3-7 消えた鯰
「あっ」
じぃと紅射を連れてくるのを忘れてしまったと、慌てて振り向くと二匹はちゃんと僕の後ろについてきていた。
「君たちは僕よりずっとかしこいな」
僕は苦笑いをし、持ってきた刀を腰にさす。
衣装を変える術がわからないから、服はポロシャツのままだ。
せめてあの面の出し方がわかればいいのだけど。だが幸い今日は異臭はさほど酷くない。
鯰はどこだ。
僕は辺りを見回す。いた。
僕はそれを見てギョッとする。巨大な鯰はビルの屋上からこちらを見下ろしていた。
僕をーー見ている?
と気づいた瞬間、鯰がカッと口を開き、何か飛んできた。
僕が反応できずにいると、その身体がさっとすくわれて舞い上がる。
身体を大きくしたじぃが、僕を背に乗せて飛んでくれていた。
「ごめん、助かった」
振り返ると、今の今僕が立っていた場所が硫酸でも掛けられたかのようにドロドロに溶けていた。
それを見て血の気が引く。
東郷さんたちはいつもこんな危険なところに身を晒しているのか……。
じぃが急旋回する。鯰の攻撃をうまく避けてくれている。
「じぃ、鯰に近づける?」
「ジィッ」
「ありがとう」
じぃが徐々に鯰に近づいていき、背後に回った。やっぱり近くによると生臭い。
触覚がその先に見える。
僕は東郷さんがしていたように、鯰の背に飛び乗ろうとした。だがその瞬間、鯰が巨体らしからぬ素早い動きで飛び立ったのだ。
「あれっ」
僕は着地点を失って、地面に向かって真っ逆さま。
「うあーっ!」
死ぬっ。まじで死ぬっ。
じぃが上から追ってくるが間に合わない。こういう時は瞬間移動できないのか!?
掴むことのできるものは何もない。手がかりなく僕は地面に落下。その身体が地面に打ち付けられそうになる寸前、何かが僕の背に滑り込んだ。
そのまま僕は空中へ舞い上がる。
身体を起こしてみると、薄紅色の鱗の上に僕は座っていた。
「紅射、ありがとう」
ぼくは心底安堵して、再び鯰を探す。だがもうそこから鯰の姿は消えていた。
逃がしてしまったのだろうか。
その後もしばらく鯰を探したけど、どこにも見当たらなかった。
僕は、鯰が消えて少しほっとしていた。
そのことが、何を意味するかも知らずに……。
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