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作者: 西野大悟

 夜明けの静寂を裂くように、カラスが鳴いた。しゃがれた声は、まるで怒りに満ち、世の全てを憎んでいるかのようだった。夜と朝の狭間、冷めた鋼の街は未だ眠りに沈んでいる。誰も意識しない世界で、彼らだけがその存在を声高に主張していた。昼間は雑踏に紛れ、冷ややかな視線を浴びる彼らも、この瞬間だけは。

 憎む理由を身体に誇示する日陰者。抑圧された彼らの声には、孤独と怒りが宿っている。居場所を奪われ、追い込まれた者の声。それは不自由な生の証明であり、抗えない現実への嘆きに他ならない。私たちが意識しないもの、気付かないことさえ気付かないもの。世界へのささやかな、しかし鮮烈な復讐として、カラスは執拗に訴える。しゃがれた声で。汚れた翼を見せつけて。漆黒の眼で世界を見下して。


 今朝もまた、カラスは鳴いた。押し殺された声の代弁者として。痛みの証明として。

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