Two people who were full of science-3
(伊達にコイツも研究者だけでなく、戦闘要員ってな訳かよ)
現にあの高杉灯影の頭脳だけでなく右腕なら、これぐらいこなせて当然というもの。そもそも3人の構成員の内、異色を放つのは彼だけだ。
そんな粉塵が、周囲を覆い隠す中で蹴りや拳打は止んだのは樹戸が手の内を明かした一瞬だけ。すぐと間を置かずに再び拳が放たれ、それは今も尚止まない。
繰り出す攻撃からして武術の心得があるのも確かで、それは新撰組の隊員に引けを劣らない。無論、直撃すれば腕の1本は折れる程の破壊力には設定してあるだろう。
何故花村が先程から攻撃に転じないのかと言われれば、少し違う。攻撃に転じるだけの隙がないのだ。
ましてやこの粉塵の所為で、視界さえ危うい。だから避け続ける事しか歯痒い現状。
瞬間、粉塵の中から暗闇が見え避けるよりも速く、それは花村の身体を射抜く。
「ここで粒子型高速光線砲かよ、マジでお前人間を辞めてんな」
しかしそれでも尚、花村は笑う。この絶対的不利な状況に関わらずも――だ。そして粉塵が周囲を隠すだけの作用を失った瞬間、樹戸は花村の今の姿に目を見開いた。
「君……その身体は……サイボーグか」
捲れた皮の下にある幾つもの線と接合金属。火傷を負った皮膚からはゴムが溶けたような匂いが鼻を燻る。
「まさかオリジナルとはそういう事だったか」
そう、花村が科学や超能力の知識に長けているのも、全て彼が自らの手でサイボーグへとその身を変えた事に起因している。
だからこそのオリジナルで、誰も花村密になる事は出来ず、彼以外、彼の身体の事など知らない。故に彼は不敵に笑う。
「まぁな。騙すつもりはなかったんだが、俺じゃ高杉の弟の相手はできねぇ。だったら、科学を極めた者同士仲良くしようじゃねぇか」
超能力者も魔術師も紙一重な以上、花村でも影踏の相手は出来るのではないかと錯覚するが、それは違う。
あくまで花村の身体はサイボーグで、科学や超能力についての知識はあるが、花村に超能力者の適性はない。
だから結局どこまでいっても人間離れした膂力と、耐久性しかないのだ。対人能力は高いが、対超人には部が悪い。
ここまで樹戸に食いさがれるのも彼の耐久性と、知識で生き伸びた様なものだ。だから影踏の相手などしてしまえば、彼は勝てない。
それに関しては、もう樹戸も既に読み切っていた。確かに花村のスペックも気になるが、このままだと花村に対応策はない。
しかしそんな簡単に終わる結末でない事さえも樹戸は読み切っている。だからこそ冷淡にこう返した。
「それもまたいい事だ、研究者同士が親交を持つという事はこの世の発展に繋がる……だが、遊んでいる暇はないんだ」
「何?」
このまま戦っていれば、花村は次の対抗策を出してくるし、何より根城が空けた穴を樹戸は補わなければならない。
それも夜が明ける前まで。この東京に住む全人口の息を絶えさせる事、それこそが樹戸に課せられた命令なのだから。
「この生命装置はそう易々と出す訳にはいかなくてね。直々に拝みに来て貰ったのに申し訳ないが、私の全力の演算能力を以て終わりにさせてもらう」
そう言うと、白衣のポケットからカメラ等に内蔵されている様な薄型のコインを取り出す。そしてそれを3つ程、同時に指で宙に弾いて一言だけ呟く。
「/Delete.」
弾かれたコインが、3メートルに浮遊した瞬間、電撃がショートしたかの様に、紫電が花村へと降り注いだ。
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