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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
1.Down,dawn,dawn…
4/102

Chance meeting-2



「失せろ」



 凛とした声と同時に宙に舞う鮮血。ブラックジャックを振りかざした男が倒れた瞬間に、母禮の瞳に映ったのは、青年と同じく黒い軍服を纏った男。


 そして男の鋭い目つきが、あの日、あの時、あの場所で置いて来てしまった母禮の心を射抜く。


 思い出すあの日の悪夢。もう10年近くも前に、目の前で両親が無惨に殺されるあの光景を。


 放心状態の母禮が青年に見とれている中で、もう1人の青年は「あー、もう!」と悪態を吐きながら歩み寄る。



所以(ゆえん)さんってば、来るの遅いって。」



 所以と呼ばれたその男は、青年のスローな声に気付いて振り向くと、刀を収めては平然と呟く。



「別に俺がいなくともアンタらだけで処理できただろう?それにアンタの事だ。どうせそいつと戦いたかったんじゃなかったんじゃないか?」


「まぁね。けど色々と理不尽な事が混ざってるの分かって言ってる? ……ああ、それと()()()()



 先程まで他所者とされていた母禮に対し、『アンタ』と呼ばれた青年が声を掛けてると母禮は肩をビクリと揺らす。そして青年へとこう返した。



「何故おれが女だと分かった?」


「何でって……まずその筋肉のつき方はどう見ても男じゃありえませんし、骨格も幾分か柔らかい。水泳とかやってたんですか?」



 母禮の疑問に飄々と答える青年。その声色には既に母禮への興味は消えていたが、まるで道化めいた答えぶりに対し、また母禮はこの青年に、別の意味である恐怖を抱かせた。


 そう、青年はどこまでいっても幼さを拭わせない。これが自然体。


 生まれ持って、彼は最初からこういったエゴを振りかざす事が、彼にとっての普通。だから周囲が騒いだとしても動じる事はない。


 既に答えは分かり切っているのに、それでも幼さを残す事は、ある種異様な恐怖と言っても過言ではない。


 無論、青年の言いたい事は自明。何せ母禮は彼の前で言ったのだ。「大鳥に対する狼藉は高いぞ」――と。



「偶然にもこうして大鳥家の人間出会えた訳だし、そっちから来てくれれば得だと思いますけど」


「……」



 つまりは、「共に来い」という強制的な連行。しかし母禮はその問いに小さく頷きだけを返した。





 負傷した隊員は後方に連れていた救急隊に引き渡し、あの幼い態度の青年と『所以』と呼ばれた青年は母禮を乗せて、別のパトカーで新宿へと向かっていた。


 そもそも彼らはどうやらパトロール中だったらしく、丁度傷害事件が続く上野まで偶然出てきていたとパトカーの中で説明を受ける。


 要は母禮を騙した男達こそ、上野付近で強盗傷害事件を起こす連中の一部だという事も軽く説明を受けた。


 そしてパトカーに揺られては1時間後、新宿にある大型マンションへと着く。


 そのマンションは決してファミリー向けではなく、セキュリティは厳重なタワーマンションと言ってもいい。外観こそマンションのそれだが、佇まいこそは何らかの組織の拠点地にしか見えない。


 このご時世でタワーマンションなど、この様な拠点地を構える事など富豪どころか、政府直属の軍組織などでも難しい。だがそれが成り立っている以上、ここに住まう者はそれ相応に国家からの寵愛を受けている事を現していた。


 そう、ここが特別警察組織『新撰組』の拠点である。


 まずは今日の報告をしなければならないと言っては、24階建てのマンションの最上階まで向かい、玄関をノックもなしにガチャリ、と青年――遊佐(ゆさ)相似(そうじ)が先頭で入っては飄々とした声音で部屋へと投げかけた。



「第1・第3部隊只今戻りましたー」



 すると、机に向かっていたガラの悪い男は雑に咥えていた煙草を灰皿へと押し潰す。そして舌打ちをすれば声を低めつつも、張り倒すかの様な勢いで、男――土方(ひじかた)幹行(みきゆき)は遊佐へとこう返した。


「相似、もう夜中の3時だぞ?もう少し大人しく入ってきやがれ、足音がうるせぇ。後、間違ってもオーナーを起こすんじゃねぇ」


「…何で今日の僕はこんな扱いな訳?」



 ここは土方の自室であるのは一目同然だが、そのデスクには書類の山と煙草を異様に押し付けられた灰皿とカップがあるし、そのきつくも色男さを連想させる風貌だが目の下にはクマが深く刻まれている。



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