鬼とかくれんぼ
かくれんぼ。
その言葉を聞くと、今も異常な寒気がする。というのも、俺が子どもの頃。森の中で、川のあたりに隠れてそのまま行方不明になった友人がいたからだ。親たちからはこのことを隠すように言われた。友人の親と他の親とも揉めていたが、俺はそれをただ見ているだけだった。
大人になった今。都会に出張することになり、そんな言葉を口にする機会などないと思っていた。しかし、目の前の小学生ぐらいの子どもが三人程で「かくれんぼをしよう」と会話をしている。
俺はなぜか寒気がした。そのうちの一人の女の子が公衆トイレに隠れたのを確認して、彼女の後をついて行った。
◇◆◇
しばらくして女の子は、死体となった。
「これだからかくれんぼは止められないんだ」
俺は恍惚とした表情で、川に流される友人の姿を思い出しながら、都会の人ごみに紛れた。誰も俺が鬼だなんて思いやしないだろう。そんなだから手を付けられちまうんだ。