世ヨーロッパ風の街並みだった。石畳の道、重厚なレンガ造りの建物、行き交う人々――だが、どこか現代的な雰囲気も感じられる。
「……本当に異世界かよ。でも、思ったより暮らしやすそうだな」
そう呟きながら周囲を見回すと、異世界らしい要素も目に入ってきた。道端には鎧を身につけた冒険者風の男が武器を磨いており、行商人が魔法石のようなものを売っている。上空では空を飛ぶ鳥のような魔獣が悠然と旋回していた。
「コンセプトカフェ『スイート・ローズ』」
ふと目に入った看板には、なじみ深い文字が躍っている。
思わず順一は声を上げた。
「本当にあるのかよ、コンカフェ……!」
感動する間もなく、順一はポケットを探る。財布やスマホを持っているが、現実世界の円やクレジットカードはここでは使えそうもない。
「稼がなきゃ……推しを探せないってことか」
気持ちを切り替えた順一は、まずは宿を確保しようと考えた。この異世界での基本的な生活環境を整えなければ、次の一歩を踏み出すことすらできない。
冒険者ギルド――それは、異世界らしさの象徴ともいえる場所だった。
大きな木製の扉を押し開けると、内部は予想以上に活気に満ちていた。酒場のような雰囲気の中で、冒険者たちが武器を持ち寄り、談笑している。壁にはクエストの依頼書がびっしりと張り付けられ、ギルドの受付嬢が忙しそうに対応している。
「おぉ……ゲームでよく見るやつだ」
異世界に来たことを改めて実感しながら、順一は受付のカウンターに近づいた。対応してくれたのは、淡いピンクの髪を持つ若い女性だった。にこやかで丁寧な態度が印象的だ。
「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ! 本日、どのようなご用件でいらっしゃいましたか?」
「冒険者になりたいんだけど……どうすればいい?」
「初めての登録ですね。少々お時間をいただきますが、よろしいですか?」
彼女の案内に従い、順一は登録用紙に名前やステータスを記入していく。
【高山順一】
職業:冒険者
「これで完了です! 冒険者登録証はこちらになります。これがあれば、街中の施設で優待が受けられることもありますので、大切にしてくださいね!」
彼女が渡してくれたのは、銀色のプレートに自分の名前が刻まれた冒険者証だった。それを手に取りながら、順一はほっと息をついた。
「さて……次は稼ぎだな」
最初のクエストは、森のスライム討伐だった。
初心者向けクエストとして案内されたスライム討伐。スライムは弱い魔物だが、油断すると粘液で足を取られることもあり、対処法を誤れば怪我につながる。順一は初心者用の剣を手に、ギルドから教えられた近くの森へ向かった。
「これが、俺の初仕事か……」
森に足を踏み入れると、湿った空気と木々のざわめきが耳を打つ。慎重に進んでいくと、やがて地面を這う青い粘液の塊――スライムを発見した。
「……意外と可愛い見た目だな」
そう思ったのも束の間、スライムが跳ねるようにこちらへ向かってきた。
「うわっ! これ、結構速いな!」
スライムの動きは予想以上に俊敏だった。慌てて剣を構える順一。だが、ここで彼のスキル「万能適応」が発動する。
スキル発動:万能適応――現在の状況に応じた動きの最適化を開始
スキルの効果により、順一の体が自然とスライムの動きに対応し、剣を振るタイミングを見極める。
「……なんだ、これ? 勝手に体が動いてる!」
結果として、順一は初めての戦闘でスライムを見事討伐することに成功した。
「これがスキルの力ってやつか……意外とやれるかもな」
スライムの討伐証明となるコアを回収し、順一はギルドへ戻った。
ギルドに戻ると、受付嬢が笑顔で迎えてくれた。
「スライム討伐、お疲れ様でした! 初めてのクエスト、無事達成できたようですね」
「まぁな。これが証拠だ」
順一は回収したスライムのコアをカウンターに置いた。それを確認した受付嬢が、報酬を渡してくれる。
獲得報酬:銀貨20枚
「この調子で、ぜひ次のクエストにも挑戦してくださいね!」
「ありがとう……でも、まだまだ稼ぎが足りないな」
銀貨20枚は、街での食事代や宿代に消える程度の金額だ。これでは、念願のコンカフェに通う余裕などない。
「もっと効率よく稼ぐ方法を見つけないと、推しを探すなんて夢のまた夢だ……!」
改めて決意を固める順一だったが、その表情には確かな充実感が漂っていた。
「よし、次だ。冒険者生活、頑張るか!」
こうして、高山順一の異世界での冒険者生活が本格的に幕を開けた。果たして彼は、推しに会うための資金を稼ぎ、異世界コンカフェ文化を堪能できるのか――?
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