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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
1.Down,dawn,dawn…
26/102

decapitation



 あっさりとした斎藤の返答に何ら変わらない斎藤の様子を見て、心地良さに母禮は少しだけ口元を緩める。それに対し今度は斎藤が尋ねた。



「そういうアンタも会った当初は俺をよく見ていたが、何か理由でもあったか?」


「……バレてたか」


「ああ」



 またもや変わらぬそっけない返事に、母禮は照れ隠す様に俯いて答える。まだこの問題に関しては解決などまだ1つもしていないのだから。


 だからもう斎藤(かれ)は関係ない、ならもう打ち明けて解放してやってもいいのでは――と、罪悪感を振りしぼりながらこう答える。



「貴方の顔を見た時、おれの両親を殺した男によく似ていたんだ」


「……」


 

 返ってきたのは無言。それも無理はない、あの時斎藤は母禮を救ったのに、勝手に両親を殺した犯人と決めつけられていたのだ。


流石に斎藤でも怒りたくなるだろうと母禮は勝手に彼の心情を推測していた。しかし、それさえ照れくさく感じてしまう。



「最初は疑ったりもした……だが、それはただの思い違いでしかなかった。すまないな」



 思わず苦笑してしまうが、その言葉に間髪いれずに斎藤は呟く。



「アンタの両親を殺した義兄(あに)にそんなに似ていたか」


「……」


 短くも重い一言。それを聞いた瞬間、母禮はふと制止した。今、この男はなんと言った?


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「どう……して……」



 聞き逃せずにいられなかった一瞬。斎藤(かれ)は何故母禮だけしか知らない唯一の事を、何故知っているのかと。



「なんで貴方は義兄さんがおれの両親を殺したのを知っている……?」


「……」


「ねぇ」



 嫌だ、と胸中で母禮は強く訴える。何故、どうして、彼は



「どうして、あの場にしかいない人しか知らない事を知っている!?」



 これの理由が分かった時、導かれる結論はたった1つ。これで全て母禮が10年に渡って苦しんでやっと幕を閉じた悪夢が再び幕を開ける。


 両親を亡くし、唯一の身寄りである敬禮は何より自分達を憎んでいたと知ったあの時、母禮はもう苦しみたくなどなかった。その甘さ故に彼を殺せなかったのに。

 

それでもどこかで傷を癒して生きているのなら、自分を、大鳥という一族を恨んでいても母禮はそれで良かったのだ。


 そして新しき悪夢へと誘う様に、斎藤は口を開く。



「……俺が」



 やめて、と必死に訴える母禮の心。しかしその願いは無惨にも引き裂かれた。



「俺がアンタの義兄を殺した」


「嘘……」



 交差するいくつもの感情に対し、どの感情から手を付ければいいのか分からなかった。否、それとも何もつけない方がよかったのか。ただ真実を告げる声は止まない。



「あの日、俺は少し離れた路上の裏でずっと事の経緯を見ていた。そうしたのは全てを解決出来るであろうアンタが、あの男を殺せない……と」



 まるで斎藤は、最初から何もかもこの悪夢の結末が分かっていたと言わんばかりに告げる。


 そう、それは事実で、何より初めて斎藤が足を潰された時、全て彼は確信していたのだ。


 確かに敬禮が普通の人間であれば、自分や遊佐でも殺せる。だが母禮は如何なる条件でも、敬禮の持つ不条理を全て覆せるのだと。


 (のろい)の付与をこの目にした時、確信していたのだ。そして何より情に厚いこの少女が敬禮を完全に殺せる事など出来やしない事さえ。



「何もかも予想通りだったさ。アンタは結局感情を殺せなかった所為で、アイツを殺せなかった。だから俺が殺した」


「じゃあ、あの時土方さん達との作戦会議の時も……」


「……」



 寄越されたのは無言の肯定。恐らくあの場に斎藤がいたのを知っていたのは土方のみ。


 土方さえも敬禮を実質殺せるのは、遊佐や斎藤だけだと睨んでいた。それは彼らの手腕ではなく、精神的な面での事を仮定して。


 では、敬禮の始末も裏で行えと土方が斎藤に命令した事も否定は出来ない。だがこれは違う。あくまで斎藤は斎藤の意思で、大鳥敬禮を殺したのだ。


 あらゆる期待は全て砕かれた。救いなど微塵にもなかった。



「お前が……」



 必然と震える声。ただ、今のこの少女に宿るのは憎しみだけだ。



「お前が義兄さんを殺したのかッ!」


 憎い、と母禮は思う。でも嫌いになりたくないという思いもまた強く拮抗する。しかし、この感情(ぞうお)を抑えることができない。矛盾だらけの今の母禮を生かすのは紛れもない憎悪。


 殺意を濁す困惑は、彼女が抱いていた理想の斎藤所以を殺すだけで解放してくれる。そう、それだけでいいのに、その困惑が何故こうも殺せないのだ。



.


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