表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/28

1-5 美男子

「と、いうことなんだよねぇ。思い出した?」


 はっと気づくと、目の前にあの白狐面の男が立っている。


 僕はまだ誰もいない道場に居た。


「はい。でも、じぃは僕の側にいましたよ。一昨日の朝目覚めたら枕元にいて、なんだろうと思ってたんです。可愛いから、ついそのままに」


「うん。一回連れ帰って手続きした。書類上は俺の龍ってことになってるよ」


「ええと、それがなんで僕のところに……」


「放し飼いにしてたら、出かけてるうちにいつのまにか居なくなっちゃっててさぁ〜ごめんごめん。君のこと好きなんだろうね」


 この前もなんだか緩い人だなと思ったことを僕は思い出した。


「でもやっぱり龍の気は目立つよね。この子はまだそれを調整できないから、黒狐のやつに見つかってしまった。君たちを守るには俺が君を弟子にするしかなかった、ごめんね」


「よくわからないけど、助けていただいてありがとうございます」


「助けられたのかどうかは、わからないよ。三月後に試しがある」


「試しって、さっきの人が僕にしてきたようなことですか……」


「そう。でもあれは新弟子検査みたいなもの。無くても弟子にはできるから、俺が君を弟子に登録した。そして今度の試しは、龍騎士としてやっていけるかどうかを試すものだよ。期限は三ヶ月。それまでに君は基本の形と術を覚える必要がある。これに通らないと、言いにくいんだけど殺されるんだよね」


 言いにくいと言いながらあっさりと言ってくれる。逆に現実味が薄くて、恐怖は薄らぐ。


「あの、警察に守ってもらえたりしないんですか……?」


「あははっ」


 男は笑上戸らしく、面白そうに笑って言った。


「日本は法治国家だって? 欠陥だらけの法律なんてなんの意味もないよ〜。まあ、殺人は犯罪だけど、バレなきゃ捕まえられないしね」


「バレないなんて、そんなことあるんですか?」


「いっぱいあるよ。わかり易いのだと呪いとか? 呪い殺されたって、日本の警察じゃそれ立証できないでしょ?」


 確かにそうだ。でも、実際そんなことがあるなんて、信じられない。


「まあ、君がこれから踏み入れなきゃ行けない世界ってのは、非常識が常識なところだよ。申し訳ないけど、この三月で積んでもらう鍛錬は厳しいものになるよ。俺は君を死なせたくないから、耐えてもらいたい」


「僕も、こんなわけのわからないまま死にたくはないです。でも、厳しいって、どのくらいですか」


 剣道の稽古も楽なものじゃない。でも、その先に死が待ち構えているようなことなんてなかった。


「そうだね。いわゆるシゴキとか体罰とか、現状の法律では禁止されるようなことが当たり前にある世界かな」


 僕は思わず唾を飲み込んだ。


「どうする?」


「もう、後には退けないんですよね」


「何も知らないただの中学生には戻れない。知ってしまったからね」


「変な気持ちです」


「変なってどんな?」


「怖い。とても怖いんですけど、でも、なんか、あなたに会えてよかったと思うような。今まで、人に見えないものが見えて、それがどうしてなのかわからなくて。自分はおかしいんじゃないかって思ってて。たまに世界から取り残されているような気がしていて。なんだかやらなきゃいけないことが他にあるのに、それが何かわからなくて。今、全部スッキリしたような気持ちです」


「それが、宿命だからね。いくら箱入り息子にしたって、逃れられはしないのさ。俺の弟子になるかい?」


 男が僕に手を伸ばしてくる。この手を取ったら終わりーー。


いや、始まりだ。


「よろしくお願いします」


 僕は男の手を握った。握り返してくれる男の手は力強かった。


 男が白狐の面にもう片方の手をやった。取る。

この作品悪くない


少しでもいい

と思っていただけましたら、ページ下の方の

⭐︎マークでポイントや評価、ブックマーク

を、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ