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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
1.Down,dawn,dawn…
14/102

Sigh




「開けてごらん」



 青年に言われるがままに、包みを解けばそこにはおにぎりが4つと口直しの為か、漬物まであった。すると青年はにこやかにこう言った。



「それ、仕事用に持っていこうとしてたんだけれども君にあげるよ。どうぞ」


「いいのか?貴方のなんだろう?」


「いいって。あの状況で食堂に戻るのは嫌だろうし、これぐらいならまた作り直せるから」



 青年の背丈は母禮とそこまで変わらないが、明らかに歳上だという事は見て伺えるし、何より話し方が遊佐と似ているものの、彼とは違いこの青年の言葉には棘がない。


 ようやく嫌な気分がほぐれてきた母禮は、包みを結び直すと照れくさそうに頬を掻く。



「ありがとう。えっと、名前は?」


比企(ひき)陽弘(はるひろ)。ここの第2部隊の隊長で兼任というか非常勤で保育園の先生もやってるんだ、よろしく」



 そう言って比企は手を差し出し、握手をすれば思わず笑みが溢れる様子に「落ち着いた?」と問いかけられると同時に、比企は苦笑していた。



「相似も斎藤も悪気はないんだよ。ただ相似は身内でこう言うのは失礼だけど、人の命はどうとも思わない性格だし、物腰柔らかそうに見えるけど極度のきまぐれだから」


「ああ…それはなんとなく……」


「でしょ?だから人と話してると地雷は踏むし、ちょっかいも出してくるんだ。だから斎藤の言った通り、ああいうのは無視して構わないよ。それを言ったら斎藤の事もなんだけどね」


「……」



 すると、1拍置いては比企は一言だけ重い調子で呟く。



「君もアイツと同じ『大鳥』なんだってね」


「……」



 この時一瞬、何故か母禮は初めて自身の名に畏怖の念を抱いた。


 何せ、『大鳥』という名を聞いただけで、ここに所属する隊員が誰もが震え戦くのだ。それは昨夜の事で良く分かった事。


 しかし比企はそれに怯える事などしなかった。否、寧ろ彼には理解をしてやろうという思いの方が強い。何せ大鳥家の人間とは言え、比企からみれば母禮などただの少女にしか見えない。


 だから今ここで母禮(かのじょ)に言うべき事は、先輩としての警告。故に真剣というよりも真摯な様子で話を続ける。



「今、俺らは全力でアイツを探してる。大体は予想がつくと思うけど、捕縛される理由はアイツが大きな事件に関わっていて、その情報を手にしているからなんだ」


「大きな、事件……?」



 確かに大鳥家の人間であれば、嫌でも政府との繋がりはある。だからこそ裏もあるのだが、母禮が聞く限りそんな大きな騒動は思い当たらない。


 否、これは大鳥家が抱える問題ではなく、寧ろ新撰組側の明かしてはいけない裏側の様だと比企の口調からは伺える。そしてその問題とはただ1つ。



『生命の樹』(セフィロト)っていう融合結社は知ってる?」


「ああ」


 

 ――『生命の樹』(セフィロト)。それは高杉(たかすぎ)灯影(とうえい)という男が束ねる融合結社である。


 『生命の樹』に所属する者は、科学者・魔術師の他にも武装した集団や不良グループや外国人と国籍や身分さえ統一されていない。謂わば異能者の混合集団である。


 その万人を受け入れる姿勢もあり、中には有名な科学者や魔術師も数多くいる。


 だけでなく『生命の樹』という融合結社は政府にも友好的であるが、それ以上に国民から大きな支持を得ているのだ。


 何故なら彼らは政府と有効的でありながら、今の日本を完全に潰した後に新しく国を建て替えるという目標を掲げている。


 故に反国家勢力や、貧困や今の政治に異を唱える者にとっては最早自由の象徴(シンボル)かつ希望ともいえる。


 更にはそんな思想を掲げているのにも関わらず、政界や各世界機関にまでパイプを持つという新選組とはまた違った立場の集団。


 だが、それと兄の脱走に何の関係があるのかと思っていれば険しい顔で比企は言葉を押す。



「いい?これは上層部しか知らない情報だから、他の隊員に話してはいけないよ?」


「あ、ああ……」



.

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