3-1 紅射龍
第三章
3-1
家の鍵を開けてドアを開き、ハタと東郷さんが固まる。
「すいません、部屋を間違えました」
バタンとドアを閉めてしまった。
「なにやってるんですか。ここ東郷さんちですよ」
「え? だってなんか違うよ」
僕はドアを開いて東郷さんに中を見せる。
「片付いてるだけですよ。里に帰る前、僕とじいで掃除したんです」
あの時東郷さんは飛び起きてシャワーを浴びると、慌てて出発をした。
部屋が片付いてることに気づいていなかったらしい。
「え、すごい。ありがとう」
東郷さんは素直に驚いている。
「物もないし、ゴミ捨てるだけだから簡単でしたよ」
「片付いてるって、いいね。なんだか心が休まるよう」
東郷さんは嬉しそうに何もない床にダイブした。
ちゃんと雑巾掛けもしてあるから安心。
「颯希はきれい好きなんだね」
「ちょっと潔癖なところあります」
「それくらいの方がいいよね。やっぱり清潔にしてた方が力も出るし」
「あの、台所も使っていいですか? やったことはないけど、料理もしてみたくて」
「ほんとに? 凄いじゃん、颯希。全然いいよ、好きなように使って。あ、火事出しても大丈夫。じぃが消してくれるからね」
「火事なんて出しませんよ! でもじぃがって、どういうことですか?」
「牙が生えてきたんだよ」
東郷さんは起き上がると、にこりと笑ってじいを手招きした。
今は子猫サイズのじぃが東郷さんの膝にちょこんと座る。その口を、東郷さんが両指で開いた。
「見て見て」
僕が覗き込むと、じいの口の中に牙が見えた。
「牙が生えると属性の能力を使えるようになるんだ。じぃももう使えるだろ?」
東郷さんはそう言うけど、じぃは小首を傾げる。
「あれ、まだかな? ほら、ふーってしてごらんよ」
じいは口を窄めてふーっと息を吐き出すが、何事も起きなかった。
「そっかーまだか。じいは水龍だと思うんだけどなぁ」
「その通りですよ」
どこからともなく声がしたかと思うと、押し入れの襖が開いて中から玉藻が姿を現した。
「玉藻! 久しぶり」
もう僕はこの人たちにまともに玄関から訪ねてくるようなことなど期待しない。
「どうもどうもお久しぶりです。結局、思い出しちゃったんですね。でも良かったです。こうしてまた会うことができて、嬉しいです」
「僕もだよ」
「昨日雪兜さんからお預かりした紅射龍さま。治療が終わったのでお届けにあがりましたよ」
「もうかい? 酷い怪我だったようだけど、大丈夫だったの?」
東郷がおどろく。紅射龍は東郷が昨日助けたあの真っ赤に焼けてた龍のことだ。
「私のところに届いた時にはもうほとんど傷は癒えてましたよ。その代わり東郷さまが酷い怪我をなされたと伺いました」
玉藻は、改まって深々と東郷に頭を下げる。
「龍さまのために自らが犠牲になり、見上げた心意気です。育師として、感謝の気持ちでいっぱいでございます。誠に、ありがとうございます」
「やめてよー。そんなんじゃないから。ただ、熱そうで痛そうでかわいそうだったから、よしよししてあげただけだよ」
気を失うほど辛かったくせに、よく言う。
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