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「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
「……煩い」
丁度病院内を出てすぐの事。母禮の大声がこの場に響き渡る。
キーンとする耳を抑える斎藤を他所に、驚きで母禮は酸欠状態の金魚のように口をぱくぱくとさせていた。
「斎藤さんて、私より2歳上だったんだ……」
「アンタの想像ではどれくらいだと思った?」
「30くらい」
「………………………………………………………………………まぁいい」
斎藤の長い沈黙の後に、続く不機嫌そうな声。それに苦笑を漏らす母禮だが、話は先程の内容に戻る。
「『生命の樹』との全面戦争……か」
「嫌か?」
嫌と言わんばかりにそう呟く母禮。正直彼女自身、遊佐から一連の騒動を聞けば何とも言えない心地に襲われた。
前々から土方や他の幹部や古参隊員に抱いていた違和感が、今こうして繋がった。
確かに元上司であるならば、部下である彼らならある程度の行動の予測が出来る。だが、そうだと言って、全ての不安が掻き消えた訳ではない。
寧ろ何故同じく世の中を守る事に、こうも差が出てしまうのかと母禮は思う。
それは亡き敬禮や大鳥家、そして新撰組、『生命の樹』と綺麗な程までに分かれている。だからこそ迷いが生じる。
その迷いについては、母禮の憂いに満ちた声が全ての不安を物語っていた。
「少し、ね。何せ新選組も『生命の樹』も根底的な思想は一緒ではあるし、それに今日の話であの高杉灯影が本当に元新選組のリーダーであるならば争う必要なんかどこにもないのに、って」
「争う必要ならば、存分にあるから安心して欲しい」
憂いを吐いて、どうしようもない悲しみがこの場に満ちた時、誰かの声がそれらを引き裂いた。
勿論2人は何事かと辺りを見回す。突如聞こえた声を辿り、今通り過ぎた病院の正面玄関に視線を移す。
するとそこには、いつの間にか有名私立高の制服を纏った少年が立っていた。歳は恐らく斎藤や母禮と近いだろうが、纏っている雰囲気が違う。
一体いつから? 否、自分達が正面玄関を通り過ぎた時にこんな少年など居なかった。
だとしたらこの少年は何処から現われたのか――そんな疑念ばかりが脳裏に過る中、斎藤と母禮は息を呑む。そしてこの少年を見て思う。
彼はそんなそこらの人間ではない。それこそアマンテスの様に森羅万象を己の意とする様な異端者の様な空気が嫌に突き刺さる。
「……誰だ?」
斎藤が十分警戒して、少年へと声を掛ける。無論斎藤は母禮を1歩だけ自分の後ろへと押し込んではある。そして少年はこう返した。
「『生命の樹』所属、高杉灯影の実弟の高杉影踏。少し、そこの女性に用があるんだ」
「用だと?」
女性というのなら、勿論影踏と名乗った少年の用件は母禮にある。だが彼が『生命の樹』の人間であるならば、当然だが警戒を怠る訳にもいかない。
だからこそ、斎藤が母禮の代わりに答えるが、影踏は興味がないといわんばかりの視線を向けた後、斎藤を無視してはこう返す。
「大鳥母禮」
「何だ?」
この場で彼と関わると危険だと思ったが、それでも母禮は警戒しながらも答える。一体彼が『生命の樹』でどんな立場かは不明だが、ここで逃げても恐らくただでは済まされない。
何より、何故『生命の樹』の人間が母禮の存在を知っているのか――それさえも恐怖に感じた。
そう本能が訴える中、母禮が反応すれば、影踏はこう問い掛けた。
「例の傾国の女はどうした?今は所持していないみたいだが。まさか新選組で1、2を争う剣客が傍にいるから不要だと思ったのか?」
「答える義理などない」
確かに母禮は新撰組の隊員だが、常に傾国の女の帯刀を許されている訳ではなかった。
何せ母禮が呪いを制御できても、母禮が新撰組に引き取られた事は政府には内密にしている。それも一応彼女が大鳥家の人間である事に起因しているのだ。
何がともかく、確かに影踏の言う事も間違ってはいない。だがそんな内情を敵に易々渡す訳にもいかず、母禮の代わりに斎藤が答えれば、ようやく斎藤を一瞥して呆れた様に影踏は呟く。
「……ああ、そう」
瞬間、ドガァッと爆音が響き、2人が立っていたすぐ横の地面が抉られていた。
一体影踏が何をしたのかなど、2人には理解出来なかった。だが分かるとすれば、明らかに人間技という常套手段を取った訳ではない事だけ。
「アンタ、一体何をした?」
「簡単な手品の一種でね。挨拶代わりに後、2発はどうぞ」
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