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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
Overnight war
67/102

equivocalness-3




 花村の相手はあの樹戸(ちょうのうりょくしゃ)。そして樹戸もただでは済まない――アマンテスはこれに賭けた。


 それだけではなく、影踏の持つあの曖昧なバランスの種もまたなんとなくだが予想はついた。 


 これでアマンテスの予想が外れれば、賭けは負け。後は跡片もなく微塵にされるだけ。乾いた喉で咳を1つすると、アマンテスはこう切り出す。まずは影踏の持つ曖昧さについてだ。



「貴様は先程、曖昧さが丁度いいと言ったな? だとしたらそれは具体的にどういったものなんだ?」


「何が言いたい?」



 大人しく死地に向かわない事が気に入らないのか、影踏に呼応したかの様にアマンテスの身体は更にきつく縛られる。それこそ後もう少し力を入れれば、全身が粉々になる程に。


 だがそんな窮地に陥っても、アマンテスは不敵に笑ってこう続ける。



「先程気になっていたんだが、貴様は粒子型高速光線砲と衝撃波を使っていたな?そうだとしたらお前は外部からのスプリクトが必須になる。それこそスーパーコンピューター並の」


「……だから何だ?」


「簡単な話だ、貴様の兄は本物の傾国の女を所有している。だが、あれはただの象徴であるが故にその力は異端そのものだ」



 高杉自身も母禮に話したが、傾国の女という魔剣には、国の地脈を動かすだけの作動効果と計算能力を有している。



「そして掴んだ霊脈などの制御も可能だ。だが、それを少し簡易的にすれば、恐らくスーパーコンピューターの役目も可能だろう」



 事実、アマンテスの指摘に間違いはない。確かに地脈と人間の脳は大分違うのだが、傾国の女が所有する制御能力を、己に接続すればそういった荒技も可能だ。


 だがそれをしてしまえば、本物の傾国の女の演算能力は地脈の制御ではなく、影踏個人に向いてしまう。そうなってしまえば、全ての計画が破算されるのも自明だろう。



「だから貴様が傾国の女の計算能力を借りているのだとしたら、今頃京都では広範囲の霊脈の霊気が抑えきれずに漏れ出し始める。それが確認されれば、勿論魔術師である貴様らは今ここにはいない」


「……」



 影踏もまたアマンテスの指摘に間違いがないと言いたいのか、沈黙だけを返した。だがここにきていよいよ影踏から、先程の余裕の色が徐々にその表情から消えかけている。



「そして、だ。傾国の女が霊脈の制御として作動している以上、本来持つ計算能力はゼロになる。繰り返しになるがな、そしたら演算など出来やしないし根本的に話が異なる」


「いい加減にしつこい奴だ。だったら結局演算能力は、どこで補っているのかという話だろう?」


「そういう事だ。……時にその腕時計、普通の腕時計と設計が違っているように見えるが?」


「――ッ」


「やはりそいつか」



 ここでようやく、アマンテスの疑問それら全てが合致した。


 全ては彼がしつこく傾国の女の出来る効能全てを解説し、逆に影踏の気を逆撫でて、更にはスプリクト先がどこであるかを誘導したのだ。


 そこでアマンテスが目につけたのが、影踏が左手首につけた腕時計。見た目こそただの腕時計だが、円盤の厚さが通常の腕時計の3倍近くあるのだ。


 それだけでなく、更にはUSBの様に時計盤の横には何かぶ厚いチップの様なものが差されている。先程からアマンテスにはこれが気になって仕方が無かった。


 ほぼ勘でしかないが、あれこそ彼の脳内での演算が出来ないだけの部分を補うもの。そう確信が得られた以上、やる事はただあの腕時計の破壊しかない。


 そうすれば影踏は自分の脳味噌だけで、演算をするしかなくなる。そんな事態に陥ったら、恐らく彼の足を断ったも同然。



「黙れ」



 しかしその弱点が暴かれた以上、影踏も余裕を見せたままではいられない。まだアマンテスが動けない内に彼を仕留めなければ、自身の攻撃の手数は減るのだから。


 粒子型高速光線砲を撃つつもりか、照準を合わせているが、先の理屈からして撃つのではなく、そのまま粒子を直接投げてくるのだろう。


 そして、その瞬間だった。



「が?」



 突拍子もなく、影踏の口から漏れだす擬音。そして彼の思考は、この時停止した。



「が、ガガガ……wprw/return がァアアあああああああああああああああああああああ!!」


「な、何だ……?」



 彼の口から出てくるのは、まるで壊れたコンピューターが内部から破壊を訴えるアラートであって、もはや人語のそれではない。


 この時、アマンテスは突如訪れたこの事態に、まさかとある疑念を抱く。


 突然の発狂と崩壊。そう、曖昧さを肯定し訴えた少年はこれが仇となり、今若くしてその命を終える事となるのだ。




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