Scale
地も揺るがす轟音と共に、極大の紫電が花村の身に降りかかった瞬間、花村は体内のギアを上昇させる。
全身のバネを何とか動かし直撃は避けたが、後1歩届かずに右肩が吹き飛び、激痛に苛まれる。
「づァアアあああああああああああああああああああああああああ!!」
「さて、君も流石に限界かな?」
無論、これは樹戸が先程言った通り、彼の演算能力全てを駆使して出された攻撃である。普通の人間であれば勿論耐えられないし、幾ら耐久性の高い花村でも限界がある。
しかし身体の一部が雷撃で飛んでも尚、朦朧とした意識を気力だけで奮い立たせ、まともに回らない舌でこう呟いた。
「お前、い、ま……何を……ッ!」
「天候とこの空間を結合させた。簡単に言えば粒子型高速光線砲の応用で、電極をベースにして磁力を滞空に存在する素粒子と掛け合わせただけの事」
一言で言えば単純だが、紫電1つ落とす為の条件や電圧、磁力の分量と消耗を全て計算しなければ、ここまでの大技は完成はしない。
正に必殺。だがそれを浴びても尚、まだ花村はこの闘いから退こうなどしなかった。
「野郎……ッ」
ガシャコンッ、と無機質な音が響き、花村は左腕に義手を展開させては樹戸へと標準を合わせ、高速で矢を放つ。
しかしそれも軽い音と同時に念動力の応用で生成されたフィールドに当たれば、ただの煙となって消え失せる。
「成程、空気砲か。よく考えたものだね。ただ先程の攻撃は躱され右腕1本しか持っていけなかったのは残念だ。いい加減、君にも諦めて欲しいのだが」
「……っ、ざっ…け……んナァッ!」
怒声と共に猛る花村。だが、樹戸はそんな彼を馬鹿にする真似だけはしなかった。
それはもう演算能力をするだけの余裕が無いからか? 否、そうではない。
今こうして見苦しくとも、無力感と絶望に襲われて、何もかもを失いながらも立ち上がるその様は、あまりにも彼に似ていたから。
そして高杉灯影とよく似た花村は、自分の気力を奮い立たせる為に喉奥からこう叫んだ。
「こんな所で、絶対ぇ俺は負けを認めねぇ……ッ!俺はこんな所で足踏みしてるような男じゃねぇんだよッ!」
そう、こんな所で、これだけで敗北など認めない。
まだ腕ならある。身体は動く。否、例えこの身が動かなくなったとしても、精神だけは決して屈してはならない。
高杉もそうで、自分もそう。しかし樹戸はそれを見抜いているからこそ、素直に慈悲を与えるかの様にこう餞別の忠告を寄こす。
「止めておきたまえ、いくら身体の一部を改造してあるからといって先程の落雷の出力の設定は1億ボルト。死なないのは立派だが、暫くまともに動けやしないだろうに」
「へっ、言ってくれるぜ……」
しかし花村からすればその忠告さえも、知った事かと笑い飛ばす。そしてようやく力の入り始めた足で、しっかりとその巨体を支えてはこう樹戸へと投げかける。
「お前は高杉灯影と長い付き合いみたいだな……だがよ、俺らはアイツが新撰組を立ち上げる前からの仲なモンでさ、言っちまえば親友なんだよ」
そう、花村は新撰組発足からの初期メンバーで、唯一新撰組設立前から高杉と交流があった。
若気の至りで今にも軽犯罪さえ犯しそうな中、高杉がそれを見かねて渋々と新撰組設立の際に花村を引き取った経緯がある。
花村からすれば対等な立場、つまりは親友としていたい仲だが、厳密に言えば高杉は花村の兄貴分の様なものだ。そんな兄貴分との日々を、花村は今思い返す。
「あの頃は毎日楽しくて仕方なかった……だが、アイツがなんで新撰組を抜けたかお前さんは知ってるか?」
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