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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
Overnight war
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Two people who were full of science




 混乱と同時に、全てを賭けた戦いが始まった中で、東京スカイツリーのとある一室で高杉灯影は暢気にこう呟く。



「あーあーあー……畜生、あの塵芥(ゴミ)が。勝手に向こうにちょっかい出してんじゃねーよ。まぁ、こちらも完全とは言わないが、戦争の準備ならとうに出来てたしそう変わらねーか。ただ……」



 「塵芥」やら「畜生」と声に出してはいるが、別段高杉は怒っている訳ではない。


 影踏が言っていたように、彼は根城の独断行動の報せを受けてもただ笑っていた。そしてその後に樹戸を呼び出し、影踏にも出撃する様に命令を下したのだ。


 戦争の準備なら確かにとうに出来ているし、あくまで予定が数日後なのも、その日こそ戦争の宣戦布告をするにはお誂え向きだからだ。


 彼にとっては仲間や部下、国の事など二の次。最も彼が今重要視する事はただ1つ。


 部屋の壁に建て掛けてあった鈍色の十字架を持っては、自身の自室へと向かう。正に至高とも言えよう決戦場へ。



「大鳥沈姫だけには手を出すなよ? 俺様の唯一守るべき存在にだけは」



 そう、彼女だけは守ると高杉は宣言する。


 苦楽を共にした仲間、歳の離れた弟、長きに渡り因縁のある男、英雄として守らなければならない国民よりも、大事にすべき相手は今や母禮だけ。


 そんな16年も前から決まり切っていた事を誰も聞く事はなく、たださらに訪れる混沌の足音が静かに響き渡った。






 樹戸榊は考える。 


 今、自身と対峙している花村は自らを『オリジナル』と称した。この言葉を聞いて以降、彼の中でひっかかるのはこれだった。


 そんな戯言など普通は気に掛けないが、警戒心が強すぎる樹戸にとってはあまりにも気になって仕方ない。


 それだけでなく、先程避けはしたが食らいかけたあの雷撃。あれに関しても気になる面はある。果たしてこれらの裏は何だと考えていれば、「なぁ」と花村が声を投げかけてきた。



「結局、生命装置って何なんだ? 俺はそいつを拝みにここまで来たんだ、早く見せてくれよ」


「……という事は、君はそこで倒れている自身の仲間さえ見捨てると結論づけて構わないのかな?」



 そして先程から戦闘が行われるというのに、異様なまでに暢気な声音もまた樹戸には酷く不快で気になって仕方がない。


 花村の攻撃手段も確かだが、何せ花村は先程「南條のヤツも、デマ掴んでんじゃねぇよ」と言った。


 これらが意味するのは、樹戸が非戦闘員でない事を知った他ならない。それらを見切り、遊佐への一撃も生命装置によるものだと見切った以上、彼の慧眼は相当なもの。


 何より仲間が一大事だというのに、この暢気な様子は変わらない。だがそれは決して見殺しではなく「生きろ」という呼びかけをどこか含んでいた。



「さぁな。でも噂が本当だとすれば、そいつぁ人を生き還らす事も可能なんだろ? どちらにしろ、コイツは死なねぇよ」


 

 はぐらかしはしたが、本音の所では遊佐を信じる姿勢を見せる花村。だが樹戸は、ハッタリかと胸中で呟く。それにまだ彼にとって懸念すべき不安材料は山程あるのだ。


 何故、新選組の隊長各であろう人間が部下を連れずにのこのこと自身の前に現れたのか。ちなみにこれに大した意味はない。


 花村としては基本1対1の喧嘩を好むし、幾ら戦争だと周りが囃したてようが卑怯な真似はしたくない。だからこそ1人で、ましてや剣や銃など使わず、その身1つでこの超人と闘うと決めている。


 最早無駄、と再び樹戸は胸中で呟く。確かに不安要素は拭えないが、もう構わない。


 予定より早まってしまったが、ここで引いたらこちらも次こそないだろう。何せ、科学、魔術、武力の内、戦闘実戦経験者100人分の価値がある根城は既にこの手で葬っている。


 その1つが消えた以上、科学部門でトップとして指揮している自分も戦前にでなければならないのだが。


 だがそれでやられる程、樹戸も完全な戦闘知らずのインテリという訳ではない。人の命を扱う以上、人体の構造を調べる為に幾つもの死体を積み上げてきたし、荒事に対しても対処は出来る。


 故にある意味知恵と戦闘能力がある分、根城より厄介な相手な事には変わりはないのだ。そんな自分を目にして怯えないという事に関しては褒めてやりたいが、そういう訳にもいかない。



(ここで相手の口車に乗せられるのも癪。なんならいっそ生命装置を使う事なく、排除させる事としようか)



 そう決め、懐から取り出した小瓶を宙へ放り投げると、中に入っていた粉末が宙を舞う。



「ッ!?」



 宙を舞う粉末は銀色で、細かいが微粒子ではない。寧ろザラザラとした雑な素面が目立つ何か。


 目潰しかそれとも毒か――そう考えた瞬間、落ち着いた様子で樹戸はこう返す。



「わざわざ生命装置を使う必要もない」



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