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3-9 地震



 巨大な触覚が、根本から折れて身体を滑り、地面に落ちて塵を吹き飛ばした。


 パラシュートもなく、空から落下してくる者がある。


 じぃが風のような速さでその者に向かっていった。その者を背で受け止めると、スピードを緩めこちらに戻ってくる。


 まさかと思ったけれど、やはりそれは東郷さんだった。


 相当急いでいたのか、スーツ姿のままだった。


 東郷さんは、いつもの軽口もなく、じぃの背から降りると、そのまま地面に崩れ落ちた。


「東郷さん、大丈夫ですか」


「間に合わなかった」悔しそうに地面を拳で叩く。


 そんな東郷さんをはじめて見た。そして、生涯忘れないだろう。


 僕は、東郷さんにかける言葉も見つからず、しばらく頭を抱えている東郷さんを黙って見つめるしかなかった。


 何が起きたのか。


 僕にも、薄々わかっていた。


 鯰を、止められなかったのだ。


 そしてそれは、先にここにきていたーー僕のせいだ。


 僕が鯰をあの時仕留めていれば……。


「とりあえず、戻ろう」


 東郷さんに肩を掴まれ、次の瞬間僕は東郷さんの部屋の中にいた。


 僕が苦労してもできない術を、東郷さんは一瞬でしてしまう。


 最初からすごい人だと思っていたけど、この世界を知れば知るほど、ますますその凄さがわかってくる。そして、僕と東郷さんの差が、どれほどかということも。


 東郷さんの部屋の中は思ったほど荒れていなかった。


 あちらにいた時、かなり揺れたと思ったけれど、そうでもなかったのだろうか。


 ただ、モニターは倒れていたので、やはり地震は起きてしまったのだと思い知らされる。


 東郷さんは家の中を確かめてから、玄関に向かう。そういえば、靴を履いたままだ。


「ちょっと、町の様子を見てくる」


 東郷さんの後を、僕も追った。


「僕も、連れていってください」


 じぃと紅も、僕の両肩に乗る。


 僕は、スマホのSNSや動画配信サイトで、地震の被害状況を調べながら東郷さんの後についていく。


 被害状況がどんどん発信されていくが、家が完全に倒壊したなど、そういった大きな被害はなさそうだった。


震度は都心部で4。


やはり僕が感じたより揺れは穏やかだったようだ。


 東郷さんはどこまで行くつもりなのか。


もう駅を五つくらいやり過ごしている。


 東郷さんはその間ずっと何か考え込んでいた。


僕は東郷さんにかける言葉もなくて、お互い無言のまま歩き続けてそのうち日が暮れた。


 その東郷さんがふと立ち止まった。

この作品悪くない


少しでもいい

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