last night-3
しかし敬禮がどこでそんな物を会得したかは、今考えても意味がない。そしてそんな馬鹿げた事を現実で具現化させる事が出来る方法など、母禮は1つしか知らない。
「……魔術か」
そう重く確信して呟いては、母禮はポケットから携帯を取り出し、とあるダイアルへと掛ければそれる。
一応上司の前で、電話をするのは失礼かと思い返すも、電話を掛けた先の彼は僅か3コール程で出てきた。無論、こんなオカルト話が出てきた時に頼れるのは1人しかいない訳で。
「もしもし、アマンテスか?」
「どうした?こんな時間に」
話の内容に囚われ、完全に時差の問題を忘れていた事を失念するが今はそれどころなどではない。
「済まない、アマンテス。少し相談があるのだ」
「相談?」
決して穏やかでない母禮の声音でアマンテスも一山あると悟ったのか、母禮の不躾とも言えよう行動に、彼が言及する事はなかった。
一方母禮も今土方に説明された事を、アマンテスに伝えてもいいかと問い掛けた。その問い掛けに対して土方は許可を出す。
それら一通り話し終わると、最後に「ああ」と相槌を打っては電話を切り、再び母禮は土方へとこう切り出す。
「土方さん、それに関しての対処は出来そうだ。先程は下がれと言っていたが、どうかおれも前線において欲しい。無論、比企さんの力も借りるが」
すると部屋に同席し、横で話を聞いていた遊佐が真剣な声で言葉を投げかける。
「れいちゃん、それ本気で言ってんの?冗談にしちゃキツすぎるよ?」
「冗談ではなく本気だ。それに捕縛するにも殺すにせよ、これはおれが片付けなければならん問題でもあるんだ。どうか、頼む」
確かに遊佐の言う通り、これはもう冗談かつ自殺志願者の懇願にしか聞こえない。だが母禮自身も様々な事に納得出来てなどいないのだ。
何故人を守る為と虚偽を計らい、新撰組を脱走した挙句、遂には元同僚を蹂躙するのか。
何より大鳥家の当主として、プライドや意思さえないのか。それを確かめなければ母禮は前に進めない。
そんな思いで頭を下げる様子に、土方は笑ってはこう返す。
「いい度胸じゃねぇか。但し、危険だと感じたらすぐに逃げろ。一応テメェも女だしな、俺は女を殺したくねぇ性分なんだ」
一方、土方もその意気や良しと笑った。母禮のプライドなど彼には分からないだろうが、これはあくまで彼なりの恩情と敬意。
そう。例え女の身でも荒事へとその身を投じ、その先の真実を辿る――その姿こそ『彼』と同じだからこういったのだ。
そしてその言葉に対し、フッと母禮は小さく笑ってこう力強く返した。
「死なんさ、絶対に」
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