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2-8 瞬間移動



 神様にお願いするように、柏手を一つ打ちながら。


 すると、拍子抜けするほどあっさりと、僕の周りの透明な泡が消え去った。


「東郷さん・・・・・・」


 やはり言葉足らずだ、あの人。


 でも、凄い人だということはもう否応なくわかる。


 東郷さんみたいになりたい。


 僕を守ろうとしてくれた父には悪いけど、僕はもう東郷さんに憧れてしまっていた。


 一歩踏み出すことで、殻は壊れる。壊せる。


「あれ、でもここからどうやって帰ったらいいんだ?」


 僕が暗い海を前に立ち尽くしていると、「ジイッ」と足元で鳴く声がした。


 振り向くと、じいがいた。


 みるみる間にその身体が大きくなっていく。


 ポニーくらいの大きさになると、じいは僕に背に乗れと示してきた。


「大丈夫? 振り落とさないでね、僕あまり高いところ好きじゃないんだ」


「ジイッ」


 オッケー。みたいな感じで、じいが舞い上がる。


「うわっ」


 一瞬ふわりと僕の身体も浮かび上がる。


 重力なんて無くなってしまったみたいだ。


 飛行機やヘリコプターに乗る感覚とはまるで違う。僕自身が浮いているみたい。


 でも風は感じる。


 不思議なことにそれは向かい風でなくて、僕たちを優しく包むような風だった。


 気づけば僕は夜空を舞って、元の里に戻ってきていた。 

この作品悪くない


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