line of sight-2
「……で?高杉以外の構成員は誰だ?」
「えっと……ってちょっと待った。あの高杉灯影の事と大鳥母禮の事は関係しているんだ」
「何だと?」
高杉灯影と母禮に何かしらの繋がりがある。これは思いにもよらないアクシデントだ。
確かに母禮の義兄であった敬禮も『生命の樹』に所属していたが、彼は向こうから呆気なく見捨てられた。
繋がりはその敬禮の妹である事だけ。なら彼はまた更なる厄介事でも残して死んだのかと、土方が舌打ちを打った瞬間だった。
「高杉灯影は傾国の女という魔術でも使われる特殊な魔剣を持っている。けれども、その傾国の女は贋作も含め、2刀存在する。繋がりはこれ」
「は?」
南條が今説明したのは、土方の斜め上を行く事実。果たしてその傾国の女が2刀存在するだけで、一体何になるのか。ここで完全に事態を読み切ったのは魔術師であるアマンテスのみ。
それも南條は知っているから、丁寧に入手した情報を元に説明を続ける。
「高杉サンが持つ物は本物で、大鳥チャンが持つ物は贋作だ。これも、京都での事件と関連性が高いと見ていい」
いよいよこの場にいる比企と斎藤、土方は事態が理解出来なくなった。だが土方は今まで入手した情報や今朝の会議の事を聞いてある事を思い出す。
彼らは魔術を用いて何かをする。ならそれの鍵を握るのは恐らくその傾国の女という魔剣。
しかし全く理解出来ていない斎藤と比企に対し、アマンテスがこう補足する。
「確かに傾国の女を使えば、軽く関東から北は消し飛ばせるな」
「……って事は幸先よくねぇじゃねぇか!バカ野郎!!」
「だから忘れた?奴らはまだ動かないって」
アマンテスがあまりにもあっさり言うので、思わず話の前後を忘れる土方。だが南條も予測していたのか、今朝掴んだ情報を思い出せば、先程離した冷静さの縄をしっかりと握る。
「……悪い、話を続けろ」
「それじゃあ本題の構成員の洗い流しを続けるよ」
「ああ」
項垂れた様子で土方が合図しては、南條はカタカタとパソコンを操作する。するとまず読み上げたのは先程まで噂になっていた影踏の名だった。
「まず、彼の弟の高杉影踏について。彼自体過激派だけど、独断行動は無し。今回の事を鑑みると、魔術と科学両方に関しての知識を持っているのは確からしい」
つまり影踏が行使したのは、魔術か科学のどちらか。
独断行動が無いという事は、やはり今回の事は高杉の命令なのは確信出来た。だが如何なる魔術を使うのか、超能力の使用条件などは流石に南條でも分からないらしい。
「続いて2人目。かの生命装置を開発した天才・樹戸榊。自明だけど、こいつが科学専門の核になってる。非戦闘員っぽいけど、あの生命装置を唯一動かせる人間だから警戒は必要」
「……」
ここで土方と比企が嫌な顔色を浮かべる。何せ彼ら自身その生命装置が如何なる物か上辺だけ聞いていたが話が違う。
生命装置は確かに人の生死を自由に操作出来る。だがそれはあくまで大型の装置だと勘違いさせられていた。
後々に敬禮から没収した生命装置の起動条件で、何となく理解は出来ていたが、あれらに書かれたのは全くの嘘。
南條の言う通り、樹戸が非戦闘員であればいいのだが、彼しか生命装置を動かせない以上、樹戸そのものが爆弾の様なもの。
だからこそ、今この場にいる人間はそれだけでいいと願う事しか出来ない訳だが。
「そして、最後。『生命の樹』でたった1人の女剣客の根城桜。どこかで流派を収めたっていうデータはないけど、京都の事件は全てこいつが担ったそうで。だって全員刀傷があったそうだし」
最早止めと謂わんばかりに告げられた現状。犯行時間が如何なものか、他に同行者がいたかは謎だが、これもある意味馬鹿げている。
近接戦を得意とする新撰組の隊員でも、恐らく同じ事をさせてこなせるのは、恐らく遊佐と斎藤の2人だけだ。
もう止まない頭痛に嫌気が射す土方だが、嫌だと拒否しても現状をまとめる。
「……という事は、相当の手練って訳か。科学、魔術、武力……全ての部門のスペシャリストを迎えた上で、リーダーは高杉か。南條、データ収集ご苦労だった」
「けど土方さん。科学と魔術だなんて対処はどうするつもり?こっちにできるのは近接戦だけなんだから」
長い報告の後、今の土方の言葉に比企が口を挟む。
そう、根城ならば斎藤が抑え込めるが、残り2人は違う。何せ片方は歩く爆弾で、もう一方は人外の化物。仕留めるならば最悪闇討ちか、それなりの戦力が必要となる。
だが、この時比企の問い掛けに対し、土方は笑った。
「スペシャリストなら、こっちにもいるじゃねぇか」
この一言で、比企は思い出す。嗚呼、そうだ。科学のスペシャリストならばこちらにもいるのだ。
「魔術ではアマンテス、科学だったら花村。花村だったら馬鹿力もありゃ、最悪樹戸みたいな爆弾にもなりかねん」
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