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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
1.Down,dawn,dawn…
19/102

Suddenly




 男は1歩、1歩と夜闇の道を、踏み締め歩を進めて行く。


 時間は午後9時だと言うのに休日のせいか、流石の地下鉄も混んでいる。


 その事情は分かるが、そんな事を考えていたら何もできやしない訳で。今日もこの都営新宿線に繋がる道をひたすら歩く。とある願いを叶える為に。



「全ては俺自身の復讐の為にな」



 そうして鼻歌を歌うように呟いては闇の中を進む。そして死神の様に(けいれい)が嗤ったその瞬間、人がこの場から、誰1人残さずに消えた。





 同時刻。脱走した大鳥敬禮が出てくるとされる都営新宿線付近を、比企が率いる第2部隊と母禮が見回る中、比企は「おかしい」と呟く。



「え?」



 比企の言葉に思わず驚く母禮だが、比企は訝しそうな表情のまま呟く。



「今日は休日で、一応ここも東京では人通りの多い場所だ。だと言うのに人どころか、タクシーすらないのはおかしいと思わないかい?」


「確かに、そうだな」



 母禮はその比企の言葉に頷く。しかしその瞬間比企は何かを察知した野良猫の様にピクリ、と肩を揺らすと同時に、瞬時にこの場に殺気だけが満ちて行く気配がした。


 酷く濃密なまでの殺気が現すのは憎悪。比企達は()()()に慣れていたとしても、初めて感じた母禮は思わず、その場で尻持ちをついてしまうぐらいに怯えていた。


 何だコレは? ここまで殺すと訴えるこの憎悪は何故こうも、()()()()



「来るよ」



 つかさずそれを討つといわんばかりに、比企は刀を抜いては応戦体勢を取った瞬間だった。


 バキバキと地面を割る様な音と、更には鉄筋を思い切りコンクリートに叩きつけた様な音を立てては、地面から幾つもの鎖が地上に放たれる。



「緊急回避!対象からなるべく距離を取れ!」



 比企の一言に隊員も、母禮も距離を取った中で暗闇の中で誰かがこちらへと向かってくる。


 黒く、肩まで伸びた長い髪と細くも鍛えられた肉体。

 

 暗い中で僅かに浮かぶその輪郭は、一見事細かに整えられた彫像と見間違えるような顔立ち。そう、彼こそが彼女らの怨敵(たいしょうぶつ)



「兄上……ッ!」



 およそ1ヶ月ぶりの邂逅。だが母禮が今まで10年共に過ごしてきた、大鳥敬禮という男と目の前の男がどうしても結びつかない。それ故に悔いからか母禮は唇を噛んだ。



「おや?」



 一方、突如現れた彼――敬禮も母禮の姿に気がついたのか声を僅かに漏らした。すると驚いた素ぶりさえ見せぬまま、淡々と返す。無論だが、そこに罪の意識はない。



「母禮、お前もいたのか。あれほど会津で待っていろと言ったはずなのにな、まさかこの俺を探す為に遥々ここまで来たという訳か」


「心配などではないッ!」



 怒声と共に母禮も傾国の女を抜くと、仮にも『大鳥』の当主であった兄へと問う。



「我々『大鳥』の矜持を主たる貴様が忘れたか!最初は国を守ると豪語しておきながら、仲間を裏切り、寝返っては幾人もの死者を出した!」



 彼が会津にて母禮にいった矜持(ことば)は嘘。そして同じく民を守ると同士に言ったのも嘘。そして何より人が殺せないと善人ぶった事だけは事実。


 無論、こんな事など大鳥という一族が赦すはずもない。故に慟哭と共に、初めて母禮は敬禮の本心と向き合う。



「貴様が決めた矜持とはそこまで安い物なのか!?答えろ、敬禮!!」



 そして、勿論母禮の言葉に端正な顔を歪める敬禮。それは決して、自身の意思と矜持が否定された事に関しての怒りではない。



「当主に向かって……貴様とは口を慎めッ!!」



 そう、当主である自分に口答えをするな。敬い、従う事など許さないという我侭(エゴ)


 まるで彼の怒りに呼応するように1度放たれた鎖がまた地面を走り、地上へと渦巻くが、母禮の足元に現れたそれをいとも容易く『傾国の女』で弾き返す。



「なッ……!」


「アマンテスは言っていたぞ」



 ここで初めて驚きを見せる敬禮。そして母禮は、先程アマンテスから聞いた話をそのままそっくりと返してやる。



「その鎖は北欧神話にてかの凶獣であるフェンリルを縛った鎖、ドローミである事。その縛った形となった魔法陣はたった1つしか存在しない事も。だから法則さえ読めてしまえば、意味がない」


「だから何だというのだッ!」



 地面を走っていた鎖は今度こそはと隊員達を捉えようとするが、それを比企と再び母禮が前線に立って受け止める。



「こっちだって馬鹿じゃないんだ、大鳥。軌道さえ読めてしまえば後は自力が上の奴が勝つに決まってる」


「クソッ!」



 自慢の魔術を行使しても尚、覆された結果。今までは簡単にこれで自分らを始末出来ていたのに、それが破られた結果が屈辱として、敬禮を襲った今、苦渋を漏らす。



「終わりにさせてもらうよ」



 ダッ、と比企が他の隊士と共に敬禮の懐へ入り込み、畳みかけようとした一瞬。しかしその刹那、まるで死神が哂うかの様に、敬禮が口角を上げたのを母禮は見逃さなかった。




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