Duties communication
東京タワー爆破から数時間後。朝から悲劇しか起こっていなかった。
「どういう事だね?まさかここまで……」
「しかし我々上層部は新選組に確実に襲撃命令を出しました。ですが、まさか既に後手に回されていたとは……」
「返す言葉もございません」
時刻は午前10時47分。現在警察庁本部で、警察庁上層部と公安庁、そして新撰組の隊長代理である土方、そして先日日本に招かれたアマンテス=ディ=カリオストロは朝から苦渋を噛まされていた。
確かに警察庁の方から、『生命の樹』のアジトと思わしき箇所を制圧せよと言う命令は受けている。
だから自分らは関係がない――この場に召集される前から警察庁がそう言う事など自明である。故に、土方は頭を下げる事しか出来ない。
更には今朝の続報で、東京だけでなく京都の二条城、金閣寺、比叡山延暦寺が襲撃された事もまたニュースとなり世間を騒がせている。無論それを行ったのは全て『生命の樹』なのも自明。
だからこそまた「新撰組の不手際」と責められるのだろうと土方は胃が痛む思いだったが、この場で唯一アマンテスだけは、土方の味方と言う立ち位置であった。
今も椅子に深く腰を掛け、飄々とした態度でこう発言する。
「まぁご老体共、あまり新選組を責めるな。今まで緻密に作戦を考慮し作戦に至った末路は痛手だが、向こうの方が我々より早かったとなれば、ここにいる全員の仕事が遅かった事に変わりはない。それより今後はどうするか考えようじゃないか」
「ッ……」
無論、土方以外の全員がアマンテスを睨むのも無理はない。そのあまりにも屈辱と敵意を向けた視線をアマンテスは見下しながら、鼻で笑う。
「このガキが何を偉そうに……と言いたげな顔だが、『地を這う蛇』に協力を依頼したというのなら当然だ。……で、土方。新選組本部からの報告はどうなっている?」
「他にマークしていた慶應大医学部にも研究材料どころか装置、資料も全て破棄済み。そして関連されていたと睨んでいたビルも全て蛻の殻だったそうだ……と同時に、向こうに忍ばせておいた諜報員も全員死亡が確認されている」
正直、土方自身も多忙な中で叱責を受けにきた訳じゃない。他組織の人間は無能だと知りながらも、現状整理をしなければ、策などは立てられない。
故に新撰組本部を出る前に、雑にまとめた書類に目を通しながら現状を報告した。それを聞いてアマンテスも少しだけ思い悩む態度を見せる。
「ふむ、被害も最悪ということか……そういえば第1部隊の隊長も怪我を負ったそうだな?」
「ああ」
当然、東京タワー爆破後に第1部隊の安否に関しては、回された救急隊から報告を受けている。
報告としては、ほぼ第1部隊は壊滅。爆心地から遠くにいた遊佐と4名の隊員は一命は取り留めたが、他6名と銃撃隊も半壊。すぐに再起など出来る状態になどない。
「……で、この先どうするというのだ?」
そういう警察上層部の人間に対し、アマンテスは呆れた顔でこう返す。
「奴らの本拠地を抑えるのが先決に決まっているだろうに」
「ではカリオストロ様はどうお考えか?」
そう返す公安庁の人間に、「いいぞ」という顔をする人間ばかりだったが、アマンテスはつまらなそうにというより、欠伸交じりに返した。
「地図を用意しろ、京都のな」
「は?」
この時、アマンテスの一言でこの場の空気が凍る。彼の礼儀の持ち合わせない行動にではなく、あくまで彼が地図を要求した事を、彼以外の人間が知る由などない。
しかしアマンテスは一般的な推測ではなく、魔術師としての視線からこの事態を捉えていた。呆気なく声を漏らす全員に対し、どこか苛立ちを覚えながらこう返す。
「だから地図だよ、考えろ。何故奴らは本拠地を東京に構えていると匂わせながら、遠く離れた京都で同じ事をした?これらは明らかに何らかの儀式の準備にしか見えん」
「馬鹿な事を……!」
「おいおい、土方さんや。日本の公安組織はカルト集団から国を守る為の組織なんじゃないのか?」
(……それをここで俺に振るかよ)
アマンテスは堂々と返すが、彼自身日本の組織の詳細についての知識はない。だから勘違いもある事は指摘したいのかと言えばそうではない。
寧ろ土方自身さえ仕組みを理解していないのに、あたかも土方もこれを予測していたかの様に振られると発言に困る。
とりあえず何も返さないまま、リモコンでモニターに京都の地図を映す。一応事件現場となった三ヶ所には赤い丸がついており、アマンテスはそれを見て「ふむ」と頷いては一言。
「もういい。ご苦労だった、土方」
「これで事件が分かったとでも?」
またこの場で困惑が広がる中、1人で納得するアマンテス。だがいよいよ自分だけが黙っていられる事態ではないと判断したのか、その問いに対してこう返す。
「いや、奴らが何故こんな事をしたか分かっただけだよ。そう焦るな、当分奴らは動きやしない」
「は?」
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