Scale-3
バキッ、と壮絶な音を立てては、2人共相応のダメージを負う。
花村が殴りかかった時、樹戸も咄嗟に防御の為に膜を張ったが為に花村の左手は粉々となるが、樹戸もあまりの威力にノーバウンドで吹き飛ばされた。
「――ちィッ!」
「……ッ、まさかここまでやられるだなんてね。いいだろう、全て終わりにしようか」
吹き飛ばされた事を何とも思わない樹戸だが、身体を起こしたその時から、彼自身この泥試合に決着を着けると宣言する。
(いよいよ、来るか)
そして花村の中で、勘が告げる。次こそ生命装置を使うと。
正直このまま戦っていても埒が明かないのは事実だ。ならばここは互いに必殺を以て勝負を決めるしか道はないのだが、それを前にして、樹戸は一瞬頭を抱える。
「ぐ……ッ」
樹戸自身、突然激しい頭痛に襲われ、思わず身体がよろめく。この時樹戸はもう1つ意を決した事があるが、花村には一体何が起こっているのかが理解出来ない。
「何だ……?」
「……ッ、キャパシティがもう持たない……か……」
「キャパシティだと?」
刹那、樹戸が呟いた言葉に花村は声を曇らせる。一方樹戸も今にも脳味噌がショートしそうな程の激痛に苛まれながら、息を切らすも、何故か言葉を接いだ。
「君は確か最初に影踏君とは戦えないと言ったね? 確かに彼は魔術師だ。君のその身体を以てしても勝つ事はまず不可能。それに、彼は超能力者としての能力も秘めているが適性はそう高くない」
花村が影踏に勝てない理由。それはもう自明だ。だが樹戸の言葉に嘘はなく、事実影踏自身、超能力を使えるが、実際は使えるが汎用性は高くないという程度なのだ。
故に腕時計もそうだが、だからといってそれだけで演算能力を補える程、超能力の使用は甘くはないと樹戸は語る。
「その為に外部からスプリクトを取っているとしたら、誰からその情報と演算能力の補助を受けるんだろうね……?」
「まさか……」
思わず花村は、息を呑んだ。もし樹戸の言葉が事実であれば、目の前に立つこの樹戸榊という男は正真正銘の化物となる。すると樹戸は、どこか自嘲気味に笑っては口を開く。
「言っただろう?私は昔とある実験の被検体だったと言う事を。その時にとっくに脳は弄られているし、だからこそ複雑な演算も自前で出来るんだ」
花村自身も生身は捨てたが、脳自体を弄った事などはない。ある意味樹戸が被検体となった実験は凄惨なもので、正にそれこそ超人錬成を科学に無知な素人が行う地獄のあり様だった。
「故に私は、彼の足りない演算能力を私の思考を植え付けて補わせるという最終目標さえ適えてみせた……無茶苦茶だろう?だがそうでもしなければこの世の中は壊せない」
隠されていた樹戸榊という男の真実。花村自身も狂人とも言えるかもしれないが、その花村の目の前に立つ男は更にもう1歩その先へと踏み出していたのだ。
被検体となったのは己の意思。だが、超人となってからある事をきっかけに彼は高杉灯影と知り合った。
そこから今までは散々なものだったが、今に至るまで彼自身譲れないものも抱える様になったのも事実。
そしてそこには、自身が負った癒えない傷と、生まれてしまった因果さえもあったから、樹戸榊は狂人となった。
相変わらず激しい頭痛に樹戸は苛まれながらも、彼は気力1つだけで花村を見据える。
「恐らく彼の脳はもう限界だろう。だが、そうだとしても成すべき意味がある。君が灯影の意思を守り抜く為に戦うならば、私も同じようなものだ」
樹戸は高杉とは決して相入れはしないが、それでも通じるものはある。だからこそ、樹戸は高杉を嫌いながらも、自身の全てを『この世の希望』である彼に差し出した。
自身の頭脳、知識、そして何より高杉が入る前にあった『生命の樹』という組織さえも。全ては彼ならばこの世を救えるとだけ盲信して。
「奴こそがこの世の命運を決めるのならば、喜んで組織の頭の座など差し出そう……全てはこの腐った世の中への復讐だ」
「だったら、互いに出し惜しみはナシにしようぜ。俺も俺で奥の手を見せてやるからよ」
そう言って花村は、左腕からコネクトを伸ばし、それを周囲に張り巡らせた。花村を中心とする一帯は電流とそれによるショートによって、所々煙が上がる。
「最後の仕事だ」
一方樹戸もそれを見て、脳内での演算を始めると同時に白衣のポケットに仕込んだスマートフォンを起動させる。
そして瞬時だった。科学と科学とのぶつかり合いはこの辺り全てを破壊尽くしたのは。
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