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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
1.Down,dawn,dawn…
24/102

I don't know





 早くも大鳥敬禮が粛清されてから、1週間経った。



 あの夜以降、情報提供者としての役目を終えた母禮。結果として今まで被害が多かった第2部隊の被害を最小に抑えた事を隊員達は、比企から聞かされ、周囲は母禮を高く評価した。


 だが唯一の身寄りであった敬禮を失ったのは事実。正直会津に帰る事を胸中で拒んでいた母禮に対し、比企は土方を説得し、こんな話を母禮に持ちかけた。



「大鳥さん。良かったらさ、土方さんの予備隊に入隊しない?」



 このまま会津に帰っても1人だろうと考え、女性ではあるが、今回の功績に免じてと比企は土方に自分の第2部隊への配属を頼み込んだ。


 それを聞いた土方は案外すんなりとその話を聞いて、なら母禮の身を預かるなら責任を持とうとさえ言った。故にこのまま新選組に留まる事を許されたのだが、あの夜以降、調子が出ない母禮。


 というのも義兄であった敬禮が殺されたという信じがたい事実に対して、だ。


 他の隊員には勿論彼の生死など分からない。だがもし生きていたと知っても、今は地面の下敷きになったから、圧迫され、瀕死の重体だとしか推測出来ないだろう。


 しかしあの後、地面から抜け出したとしても、どうして死んだのか――母禮にはそれが分からない。



「れいちゃん、れいちゃん。魚、魚!焦げてるよ!」


 呆けていた母禮はヒソヒソと耳打ちしてきた遊佐の声に反応し、急いでグリルを見れば見事に朝食で出される鮭は真っ黒に変化していた。



「……すまない、これはおれの分にする」


「それは大いに結構。だけど最近どうしたの?何か考え事してるみたいだけど」


「ああ、少しな……」



 この真実を話せる訳がないと俯き葛藤する中、今度は脇腹を肘でつつかれ、顔をあげれば目の前には斎藤の姿があった。


 別段驚く必要もないのだが、何故か母禮の心臓が早鐘の様に打たれる。少し動揺するも、すぐに母禮は斎藤に挨拶を交わす。



「おはよう、斎藤さん」


「ああ、おはよう。それより大鳥、今日少し時間はあるか?」


「へ?」



 確かに斎藤は1週間前までは母禮の監視役だったが、今ではそれを解任されている上、これといった共通点など一切なかった。


 人付き合いの影すら見せない彼が、自分に一体なんの用があるのかと、それが単純に気になった故にこう返す。



「ああ、あるが……何の用だろうか?」


「少し話があるだけだ」



 話――と言われればますます訳が分からなくなる。否、それよりも何故と母禮は再び悩み込む。



「それって、もしかして最近おれが仕事に身に入っていないからか?」


「……ああ」


「で、どこに行けばいいんだ?」


「悪くなければここから離れた小さな神社の境内に……って、いい加減大鳥の真似をするのをやめろ遊佐」


「……」



 再び考え込んでいた所為で、またこの空間から意識が隔離されていた母禮は、この光景に気付くとまた言葉を失う。


 声が高いとは言え、180後半程ありそうな背丈の青年がまさか自分の似る事のない声物真似をしていたと知ると、別の意味でまた頭を抱えそうになる。


 しかし遊佐はこのやり取りが面白くなかったのか、唇を尖らせては野次を飛ばす。



「ちぇー……折角話に乗り気でないれいちゃんに代わって聞いてあげたのに、それはないんじゃない?」


「単純に気持ち悪い。……で、どうする?」



 今度こそと斎藤が再び母禮に尋ねると、母禮は静かに頷き返す。



「分かった、朝食の後でいいだろうか?」


「ああ。片付けが終わったら、下まで来てくれ」



 短い対話の後、蚊帳の外に追い出された遊佐は、下卑た笑みで母禮を見ている。



「おや~?これはなんだろうねぇー……まさかのデートのお誘いとか?」


「ぶはっ!」


「あ、鮭落ちちゃった」



 あの斎藤からデートの誘いなどという、突然の不意打ちに吹き出した挙句、真っ黒に焼けた鮭が箸から滑り落ちる。



「な、何を言っているんだ!遊佐さん!」



 当然だが、母禮は顔を赤くして遊佐へと詰め寄る。すると遊佐は何故か意味が分からないといった様な表情を浮かべては言う。



「あれ?気づいてないの? 最近、所以さんってば、れいちゃんの事を穴が開くかと思うぐらい見てたりするんだよ?気づかない?」


「し、知らん!大体斎藤さんは監視役だ!監視だ!監視!」


「お兄さんの件は解決したから、もう監視役じゃないよ?」



 斎藤がここ最近母禮の姿を視線で追っているなど、勿論母禮は知らない。だが他の隊員や、幹部らはそれに気付いている。


 母禮も照れた所為か咄嗟に「監視役だ」と返すが、それは一瞬にして論破される。


 なら、否、もしかしたら――などという邪念が更に邪魔をして、もう母禮の頬の温度と胸の鼓動は最高潮に達する。もう箸を思い切り遊佐へと差し出し、何故か取っ組み合い寸前となった。



「う、うるさい!もうこの鮭でも食べてろ!」


「ちょっと待った!それはれいちゃんが責任を持って食べるんじゃなかったのー!?」


「……」



.

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