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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
5.Beyond the truth
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tranquility-1

たった一夜だが、新撰組と『生命の樹』の間で起こった戦争は終息した。

これは、戦争を終えて朝を迎えた者たちの物語。


そしてまだ先にある未来へ歩む、彼女と彼の物語。




「次のニュースです。今朝方東京スカイツリーが倒壊したとの事ですが、その瓦礫の下には森の様なもので覆われていたと――……」



あまりにも荒れるどころが地獄ともいえよう夜は、徐々に明けていった。

かの戦争に決着がつき数時間が経った頃、画面の向こうでは至極穏やかにニュースが流れている。


否、穏やかなどではない。無論、現場にいるアナウンサーはどこか逸り気味に実況中だ。


あくまであの地獄をその場で体験した彼らにとっては、嵐が去った場など平穏に等しい…といった比喩なのだが。


アナウンサーが実況を終えた後、ピッとテレビの電源が切られる。そしてテレビの電源を切った花村は溜息の後に自分の周囲を見渡す。



「道理でお前ら全員生きてるって訳か」


「全ては俺のおかげだな。崇めろ、愚民共」



その言葉に対し、部屋の壁に寄りかかっていたアマンテスの左右からゴンッ、と拳が飛んでくる。右には不貞腐れた遊佐が。左には呆れ顔の斎藤が。そして2人はこう呟いた。



「あのさぁ、確かにお礼は言わなきゃなんないけど、愚民って何? なんなの? 死にたいの?」


「俺は背骨がボキッ、と逝くんじゃないのかと思ったぞ」



容赦ない拳の重さに、思わずアマンテスは意識を飛ばしかけた。否、一瞬飛んだ。


そしてこのスカイツリー下に広がった森なのだが、今さらだが解説しておこう。


この森は無論、先の態度からしてアマンテスが形成したものだ。


アマンテスも母禮が高杉の元へと向かったときは、スカイツリーの下で『生命の樹』に所属している魔術師100人近くを1人で相手にしている。


そのときの乱戦及び、嫌な予感を感じ取ったアマンテスは魔術師との戦闘を終えた後、母禮と高杉の元に向かう際、使役する妖精を下に何体か置いてきた。


そしてスカイツリー倒壊の際、妖精達はアマンテス()の命令通り、その場で出来る最適行動を取った。これがその結果である。


ただ今は無力にぐたりと重力に従って頭をおろすアマンテスを見て、比企は苦笑しながらこう続ける。



「しかし、驚きだね。まさか魔術1つでここまでの人数を治療できるなんて」



すると瞬間、沈んだはずのアマンテスの意識が再び浮上する。そして思い切り頭を上げた後、鼻を鳴らしながらこう答える。


尚、遊佐はその様子を見て顔を歪め、斎藤は諦めたかのように溜息を吐いた。



「まぁ、大半の者は熱に変換する事によって、身体へ負担がいかぬようにしただけだ。大人しくしていれば1、2週間程度でよくなるだろう」



昨夜の戦いでの負傷者はかなりのもので、残念ながら死者も出た。だが高杉や土方が事前に予測していた被害を考えれば、少ないといえるだろう。


しかしそれでも尚、何もないという訳ではない。


まずは遊佐が、この場に新撰組の指令がいない事に、どこか落ち込んだ様子で気持ちを口にした。



「そういえば土方さんは病院行きみたいだよね?」


「……全身蜂の巣状態だったからな。回復魔術をギリギリ打ち込んでみたが、やはり重症なのに変わりはないらしい」



遊佐の問いに対して、アマンテスが彼の状態を今現状で分かる範囲を懇切丁寧に解説する。


彼の状態は酷く、言葉に表すならば正に蜂の巣としか言いようがない。しかし遊佐や花村達はこの回答にホッと胸を撫で下ろした。


あの土方が「死んだ」という事実すら回避できれば、彼らはそれだけで安心できる。


長い付き合いである彼らにとって、土方幹行という男がどれだけしぶといのかはよく分かっている。いや、寧ろこれを聞いて、彼の不死伝説更新に不謹慎だが気味悪がってもいた。


そして続いて、比企がある人物の名前を出す。



「……で、あの樹戸って人は?」


「自ら警察に出頭したそうだよ。今は怪我を負ってるから治療の後に処分が決まるって」



この樹戸の行動については、遊佐が答えた。その遊佐の言葉に、花村はどこか安堵したかのようにこう呟く。



「……あいつらしいな。この後がどうであれ、あいつならマトモに生きてくだろうよ。そういやアマンテスも残念だったな、右腕」


「……ああ」



花村の言葉に、アマンテスは自身の右腕に視線を落とし、重い声音で肯定した。


あのときショック症状を起こして気絶してしまったゆえに、曖昧に傷口が塞がりかけてしまったのだ。


これも見た目では予測できない彼の身体の強靭さだが、そもそも、アマンテスは影踏との戦闘でかなりの怪我を負った。そのため、この後の乱戦に備えて、傷口の自動修復の術式を既に身体に打ち込んであったのだ。


それが仇となり、幾ら魔術で繋げようとしても繋がらなくなってしまったのだ。しかしアマンテスは残念な素振りさえ見せずに一言。



「構わん、あの伝説の槍に対し腕1本とは安い買い物だ。そう言えば、母禮はどうした?」



そしてアマンテスが今度口に出したのは、旧友である母禮の名だ。


アマンテスは意識を失ったため、あの戦いの結末は分からない。だが、それに対して花村が簡潔に母禮の現在を口にした。



「前まで高杉のいた部屋であいつの面倒を見てるよ。やっぱり気になるんじゃねぇの?」


「……」


「何、不機嫌な顔してるの? 所以さん」



母禮の現在を聞いて、唯一不機嫌なのは斎藤だけだった。


その不機嫌な顔を見て、アマンテスを挟んで隣にいる遊佐がその頬を指で突く。するとすぐに鬱陶しいと遊佐を振り払う斎藤。そしてこう短く返す。



「別にそんな事はない」


「ふーぅん……でも、高杉さんてばれいちゃんを超カッコいい助け方をしたんでしょ?」



明らかに斎藤が不機嫌なのは誰でも分かる。しかしそんな中で遊佐は好奇心のみで、数時間前の斎藤と遊佐の様子を予測する。


本来なら誰も見届けてはいないはずなのだが、ここで悪ノリしたアマンテスがこう煽る。



「ちなみにこいつは高杉との戦い中に、とてつもない台詞を吐いていたぞ?」


「おいマジかよ!?どんな台詞――」



それに乗ったのは花村だ。しかし、斎藤の不機嫌さをネタに盛り上がりかけたこの場で、斎藤はいよいよ己の怒りの限界を悟る。



「アンタら……」



チャキ、と不気味な金属音が鳴る。


斎藤は壁に建てかけてあった日本刀を手に取り、指で鍔を上げながら、今にも鞘から刀を抜かんといった様子でこの場でこうけん制した。



「アンタら全員そこに直れ。その腐った性根全て叩き斬ってやる」



普段ならふざける遊佐と花村がいるのだが、よくよく考えて欲しい。


あれだけの激戦を繰り広げて心身疲弊している(かどうか怪しい)のに、ここで殺気立った斎藤が刀を持てばどうなるだろうか?


常日頃から洒落など言わず、冗談すら通じない斎藤の気性を今ここで全員が後悔した。




ここからは5章で、戦争が終わった後の話になります。

本当は4章後半にするはずでしたが、途中で変更して申し訳ありません。


元々、修正前はここから4章開始だったのですが、3章が新撰組対『生命の樹』で、4章は真実に至る箇所です。

一応4章でも闘いは終結してませんが、あの部分は母禮が高杉兄を助けるための話かつ、斎藤と高杉兄の意地なので、3章での闘いの理由が違ってきます。なので区切ったわけですね。


ここから先は、前書きにもある通り、戦争が終わった後の話になります。

真実こそ明かされましたが、この先は母禮や高杉兄、他数人がどうなるかという話です。


しょっぱなからギャグで開始されましたが、次の第二部に向けての締めくくりとなりますので、何卒よろしくお願い致します。



織坂一


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