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僕とおじいちゃんの夏休み  作者: 口羽龍
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8月22日

 8月22日、いつものように智也は目覚めた。智也は辺りを見渡した。だが、和夫と優太が隣で寝ていない。どこに行ったんだろう。智也は首をかしげた。


 智也は1階にやって来た。だが、そこにも2人はいない。シゲは朝食を作っている。一体どこに行ったんだろう。


 智也は玄関を出て、外に出た。そこには2人がいる。何かを埋めているようだ。何を埋めているんだろう。智也は聞きたいと思った。


「おはよう」


 智也の声に気付き、2人は振り向いた。そこには智也がいる。2人は驚いた。まさか、起きてくるとは。


「あっ、おはよう」

「何埋めてるの?」


 智也は和夫が持っている箱に興味津々だ。その箱は銀色のステンレスの容器だ。それを土に埋めるんだろうか?


「タイムカプセル」


 タイムカプセルは地中に埋めて、ある程度経ったら開けるものだ。小学校で埋めた覚えがあるが、どうして和夫がそんな事をするんだろう。


「どうして?」


 智也は首をかしげた。どうしてこんなのをシゲの家に埋めるんだろう。


「36年後の自分に送ろうかなって」


 和夫は36年後の自分に手紙を書き、それをタイムカプセルに入れた。そして、36年後の9月1日、2022年の9月1日にこれを開けようと思っているようだ。


「ふーん。でも、どうして36年後なの?」

「あと36年で今の父さんと同じ年齢になるんだよ。当時の父と同じ年齢になって、どんな大人になっているかメッセージを送るんだよ」


 和夫は今までの事を反省し、この夏休みで成長する。自分はいい子になる。この村を離れてから、自分は名門の高校や大学に進学する。そして、父と同じ、立派な社会人になる。父の今の年齢と同じ年齢になって、どこまで成長したのか、36年後の自分にメッセージを送ろう。


「へぇ、面白いじゃん!」


 智也は感心した。まさか、和夫がこんなに頑張るなんて。ここに来るだけでこんなに変わるなんて。


「ちゃんといい子になってるかって」

「そうだね」


 優太も感心した。自分もシゲのためにいい子にならないと。これは自分へのメッセージでもある。みんなでいい子になって、成長して、再びここを訪れよう。


「36年後も残ってるかな?」


 智也は首をかしげた。何らかの自然災害で埋まってしまったりなどでタイムカプセルが流されないだろうか?


「わからないけど、36年後、また来てみたら?」

「うん、そうしよう」


 その時3人は決意した。36年後、再び秋平を訪れよう。そして、みんなでタイムカプセルを掘り起こそう。


 和夫は家の前にある大木の下のタイムカプセルを埋めた。36年後、必ずこれを掘り起こそうと約束して。


「和ちゃん、何してるの? ご飯だよー」


 3人は振り向いた。シゲがいる。シゲはタイムカプセルの事を知らないようだ。


「はーい。ごめんごめん」


 3人は家に向かった。シゲは首をかしげた。家の前で何をしていたんだろう。




 昼下がり、朝から勉強をしていた3人は空を見上げていた。勉強はほとんど済ませた。東京に帰るまでには終わりそうだ。


「どうしようかな?」

「僕も考えてないよ」


 優太と智也は暇そうな表情だ。何もやる事はない。東京ならもっとやる事があるのに。


「この辺りで遊んでみよっか。昆虫採集で」


 和夫は昆虫採集をしようと提案した。こんな体験、街中ではなかなかできないだろう。東京に行く前に経験してもらわないと。


「えっ、昆虫採集?」


 智也は驚いた。まさか昆虫採集をやるとは。


「行ってみようか?」

「うん」


 3人は雑木林に行く事にした。以前、和夫は塚田と行ったことがあるが、3人で行くのは初めてだ。


 3人は雑木林に向かった。優太と智也は楽しそうな表情だ。こんな田舎で昆虫採集をするのはそんなにない事だ。自然が豊かな分、色んな昆虫が見つかるんだろうな。


 3人は秋平のはずれにある雑木林にやって来た。以前来た時に比べて少し涼しくなっている。徐々に秋の足音が聞こえてくるようだ。


 どんどん道から外れていくと、セミの声がいつも以上に聞こえる。どれだけの昆虫を見る事ができるんだろう。


「カブトムシだ!」


 突然、声が聞こえた。智也だ。カブトムシがこんなに簡単に捕まえる事ができるなんて。これが田舎と都会の差だろうか?


「オオクワガタ!」


 今度は優太だ。オオクワガタを捕まえたようだ。都会で捕まえたものより大きい。こんなのが捕まえられるなんて。田舎でしかできそうにない。田舎ってこんなに楽しいんだな。


「都会ではこんなの、見れないね」

「うん」


 3人は残り少なくなった田舎での生活を惜しみつつ、楽しんだ。東京に行ってもこの体験は忘れないようにしよう。




 その夜、和夫は1階に下りてきた。和子に電話しようと思っているようだ。和夫は何考え事をしているようだ。シゲががんだという事は知っているのに。まだあるんだろうか?


 和夫は受話器を取って、和子に電話をかけた。しばらくすると、和子が電話に出た。


「もしもし」

「あっ、和ちゃん、どうしたの?」


 和子の声だ。いつものように元気そうだ。和夫はほっとした。今までの悪い事を気にしていないようだ。


「秋平って、どうなってしまうのかなと思って」

「うーん、難しいわね」


 和子は少し戸惑った。和子の集落もそんな田舎にあって、高齢化による過疎化が進んでいるという。あまり気にしていないものの、戻るたびに深く考え込んでしまう。


「このままなくなっちゃうのかなって」

「たとえなくなったとしても、思い出はいつまでも残るさ。お父さんに代わるね」


 和子は持っていた受話器を俊介に渡した。俊介は驚いた。まさか電話に応えるとは。


「うん」

「もしもし」


 和夫は真剣そうな声だ。俊介は戸惑った。一体何だろう。


「お父さん?」

「ああ」

「秋平って、どうなってしまうのかなと思って」


 俊介は考えた。秋平はどうなってしまうんだろう。高齢化が進んで、消えてしまうんだろうか?


「それは難しい問題だな」


 俊介は頭を抱えた。今まで考えた事がない。秋平から人がいなくなるなんて。だが、近い将来そうなるかもしれない。いずれにしろ考えなければならない。


「このまま誰もいなくなっちゃうんだろうかと思って」

「そうだな。いずれはそうなるんだろうか? みんな豊かな生活を求めて都会に行ってしまうから」


 俊介は戸惑った。本当にこんな答えでいいのか。間違っていないだろうか?


「そうならないでほしいな」

「うん。でも時代の流れには逆らえないんだろうな」


 俊介もそうだ。豊かさを求めて東京に移り住み、その中で森琴村のような田舎は高齢化が進み、やがて消えてしまう。実家のある集落もいずれそうなるんだろうか?


「そうだね。おやすみ父さん」

「おやすみー」


 和夫は受話器を置いた。和夫は玄関から外に出た。秋平はとても静かだ。今日も星空がきれいに見える。賑わっていた頃と星空は変わらないだろうけど、秋平は変わった。この先、秋平はどうなってしまうんだろうか? 元の何もない原野に戻るんだろうか?

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