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#12 Collapse(クラップス)

#12 Collapse(クラップス)

挿絵(By みてみん)

 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 霊否の悪魔の断末魔のような叫びがフィールドに響き渡る。喉が張り裂けんばかりの叫びは悲痛に歪んだ受刑者の咆哮のようであった。

 目の辺りを抑えながら、うずくまっている霊否に上星が即座に駆け寄る。

 「霊否!どうした?!」

 「目ェ・・・・・っ目玉が・・・・っ!!熱い・・・」

 「目?!」

 「取り出さないと・・・」

 涙が次からあふれてくるが、眼球に触れたとたん即蒸発する。その高熱に今にも瞼がただれ、その灼熱の眼球がボトリとただれ落ちてきそうだった。

 「おい!知念さん!水もってこい!早く!!!」

 上星にそう言われ、いままで石像のように固まっていて姫子がはじかれたように動き出した。

 「霊否ちゃん!霊否ちゃん!」

 メドゥーサが霊否を抱きしめながら必死に呼びかける。霊否は激痛の中。以前メドゥーサに言われたことを思い出した。


============

 「霊否ちゃんはまだ力のコントロールができてないから、これ以上使いすぎると体に負荷がかかりすぎるからって無意識にストッパーをかけることがあるの。すると一時的に異能が使えなくなるよ。」

 「異能の力はとても強力なもの。使いすぎると力を取り込んだ体の一部が異常をきたすことがあるから気をつけてね!」

 「霊否ちゃんの場合、目がその一部だから、瞼がただれるくらい目ん玉が高熱になるね!」

============


 まさかこれは異能を酷使したことによる反動—————?!

 「いま、こんなタイミングで・・・・・?」

 痛みに悶えながら霊否は言った。

 メドューサの覚醒による異能の全能力解放、自身の血液を自在に操ることができるとは言え、その人知を超えた力の使用は体に多大な負荷がかかる。体の血液を大量に操作することに伴い、繊細な血液操作が必要とされるブラットウィップを立て続けに3回も使用した。異能は確実に霊否の神経を蝕んでいたのだ。

 本来であれば限界を迎える前に体が無意識にストッパーをかけ、異能が使えなくなる。だが、父親の真相にたどり着きたいという想い、そして飛来・七海との戦闘により大量のアドレナリンが放出されていた。その結果、本来かかるはずのストッパーがかからず、ここまで悪化するまで体の異常に気が付かなかった。

 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・・・・」

 霊否の叫び声が徐々に弱まってきた。痛みが治まったのではない。あまりの激痛に意識が遠のきだしてきたのだ。

 姫子がバケツに大量の水を持ってやってきた。重いのか、のろのろとバケツを運ぶ彼女に上星は苛立ちを覚えた。遅い、遅い、上星は姫子からバケツをひったくると、霊否の頭から思いっきりかける。「ぎゃっ!」という霊否の悲鳴が聞こえる。だが、眼球付近にかかった水は高熱によりすぐに蒸発してしまう。眼球の熱は冷めることはなく蒸気が虚しく立ち昇るだけであった。

 「ダメだ・・・こんなんじゃ全然足りない・・!もっと水!あと氷も!!」

 上星が声を張り上げる。

 そして、三人の様子を、玖源は冷たく一瞥した。そして両手を大きく広げると、闘技場にいる数千の観客に向かって大声で叫んだ。

 「みんなみろ」

 霊否を鋭く指さして言う。

 「これが祟りだ!」

 「は‥‥?」

 上星は目を見開いて言った。なんでだ。なんでそんな霊否を貶めるようなことを言うんだ。 

 「違う、これは異能を使いすぎたことの反動で・・・・!」

 霊否も痛みに耐えながら必死に説明する。

 「はあ・・・?なにを言ってんだ玖源さん」

 観客席にいた、風紀委員の一人が言った。

 「祟りは存在しない、生徒会との戦いでそれを俺たち自身が証明したんじゃないか!」

 「なにより祟りなんて無いとあんたが言ったんじゃないか!」

 一人の発言を皮切りに、観客席からはそうだ、そうだと次々に声が上がる。玖源はそんな観客に目もくれず、語り続ける。

 「いまから27年前ある女の子がこの学園に転校してきた」

 玖源はポツリポツリと語り出した。観客の視線は玖源の口元、その一点に集められる。彼女はこれから何を語ろうというのか。

 「その子は同級生の女からいじめに遭い、自殺してしまった」

 学園中のすべての人間の注目を引き付けた玖源は、これが仕上げだと言わんばかりに声を張り上げる。

 「学校はいじめがあった事実が世間に暴露されることを恐れ、隠蔽した!」

 「玖源さん・・・・・・?」

 なんなんだ彼女は。なぜ彼女が27年前の事件のことを知ってる。

 そしてなぜそんなことをこんな大勢の生徒に向けて語っているんだ。

 こいつは何者だ。なにが目的だ。上星は恐怖で手がガタガタと震えた。心臓がバクバクと音を立てて鳴る。苦しいほど鼓動が激しい


 —————すべての真実が明らかになるとき


 「私なんだよ、上星」

 玖源は、今度は上星と霊否にだけ届くような声で言った。


 —————世界は


 「26年前、この学園で同級生を5人を殺害したのは」


 —————その姿を変える


 「私が、少女Aだ」


 そう言い切った玖源は空を見上げる。風になびくベージュ色の髪をかき上げ、そこにいるであろう、亡友の姿を思い浮かべた。

 思えばここまで長かった。何年も、何年も玖源は待った。そしてついにその時が来たのだ。霊否が現れてから、20年間変わらなかったすべての状況が変わった。

 「ついに始めるよ・・・クミちゃん・・・」

 この名前を声に出して言うのも何年振りだろうか。片時もわすれたことのない鮮烈な記憶を、玖源はゆっくりと呼び起こした—————


***

 

 時はさかのぼり、昭和62年 9月


 源 玉子 17歳 高校二年生


 壇ノ浦学園女子高生連続殺人事件 第一の事件発生の5か月前——————————






=============

    【次回予告】

=============


 私にはあの子しかいなかった。あの子にも私しかいなかった。

 でも、大切なあの子は魂の抜けたただの肉塊(にくかい)となり、灰となった。

 私がするのは復讐などではない。啓蒙(けいもう)だ———


 次回、|AstiMaitriseアスティメトライズ #13 「少女A」


 これはあの子が死に、私が生まれた物語。





次回、ついに物語最大の謎である20年前の事件の真相が明らかに————、

2025年8月末に各小説投稿サイトして公開予定です。ご期待下さい!

 



=============

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