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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
4. The future that everyone dreamed of…
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自身の覚悟を振り絞った瞬間、斎藤は追撃に入る。


先程はガン・ホーの柄を狙い、あのとき高杉の手から落とせなかったとはいえ、尋常じゃない衝撃を与えたのは確かだ。


それを考えれば、今一度追撃したなら今度こそ高杉の手からガン・ホーを落とせるだろう。だが、左程の攻撃で、一瞬だが高杉は体勢を崩した。


なら、武器を落とすという生温い方法で済ます必要はない。



(まずは、動きを封じる)



ゆえに追撃の第2閃目は、横腹への突き技が入る。



「ちィッ!」



ガン・ホーとは違い、ただの日本刀での一閃ゆえに、左程致命傷には至らなかった。だが斎藤の思惑通り、下手に動けば傷口が開いて、動く事も儘ならなくなる。


とうとう高杉は、下手に逃げられない状況となった。当然ここで選ぶのは距離を取る事。


しかし致命的なのは、ただ後ろに下がったという選択。これではいくら後ろに下がっても座標をずらさないと斎藤の剣の結界からは出られない。


斎藤にとってはまたとない好機。次で仕留めると前に出た瞬間だった。



「我に最期の幕引きを!」



そう高杉が叫んだ瞬間、物凄い勢いで東京スカイツリーは揺れ、まるで砂糖菓子のように一気に崩れ落ちる。


動けない上に足場を無くした今、斎藤に追撃は不可能。そしてこれはただこの場を崩壊させる事だけが目的ではない。



「京都から汲み出した霊脈全ての効力を使っての攻撃だ! 今からここは完全に消え失せ、俺様のみが生き残る! この傾国の女を象徴になァッ!」



先日京都の霊脈から組んだ霊力や魔力は、なんと全て先程からスカイツリー上空に浮かぶ魔方陣に溜めていたのだ。


そしてそれらを使い、スカイツリーを破壊し、さらにはここからは魔方陣からの破壊行動が待ち構えているという。


足場を崩し、後は全員地に堕ちるだけだが、そこで唯一生き残れる高杉は怒鳴る。



「譲れるかよ……ッ、絶対に、俺様にはッ、譲れないモノがあるッ! ここで退けるかッ!」



高杉の怒声を合図に、赤く天に浮かぶ魔方陣は更に赤く光る。そして足場を失って落下する全員に向けて、数多の光の杭が降り注ぐ。



「斎藤さんッ!」



母禮はこのとき、足場が崩れたおかげで少し距離が近くなった斎藤へ手を伸ばしていた。しかし、後1歩の所で届かないまま、斎藤との距離は離れていく。



「斎藤さん――ッ!」



届かない――そう判断した母禮は、ポケットから磁石板を取り出す。


これはあくまで樹戸から、移動手段として渡されたものだ。しかし元々この磁石板は先程樹戸が繰り出した紫電の攻撃や粒子型高速光線砲の照準を合わすために使うものなのは母禮も薄々感づいている。


つまり、運が良ければ粒子型高速光線砲を撃ち出す事が出来るかもしれない。


さらには、だ。眼前にある赤い魔方陣には一か所だけおかしい箇所があるのに母禮は気づいた。それは魔方陣の中点から半径1メートルの範囲だ。


魔方陣から放たれる杭は、ほぼ雨が降る様に隙間がないが、あの箇所からは杭は一切出ていない。つまりあの範囲には、魔方陣の核があるかもしれないという突拍子もない予想。


だがこれまでの戦いで散々学んだが、如何なる術式にも核はある。なら、予測ではあれど、これに賭けるしかない――そういって、母禮は決死に身を捻り仰向けの姿勢をとった。そして、磁石板を飛ばす照準を合わせる。


狙いは魔方陣の核を粒子型高速光線砲で破壊する事で、この攻撃を止める事。


しかし、母禮は気づけなかった。自身の胸元に杭が迫ってくるのを。


母禮がこれに気づいたのは、磁石板を指から離した瞬間の事、すると母禮の耳元で声が聞こえた。



「やっぱ親子なだけあって似てるな」



柔らかく、温かみのある声音。


数時間前に初めて聞いたばかりだが、先程まで母禮を奮い立たせてくれた声。そして母禮がもう1つ気づけなかったのは、スカイツリーから落ちた順番。



「あ……」



真っ先に斎藤が落ち、次に自分が落ちた。そして最後に足場を無くしたのは紛れもない()


時間差があったとはいえ、今になって母禮に覆いかぶさるように彼が母禮の目の前にいた。


彼――高杉灯影が、母禮を庇うために落下する身体の方向転換を無理にしたと気づくのは、磁石板を指から離し、紫電が空に描かれた瞬間。



『俺様は惹かれたのよ。あの人の直向きさに、その葛藤に立ち向かう勇気に。けど、結婚をしてるのを知ってて思いを告げたら、あの人は苦笑しながらこう言った……この後の日本と私の娘を頼む、って』



今度は、脳裏で声を思い返した。



この言葉は、彼の理由だ。


あのとき、彼の真っ白な自室で、懐かしむように、けれども傷の痛みに耐えるような声で聞いた決意の理由だ。


そして、それを思い出した瞬間、空から紫電が走り、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「――あ」



ついに、高杉灯影(この人)を殺そうとしてしまった。



『だが、次会うときは無論敵同士。俺様のやり方が気に食わないなら、剣を向けるも良し。逆に賛同するなら新撰組を脱退しても構わねー。』



また脳内で再生される彼の言葉。今度は自分に掛けた精一杯の恩情の言葉。


いや、そもそも大鳥沈姫は高杉灯影(かれ)を殺すつもりはない。()()()()()()にここまできたのだ。


そしてその支柱は、全てここで崩れ去る。


とうとう刃を向けてしまった。


あの温かい声に、年ににつかわぬ少年の様な笑顔に。



「―――――――い」



嫌だよ、ごめんなさい、その母禮の言葉は紫電が降り注ぐ音にかき消された。


何より、先程から空が哭いていたのは、高杉灯影という男が、苦しみ、泣いたその声そのものだった。




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