第5話:謁見
~~~~~~~~~~~~ダルシェナ城~~~~~~~~~~~~
現在時刻9時位かな・・・眠い・・・。昨夜寝ようとしたら布団が煎餅布団だった、俺は元の世界ではベッドを使っていた。しかしこの世界に来て、ベッドを一度も使ってない・・・まぁ、この一応犯罪者と言う状況でベッドを要求すると言うのがそもそもおかしいのだが、煎餅布団を使ってばかりで疲れが取れる事がない中今日はいつに増しても酷い。何故なら、牢屋の中が石造りになっていて布団を敷いても床のゴツゴツ感が伝わってきて寝ようにも眠れないし寝て起きたら身体の節々が痛い・・・と言う訳で今の俺は非常に機嫌が悪い。
と、俺の現象報告はここまでにしといて。現在俺はダルシェナ城にいる、と言っても今も目隠しプラス手錠の状態だが、足から伝わってくる高級感溢れる絨毯の踏み心地が何とも言えない。
「着いたぞ、この扉の中が謁見の間だ」
その声と共に目隠しが外される。そして目の前に俺の身長の倍位の両開きの扉があり傍らには人が控えている。
「さぁ、ぼーとしてないで中に入れ」
背中を押され一歩前に出ると傍らに控えてた人が扉を開き俺は中に入った。
バタン
中に入ると扉が閉められた。そして中にいた騎士が俺を挟む形で俺に付いた。何かあったら直ぐに対応できるようにだろう。
謁見の間を見渡して見るとかなりの広さで奥に階段がありその上には冠を被った王と王妃がおり側に近衛隊が控えている。階段の横にはお偉いさん方がおり壁沿いにも騎士が控えている。
「罪人よ前に出よ」
誰が罪人だ!そう思いながら止まっていると後ろから騎士に背中を押され、階段近くまで行く。
「まず、お前の名前を言え」
威圧感を出しつつ王が俺に命令する。
「・・・太郎」
とりあえず嘘をついて見る。
「嘘をつくな!!」
声を発したのは階段の横にいたじいさんだ。!!何故嘘がバレた?・・・あぁ、アイツが俺をここに呼んだ奴か。なら俺を知っててもおかしくない。
「何故嘘をついた」
「そんな事はどうでもいい。王が俺をここに呼んだのは俺をこの国の駒にするためか?」
俺の言葉にさっきのじいさんが驚きの表情をしている。
「やはりか・・・バカバカしい。俺は帰えらしてもらう」
そう言って踵を返し歩き出す。
「待て!お前の判決がまだ決定してないぞ」
ニヤリと笑いながらじいさんが俺を呼び止める。チッ、バレたか、どさくさに紛れて出て行くつもりだったのに・・・
しょうがなく振り向く。
「お前は、一般人にも関わらず50近くの人を殺したこれは死刑に値する。この罪はどうする?もしこの国に仕えるお前の罪を許してやるが?」
ニヤニヤと笑うじいさんの代わりに王が俺の罪を言う。
「・・・俺は盗賊を殺しただけだ、ゴミ共を殺して何が悪い」
「だが、お前の殺した奴の中に一般人が入ってた可能性がある」
・・・
「今・・・何て言った・・・」
「お前が殺した中に一般人がいたかもしれないと言ったんだ」
「そんな筈ない!!俺は盗賊だけを殺した!!」
「なら、お前はどうやって盗賊と見分けた?」
「それは・・・襲いかかって来る奴と逃げて行く奴を盗賊と考えて・・・」
「逃げて行く奴の中にお前に恐怖して逃げる一般人がいたら?」
・・・
「お前は」
・・・うるさい・・・やめろ・・・それ以上喋るな・・・
「一般人を殺したかもしれない」
「黙れぇぇぇええええ!!!!」
俺は王に向かって走り出した。しかし階段の途中で近衛隊が立ち塞がる。俺は拘束された腕を横に薙ぎ払う動作をした。すると近衛隊は吹っ飛び壁に激突して床に落ちた。
王の下へ行き胸ぐらを掴む、その行為に王以外の家臣が「無礼だ」等と言っているが王はそれを手で制した。
「俺は一般人を殺してない!!」
「何故そう言い切れる?多くの人がいたんだろ?一般人がその中に居てもおかしくない」
「うるさい!!俺は!!」
俺は拳を振りかぶったが、ここで殴ってしまったらいけないと自制し、その場から逃げる様に消えた。
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俺が居なくなった後謁見の間では、
「おい、罪人はどこへ行った!!」
宰相のガイルが大きな声で怒鳴る。
「まぁ、落ち着けガイルよ」
王は落ち着いていた。
「しかし、王様!罪人が逃げたのですよ!!」
「そうだが、奴は魔術が使えないのに消えた」
「何故魔術が使えないと?」
「手錠が魔力を封印している。なのに消えた。これは奴が何か別の力を持っていると考えるべきだ」
「別の力ですか・・・。では一応罪人が逃げたと言う事で門に厳重な警備をさせましょう」
ガイルの言葉に王は頷いた。