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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
5.Beyond the truth
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The daily life that I regained-1



「あ、れいちゃん。調子の方はどう?高杉さんの方もだけど」



高杉の部屋を後にした母禮は、最早隊員達の溜り場となってしまった花村の部屋へ遊佐達の様子を見に来ていた。


負傷した隊員は基本的に救護室に運ばれたが、無論場所が足りない。そのため、重傷者以外は、各隊員の落ち着ける場所へと避難する羽目となった。


そこで遊佐や比企、めずらしく斎藤の溜り場となったのは花村の部屋である。


花村自身も回復し、なんとか転がりこんできた人間を慰めに慰めた結果ともいえるだろうか。


遊佐自身もかなりの重症だったが、あの後花村とアマンテスの手によって助けられ、今はこうも元気でいられる。


ゆえに何もなかったかのように、明るい声で母禮へと声をかけた。それに対して母禮もまたなにもなかったかのように返す。



「おれはまぁまぁと言った所だ。高杉さんなら今さっき目を覚ましたよ」


「そっか。ならいいんだけど、所以さんの事はどうするつもり?」


「え?」



母禮の見立てとして、遊佐はきっと高杉の心配をすると思っていた。しかし、「目を覚ました」と聞いて遊佐が話を終わらせなかった事に目が点になる。


さらにいうなら、「所以さんの事」――つまり、斎藤をどうするかという問いかけに言葉を失う。


最早他の隊員に斎藤との関係が露呈する事は構わないが、母禮はまだこの問題に答えを見いだせていない。


なるべく考えないようにしていた事実をいきなり突きつけられ、思わず黙り込む母禮だが、遊佐は遠慮なく追撃してくる。



「え? じゃなくて! 話の大本は密さんから聞いた。全く、あの人最低だよね。いくられいちゃんみたいな強い子に免罪符だなんて言ってさ……ほんと呆れる」



情報源は花村だと知った瞬間、母禮は思い切り花村を睨むが、花村は睨まれる前から我関せずといった具合で目を逸らしていた。


しかしここにきて、遊佐が珍しく他人に寄り添うような言動と声音で淡々と述べて行く。



「でも、改心したみたいだし、どうする? 殺しちゃう? それともその腕に抱きとめてもらう?」


「嫌な言い方だな……いや、あながち間違いでもないんだが……」



遊佐の言葉に母禮は頭を悩ませる。残念ながら今の母禮の意識には同じ部屋に斎藤がいる事など忘れ去られている。


ただここで遊佐は母禮に選択肢を与えた。これはある種、母禮にとっては目からウロコだ。


今まで複雑に悩み続けたが、結局は遊佐の提示した二択で十分物足りる話なのだ。母禮自身あの光景を見た以上、自身の気持ちに嘘を吐く訳にもならなくて。少し俯き、頬を赤らめてはこう呟く。



「そうだな、抱きとめてもらおうか」


「ほんと!? おーい! 密さーん! 比企さーん! 賭けは僕と密さんの勝ちって事で!」


「は?」


「嘘!?待って!結局俺だけ負けな訳!?」



母禮の言葉を聞いた瞬間、突如この場が賑わう。つい数十秒前、遊佐が母禮を気に掛けたときは通夜のようだったのに、一気にポップコーンが焼けたように、この場が湧いた。


遊佐の和気あいあいとした勝利宣言に対し、母禮は絶句。そして賭けに負けたという比企は抗議の声を上げた。


そんな中、遊佐と同じく賭けに勝ったらしい花村が、勝ち誇った顔で比企へとこう言う。



「よっしゃぁ! ははーん、甘いんだよ比企。こういう色恋モンはこういう時に芽生えるモンがあるってのが定番でよ……」


「あんたら……」



母禮は無論、この状況に一応当人である斎藤も着いてはいけない。否、先程の事もあってか着いて行くのが無理だと即刻脳が判断し、仮眠をとろうかと斎藤はどこかうとうとしている。


しかし斎藤とは正反対に、母禮の中では激情が渦巻く。無論、怒りでだ。


今度は斎藤に代わって、自分がこの三馬鹿(かれら)を成敗すべきか――しかし、あの3人は既に盛り上がり、いつこの場が爆発するか分からないときだった。



「何だよ、賭けは俺様の負けか。稀代の勝負師と言われた俺様も随分と落ちぶれたモンだ」



突如聞こえた声に思わずこの場にいた全員は、声の聞こえた玄関先に視線を向ける。するとそこには、高杉が体を引きずって立っていた。


その様子を見て、母禮は高杉に近寄り、斎藤は即座に目を覚ました。



「高杉さん! あれだけ寝てろと!」


「いいや、もう十分だ。って事は勝負はこっからでもいいってか?」



心配で怒鳴る母禮の声を高杉は呆気なく流す。実際高杉自身寝てもいられないがために、この場にわざわざ身を引きずってきたのだ。


とにかく母禮を手で制止していたが、高杉の発した言葉に母禮は一時停止して首を傾げた。



「勝負?」


「まぁ、簡単な話だ」



そういった瞬間、高杉は母禮の手を引き、そのまま母禮の肩を抱いて自身の胸元に寄せる。


尚、母禮は高杉の突然の行動に脳が現実に追いついていない状況だ。母禮は置いてきぼりにされる反面、この部屋にいた全員は目を見開いた。



「こいつは俺様がもらう。例え今は斎藤に気が向いていても、必ず最後は俺様が落としてみせるさ」


「「「「は?」」」」



突然の高杉による斎藤への宣戦布告に、全員が声を揃えてこう言った。そしてこの宣言の後に起こった各々の反応を見ていこう。



「え、ちょっと待って。急に話がすっ飛んだんだけど」



と呆気ない様子で遊佐が。



「いやいやいやいや!! どうしてそうなる訳!?」


と慌てた比企が。



「お前、こいつの母親に惚れてたのをとうとう鞍替えしたか」



と容赦ない揚げ足取りを花村が。


ちなみにアマンテスは、もう見てられるかとこの観劇を放棄した。そしてもう1人の観客もとい関係者である斎藤は言葉を失い、最早動ける状態ではない。


そして数多のツッコミによって、ようやく母禮はこの状況に追いつく。ハッ、と目を見開いた後、そのまま高杉の服を握ってわなわなと震える。



「いい加減にしろ! おれは別に……!」



しかし高杉にははっきりいって容赦などない。そのまま愉快そうに口角を上げたまま、こう続ける。



「でも最後はなんだかんだで助けてくれたろ? それって脈アリとみなしていいんじゃねーの? それと、どこのどいつとファーストキスしたんだか」



この瞬間、この場にいた全員が凍りつく。無論、観劇を止めたアマンテスさえもだ。そしてたっぷり数十秒置いた後、この部屋には「えええええええええええ!!?」という驚愕の声が上がる。



「えええええええええええ!? 先に手出されたの!? れいちゃん!」


「何してんの、お年頃の女の子が! 相似みたくビンタかませばよかったのに!」


「これ斎藤に知られたら、戦争勃発すんじゃねぇの!?」



上から遊佐、比企、花村が絶叫する。そして瞬間、この部屋の温度が(物理的にも)下がった。



「……生憎だが、もう始まるがな」



この一連の流れに、傍観するしかなかった斎藤はいよいよ耐えきれなくなった。ゆえに、ただでさえ常に冷たく鋭い声音が、研いだばかりの刀のようにさらに鋭くなる。


要は、斎藤自身はこの場で高杉を刺しても構わないというわけだ。


いよいよあの3人も洒落が言っていられる状況でなく、斎藤のせいで若干下がった部屋の温度に身ぶるいする。そして斎藤は今一度この場で再び高杉と対峙する。



「高杉さん。幾ら惚れた女の残した子供とは言え、無差別に手は出さないで欲しい」



まずは斎藤が切りこむ。


斎藤自身詳細は不明だが、あれだけの事があれば嫌でも状況の雰囲気を学んでしまう。ゆえに一刀両断すべくとストレートに切り出す。しかし、この程度、高杉にとっては痛くも痒くもない。


至って冷静な高杉は、斎藤への当てつけか、さらに母禮を自身の胸元に押し込める。



「何言ってんだ? 俺様から見てみりゃ、お前は沈姫に飼われてる犬にしか見えねーよ。ガキにはまだ早いっての。んで沈姫はどーすんだ? 俺様と斎藤、どっちを選ぶ?」



そしてこの苛烈な戦いの終局は全て母禮にゆだねられる。しかし、母禮の答えといえば照れ隠し一択の両者の拒絶だ。



「し、知らない! 2人共大嫌いだッ!」



この言葉に、斎藤はまるで心臓に刃を突きたてられたような錯覚に陥る。一瞬にして終わったこの下らない争いに、あの3人もようやく錯覚で冷えた体を正常な温度に保つようになった。


ただこれはあくまで、高杉が最初から仕組んだ罠である。


別段高杉は、自身が斎藤より優位だとか、自分こそが母禮に相応しいだとかを周囲にアピールしたいわけではない。ただある事を母禮に強制するために、こう持ち込んだのだ。


既に基盤なら整った。ゆえに高杉は「はっ」と笑い飛ばしてはこう言った。



「中々言うじゃねぇか。だったらこの結果報告は――……」



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