meddling
アマンテスがそう言い残すと、一方的に電話が切られる。
「……」
今のアマンテスからの着信と言動を考えては、暫く。
当の母禮はすぐに何かを理解は出来なかったが、何かが引っ掛かって仕方ない。しかしそれは今のアマンテスの発言に限った事ではない。
先の会議での土方や遊佐達の態度といい、何故彼らはこうも落ち着いていられるのか?
そして何より権威があるとは言え、欧州を治める魔術結社が、本来直接日本に助力するなら母禮ではなく、政府の人間を通すのが道理だ。
詰まる所、今母禮が仮定出来る事はただ1つ。恐らく全てを知っている演者がいる。
そして何より、彼らはもう何かを始めるつもりならどうだろうか?
今思い浮かんだ疑念を胸にすぐ様着替えると、 部屋へ飛び出しては24階まで階段を昇り、土方の部屋のチャイムを鳴らすと如何にも機嫌の悪そうな土方が出てきた。
「何だ、大鳥。さっき指示を出したろ、作戦は――」
「土方さん!それが大変な事態なのだ!どうか東京駅まで車を回してくれないか?一々説明するより、一緒に聞いて貰った方が早い!」
「はぁ?まさか今回の作戦に関してじゃねぇだろうな?」
「そうだよ!それに深く関与しているのだ!どうか頼む!」
「なら、少し待ってろ」
母禮は先程思い浮かんだ疑念に焦ったが、演者側であろう土方は、何1つとして焦る事も母禮を追い返す事もしなかった。
短くそう返すと、内線で予備隊を呼び出してはそのまま車を回してもらい、東京駅へと急ぐ中で土方は「なぁ」と母禮へ言葉を投げかける。
「その迎えにいくヤツってのは、何かしらの権力を持った奴らなのか?」
そう静かに聞く土方。彼も彼で、まさか現時点で副隊長兼隊長代行を任された男を部下が連れていくなど言語道断。
しかし土方もまた母禮がちょっとやそっとの事で動じる人間ではない事も知っている。だからこそこれにはどうしてもこういう見解しか出来ないのだ。故に母禮は頷き返す。
「ああ。あの義兄上の問題で、カラクリを全て解説してくれた人なんだ。聞く所によれば、欧州で相当の権力を持つ魔術結社のボスだそうだ」
「魔術結社、ね」
そう呟く土方は、どこからしくなく適当に自ら振った話題を流す。
まるで、触れたくない何かに触れるかの様に
◆
あれから止まった空気とは他所に、一方は東京駅へと急いだ。そして1時間後、時間は経ったが東京駅に着くと、母禮は必死にアマンテスを探す。
するとパトカーを見て気付いたのか、丁度こちらへ向かってくる小さな影絵を見ては、「アマンテス!」と叫ぶ。
「よう、思ったより早かったな」
「まぁ、上司に無理してお願いしたからな。早く車に乗ってくれ」
母禮にそう促されると、アマンテスも後部座席へと乗り込む。土方は席を詰めては「早かったな」と言って、アマンテスへと視線を向ける。
「テメェが大鳥の言っていた魔術結社のボスか?」
「母禮から聞いたのか?」
「少しな。まぁ以前世話になった事については、礼を言っておこうか」
普通に尋ねてくるアマンテスに対し、土方もまた返すが、今の土方の態度が気に食わなかったのか、アマンテスは顔を顰める。
土方も土方で一大事ではあるが、何せ作戦実行前なのだ。いくら前線に立たずとも、万が一の場合は拠点から指示を送らなければならない。
故に腹の心地は決して良いとは言えない。しかしアマンテスの用が何であれ、一応敬禮の件については礼は立場上言わなければならない訳で。それに対し、アマンテスは溜息と共にこう返す。
「……まぁいい。俺は魔術結社『地を這う蛇』のボス、アマンテス=ディ=カリオストロだ」
「新選組の隊長代理の土方だ。……で、その大事な話とやらを進めようじゃねぇか。大体テメェは何で日本に来た?しかも日本国内だけの問題に、どうして他国がちょっかいを出す?」
この土方の発言に対し、母禮は少しだけ驚いた。何せ土方は結局この出来事の結末を全て知っている様な口ぶりだった為、直接アマンテスと面識はなくても、間接的な繋がりはあると思っていた。
だが間接的な繋がりがあれば、もっと早く敬禮の件について依頼をしていただろう。そう振り返っていれば、アマンテスはあっさりとこう返す。
「簡単な話だ」
特に嘆く必要はないのだと、そう区切っては更に話を進めていく。
「『生命の樹』は元々融合結社だ。科学者やならず者だの外国人だのといる中で魔術師も結構いると部下から聞いている」
これだけを聞いて、土方だけでなく母禮もまた、何故アマンテスが新撰組という一組織に助力すると言ったのかを理解する。つまりアマンテスの用件とはこうだ。
「ちなみに貴様はさっき日本国内だけの問題と言ったが、実を言えば俺はここ日本政府に依頼されここまで来たのだ。目的は『生命の樹』の壊滅。正直、奴らの動きや内状からして手遅れにならなければいいが」
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