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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
Will I change the Fate? 後日談 Leave footsteps
99/102

phony

アマンテスはクラリス討伐に失敗し、これらのことから彼は『新選組』へと『グレゴリオ』の調査依頼を土方へと依頼する。


一方その裏で、土方はここしばらくの間、ある事を思案していた。

それこそ、『グレゴリオ』の内部崩壊。


はたして彼はいつどこで、『グレゴリオ』を知ったのか?


全ては彼があの一夜の戦争で負ったある代償によって、払わされたもの。

そして彼の人生もまた、徐々に狂い始めていく。




「もしもし」



新宿の一等地に拠点を構える新選組本部に、1本の電話が入る。


これに応答したのは、新選組隊長代理である土方幹之。

本来ならば彼に連絡するなら、情報課を通す必要がある。しかし鳴ったのは自室に備わった電話でも、情報課からの連絡でもなかった。


彼のデスクに置いた携帯のディスプレイには、ある人物の電話番号が映り、それを見た瞬間土方はすぐに携帯電話へと手を伸ばした。


知らない番号であったものの、番号からして日本のものではない。だとすれば彼にある心当たりはただ1つ。そして返事を返せば、幼い声で重く深刻そうに咳払いする音が返ってきた。



「俺だ、アマンテスだ」


「やっぱりな、一体なんの用だ?」



薄々気づいていた土方ではあるが、彼にはアマンテスが如何なる理由で自身に連絡をしてきたのかまでは分からない。


場合によっては彼は今ここでアマンテスからの通話を切る必要があった。


なにせあの一夜の戦争は、国内に大きな損失をもたらした。建物の損壊だけならまだしも、多くの負傷者に今後の政の方針に国内に存在する結社全ての調査など、新選組にも多くの仕事が舞い込んでいる。

ましてやこの忙しい今、第三部隊の隊長である斎藤と、予備隊に所属する大鳥母禮が不在。かの高杉に付き合わされ、2日ほどの有給を申請してきた。


これに対し、当然土方は激怒した。この忙しい時期に有休を申請する身勝手さもそうだが、土方が怒っているのはこれだけではない。なにせ彼は今、新選組隊長代理から、隊長への昇進が決まり、それと同時に大鳥家復興のための後ろ盾もしていた。つまりは本来身を粉にするのは、大鳥家次期当主と推薦される母禮なのであって、土方ではない。


ここまで仕事を抱えてしまえば、当然彼は休む暇などないし、なんなら食事すらまともに取っていない。それでも冷静な判断を下さなければならないため、神経をすり減らしているのは自明だ。だからこそ不機嫌そうな声で「おい」と冷たく返した。



「一体俺になんの用だ? 用がないなら切るぞ」


「待て、馬鹿者。俺がお前に連絡をして用件などないわけがないだろ」



アマンテスは平然と返すが、この口調さえ今の土方にとっては怒りの導火線である。とにかく土方は気を落ち着けようと、煙草ケースから煙草を1本取り出しては咥え、ライターで火を付ける。


紫煙を思い切り吸い込み吐いた後、若干落ち着きを取り戻したところでこう返した。



「深刻な話なのは分かってる。軽い話なら普通情報課か政府を通すはずだ」


「なんだ、わかっているではないか。では早速用件をいおう。こちらも急いでいるんでな」


「急ぎの用だと? それなら今俺は対応できや…」


「わかっている。あの戦争の後始末だけでも大変だろうし、大鳥家復興のことも母禮から聞いた。だが、これは世界の平和が掛かっているんだよ」



『世界の平和』そんな言葉を聞いた瞬間、土方は意識を失いそうになった。正直自身の住む国の平和を守るので精一杯な身だ。しかもだ、なぜ日本を離れれればなんの権力もない自分に世界が絡む事情が舞い込んでくるというのか。



「そんなスケールの話ならお断りだ。そもそも俺になにをしろってんだ」


「『グレゴリオ』という魔術結社を聞いたことはあるか?」


「『グレゴリオ』…? んなモン、聞いたこともねぇ」


「…なるほど。あくまで奴らはまだ()()を隠れ蓑にしているわけか」


「あ?」



突如アマンテスの口から出てきた『グレゴリオ』という単語に、土方は顔を顰めた。しかし、そのことを問い詰めたところで時間の無駄である。ただ土方はここである事を確信した。


アマンテスは、この『グレゴリオ』という集団について自分になんらかの情報提供を望んでいるのだと。あくまでも己が警察である立場を利用して、情報ぐらいは引き出したい――その意図が見えた瞬間、土方は深くため息を吐いてこう返した。



「いっておくが、その『グレゴリオ』って集団の捜査依頼ならお断りだぞ」


「む」



土方の返事にアマンテスは口を尖らせてすね始める。電話越しでも伝わる事象に土方はやれやれと首を1人横に振った。



「話はそれだけか?」


「…いいだろうに。相棒の頼みだぞ?」


「同盟は2か月前のあのときまでだ。それに天下の魔術師様(テメェ)が分からないなら、俺にもわかるわけがない」


「どういうことだ?」


「だから、テメェは魔術師でフランスでデカい魔術結社の頭をやってる。そんなヤツが警察に捜査届を出すのなら、そいつらもまた魔術師絡みだってことが見え透いてんだよ」


「むむむ…」



土方の的確な指摘にさらにアマンテスは口を尖らせた。しかし土方はここでもう1つある事を悟る。



(多分、こいつぁなにかしらゲロらねぇと俺を解放することはねぇだろうな…)



土方曰く、アマンテスはあの高杉並みの唯我独尊を掲げて生きている。さらにはまだ低い精神年齢ゆえの駄々も足されたら、確かに土方がこのまま易々と解放されることはないだろう。


土方は何度目か紫煙を吐き出した後に、煙草を灰皿へと押しつぶした。このままでは面倒だ、そう悟った土方はこう切り出す。



「まぁ、ここはお互いイーブンに行こうぜ。俺がテメェの頼みを聞く代わり、テメェも俺の頼みを聞いてくれ」


「…仕方ない、それでいこう」



いよいよアマンテスが折れる。その直後に土方はアマンテスの言葉を待つことなく、こういった。



「とにかくテメェは『グレゴリオ』の捜索を頼みたいんだろ?」


「ああ、そうだ。俺達でも探すが、もしかしたら日本にもいるかもしれん」


「了解。なら俺からの頼みだが…」


「なんだ?」


「普通の人間は、回復魔術を打ち込まれたらどうなるのかを教えろ」


「は…?」



アマンテスは土方の質問に一瞬だけ戸惑った。しかしこれを答えれば、アマンテスは『グレゴリオ』の捜索を新選組へと依頼できる。


別段こんな些細な問いに対し、断るという選択肢などなかった。しかし、アマンテスは一瞬だけある違和感を感じた。だがそれも、また、無意味。ゆえに一拍置いて素直にこう答えた。



「普通の人間というのが、魔術に対して適応できない人間に限った場合で話そうか。魔術に適応できない人間に回復魔術を打っても、ただその傷が癒えるだけだ」


「なら、魔術に適応できる人間の場合は?」


「そういった人種の場合は、それを境に魔術の使用ができるようになりやすい。ただこれは相性の問題。誰もがそうなるわけではないし、適応するための回路が発現し、機能する確率的には0.1パーセントぐらいだ」


「そうかい」



アマンテスの言葉を聞き、土方はまた煙草ケースから煙草を取り出し、咥えて静かに火をつける。そして一服した後に、アマンテスにこう返した。



「とりあえず、『グレゴリオ』の事は調べておく。わかり次第追って連絡する。捜査報告書は必要か?」


「ああ、捜査報告書ももらいたい。ちなみにどれくらいかかりそうだ?」


「一応極秘の案件なわけだから、結構かかると思う。とはいっても3ヶ月もありゃ調べられるさ」


「さすが日本の警察は優秀だな。ならよろしく頼む」


「ああ」



そういうとすぐに土方は通話終了ボタンを押して電話を切る。そして火をつけたばかりの煙草を灰皿へ押しつぶして、そのまま後ろを向けてあるものへ視線を向ける。



「なるほどな…。最悪偶然ってわけじゃねぇってか」



土方の眼前に映る光景。それは潰れたテーブルや、粉々になったカップなどが転がった部屋の中。


ベッドは粉となり、ソファーは潰れてもはや元の原材料である革だけになったように見えるほどすり潰された。彼の部屋がこれほどまでの惨状になったのは、ある人物の手でこうされたから。


そのある人物こそ、土方本人である。


なぜこんなことになったのは、土方自身理解できていない。しかしこうなったのは2ヶ月ほど前——あの一夜の戦争で重傷を負い、アマンテスに回復魔術の術式を打ち込まれてからだった。


最初は少し力が入る程度だったが、最近になって何かに触れれば、それらは跡形もなく潰れたり粉へとなってしまう。そんな異常事態が発生し、土方も最初は困惑していた。だがその疑念は徐々に確信へと変わり、そして今断定された。



「…つまりは、俺はその稀な人間だったってことか」



もちろんこのことが公になれば、遊佐たちが黙っていないだろう。そのため今現在、土方の部屋は誰にも入れないし、入れば減給の上に罰則を追加すると念押しもしておいた。


そして誰にも邪魔されない空間を手に入れた彼は、積み上げられた本の山から1冊の本を取り出す。それはある魔術書だった。



「“汝が万物を操る力を手に入れたとき、それらは世界を天秤にかけることができる”…ねぇ」



あまりにも胡散臭い一文を目にして、次のページに挟んでいた1枚の紙に目を通す。これも魔術に関する書物の引用だ。そしてそこに並んだ文言から結び付けられる土方の所有した術式。それは、



「まさか、“豊穣神”だなんてよ。神様にでもなる気か、俺は」



そう、“豊穣神”


ただこの魔術界でいわれる“豊穣神”には二種類に分かれる。


1つめはそれこそ命の他にも人に恵みを与えるもの、そして2つめは万物を手にし、それらを粉砕するもの――この2種類である。


正に真逆としかいえないのだが、ある種これらは表裏一体といえよう。破壊の後に創造が成される道理のように、朝が来れば夜になるように。


そんな万物に干渉する能力——これが役に立つときはきっとこんなときだ。



「世界の拮抗を壊す悪党との全面戦争のときぐらいの足しにはなる、か…」



そう、世界の平和をおびやかす存在から人々を守るため――。確かに彼が警官であるがゆえの見解もあるが、彼の立場からすれば当然そう思う。なにしろ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


ならなぜそれを不明だと、あの場でアマンテスにいったのか。その答えもまた自明である。


彼、土方幹之はたった1人で『グレゴリオ』を潰すと目論んでいるからだ。


お久しぶりです、織坂一です。

中々、後日談の更新をできずに申し訳ございません。


今回の第2話は土方さん視点で書かせてもらいましたが、これらが次の第二部へと繋がっていきます。

なぜ彼が殺されたのか、直接的な内容は伏せましたが、まぁ大体察せる方は察せると思います。

また彼は“豊穣神”という反則的な能力を開花させたのにも関わらず、なぜああも殺されたのかも第二部で徐々に明かされます。


そして1話でまとめようと思ったのですが、全体で9000文字を越えてしまったので、前編後編で分けさせていただきました。


なので、後編はまた明日更新いたします。

何卒よろしくお願い致します!


織坂一

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