エピソード4 終わりの始まり
レベルアップのアナウンスが一通り終わったと思ったら、最後に俺の初めてのスキルを獲得したアナウンスが鳴った
{職業【運び屋】を取得したことにより、スキル〔異空間収納〕を獲得しました}
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佐伯誠 20歳 男
職業:【運び屋】
レベル:7
HP:18
MP:23
STR:13
VIT:10
INT:4
RES:8
AGI:16
LUK:4
スキル
〔異空間収納/Lv1〕
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スキル……。
おおおおおおおおお!ついに俺のスキルが!しかも異空間収納って超便利なものじゃん!
俺はめちゃくちゃ興奮した
だってそうだろ戦闘系や支援系のスキルがどんなものか知らないけど、移動時に重宝されることに間違いないし、田舎に住んでるから常に大荷物の持ち運び問題が付きまとってきていて、実はもううんざりしていたんだ
もう後悔なんてない、さっき神主さんに激怒されたことなんかよりもずっと最高な瞬間だ
もちろんスキルだけでなく、俺の体にもしっかりとレベルアップの効果が表れていた
『体があつい、ほのぼのと体の奥底から力が湧き上がってくる。今にも空を飛べそうなぐらいジャンプできそうだ』
そう、身体能力が大幅に上昇している。平均してステータスの値が8ぐらい伸びた
俺はスライムの巣的な小さな穴に強アルカリ電解水を投入しただけで、一気にレベル7にまで跳ね上がってしまった。しかも、そのレベルアップって電解水のたった1タンク分しかなくて、全部投入するといったいどれだけレベルアップするんだろうかわからない
『この異空間収納がレベル1ってことは、やっぱり使うにあたって制約とか限界容量みたいなのが存在するってことだよな...』
俺は今この場でできることを片っ端から試した
まずは、そうだな。このタンクなんて収納できるのかな。家まで持ち帰らないと後々厄介ごとになりそうだし、一応化学物質だしな
俺は試しに3つのタンクを異空間に収納するイメージで集中した
シュンッ!
結果は見ての通り、その念じた対象物に対してなにか斜線がかぶさったみたいにもやがかかり、どこかに消えてしまった。俺はどこに収納されているか確認するために、ステータスボードも開く
おお、こんなとこに新しい表示が増えてる!
ステータスボードの画面の右下に、[インベントリ]というボタンがあった
インベントリか、ふむふむ...。響きがいい!
この、言葉では言い表すことができない心が躍る躍動感。このファンタジー要素が俺の心を子どもの無垢な頃に呼び戻してくれる
俺は異空間収納にしまうことが楽しくなって、様々なものを収納してみた
結果は、目安としてだが両手で抱えられるものはとりあえずなんでも収納が出来た
収納できなかったものは、大きな岩や自転車、散乱と倒れている大きな木々などなど...。
レベル1でこのぐらい収納できたなら優秀じゃないのか??この台車だって、両手で持てるって意味なのか分からないが収納できたしな、たぶん重量とか対象物の質の部分で制限がかかってくる系のスキルなんだ
もうひとつ、確認しておかないといけないことがあった
それは、視認できていることが条件なのか、またどこに出し入れできるのかということだ。異空間収納だって考えようで、攻撃系スキルに変わることだってある
例えばスライムに対して電解水、兎型のモンスターに対しては大きな盾のようにこの2つを使い分けられるようにできるのなら、何とも簡単な攻撃系スキルではないのか??
このスキルの戦闘面での活用はおいおい決めるとして、もうそろそろ夕方だな。母には友人と遊びに行っていると伝えているだけで、帰る時間は伝えていないし18:00には帰っておいた方がいい気がする
俺は自転車のギアをとりあえず最大にし、漕ぐ
ガタンッ!!
俺は勢いよく転倒してしまった
でも、ステータスのおかげなのか体には何一つ傷もなく出血もない
あ、自転車のペダルが曲がってる...。
うわぁ...、こんな弊害もあるのか
このレベルアップによる身体能力の上昇は、今後周りの人に隠し通していけるものなのか。多分だけど、無理だな。いろんなものを壊してしまいそうで正直怖い
俺は引きつった顔をなんとか、通常の顔に戻し力や素早さを制御するために、よりいっそう慎重に生活することを心に決めた
この自転車は...、もういらないか
自転車を手に取り、紙を丸めるみたいに力いっぱい両端から圧力をかけた
ギギ、ギギギギ、ギー
ゆっくりとだが、自転車は小さな鉄の塊に変貌した
これなら!と、俺は異空間収納でしまう
『よし、もうなにも気に掛けるものがなくなったなー!台車をホームセンターに返すついでに、ちょっと軽く身体能力を確認してみるか』
神社を出た俺は、下りの坂道を思いっきり走りながら力強くジャンプした
風が耳の近くでなびく
太陽が沈む方には所々山があり、視界の端には夕焼け色の日本海が広がっていた
『わあぁ』
軽く地面から7メートルは飛んだんだろうか、頭上に広がる鳥たちの群れはいつもの世界から見るものより近く、生き生きとしている
大自然の摂理がそこには存在していた
目の前には、俺のジャンプした高さよりもずっと高い木が生えていて、そこに飛び乗りさらに上を目指した
登るときに、枝や草木の生い茂る葉っぱにぶつかる。しかし、何も痛みはない。痛々しい枝がなっているが、この防御力というか忍耐力はレベルアップのたまものなんだろう
登る
登る
そして、また登る
やはり、でかいだけの木だけある。地上から30メートルは登ったんじゃないか
眼下には俺の生きる町が広がっていた。
『俺決めた!この町の景色、んでもって町の人々!何があっても絶対に守り通す!』
この不穏な胸騒ぎはほぼ確定と言っていいほど確信に近づいた
恐らく、日本だけではない、全世界でモンスターが出現するはずだ。俺はたった、一人の冒険者のような存在でしかなくなる
みんな経験していくんだ。
『なんのために、こんな世界に変わっちまったのかはわからないが、まだまだ綺麗で美しいこの世界を俺は守って見せる』
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俺の予感の通り、次の日には全国各地でモンスターの目撃情報が出てきた
スライムから始まり、兎型のモンスターをホーンラビットと名付けるやつもいる。昆虫型のモンスターや鳥型モンスターなども発見されて、各都道府県に大小様々なサイズの洞穴や洞窟が突然出現した
俺の知る、神社の穴も実はそのうちの一つだったりするのだが、それは後々知ることになる
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この部で第1章の最後となります!!
ここまで読んでいただきありがとうございました!!
次回からはついに、全世界共通のモンスター出現による、日常章となっています!
それでは、この小説が面白かったらブックマークとコメントをぜひ、よろしくお願いします!