表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Will I change the Fate?  作者: 織坂一
Will I change the Fate? 後日談 Leave footsteps
101/102

solitary

神崎孝之——もとい樹戸榊は、地上に無き仮想空間・『世界』の一区画である『F-2000x66』へと訪れる。

そこでの彼の仕事は、今は無き「貴族」との会合であった。


樹戸は会合相手である『F-2000x66』の一勢力である『鎮守派』の頭領・ジパードの元に向かい、会合を開始。

しかし、彼はそこである違和感。そしてその先、自分たちが未来に味わうであろうとある恐怖と対面することになる。




2066年、某月。1人の男が世界の果てともいえる隔絶された某所へと降り立った。


男の名は神崎(かんざき)孝之(たかゆき)。日本で外交官を務める男である。


彼の職業柄上、仕事柄で他国に赴くことはそう珍しくはない。ただ今回の彼の任務は地上に存在する他国でのものではなかった。


彼の今回の仕事——それは今の時代に亡き「貴族」とのある「話し合い」だ。


現在、日本を含め世界の各国で貴族制度というものが廃止されているのは周知の事実だ。


しかし今でも尚、貴族という制度が存在し、それは地上とは違う世界にて君臨しようと世にはばたく寸前なのである。


廃止された貴族制度があるこの地上に無き世界——『世界(パラソフィア)』。こここそ人類が失った様々なものを取り戻す理想郷だ。


もはや地上では、領土問題、資源の輸出・輸入問題、各国での外交における不都合から解放されるべく、ある技師(エンジニア)を含む一部の人間たちは世界平和を訴えた。


このままでは地上に生きる人間はその種を存続することすら難しい。だからまた世の中を創り変えて、人類はこの先を生きていく――そんな理想を詰め込んだこの仮想空間こそ『世界』と呼ばれる場所である。


もはや先進国のうち、3ヵ国はこの『世界』に身を投じ、設計の権利を持ったものは本土との争いを一切不要とし、理想に準ずる者だけが今は地上や空とは隔絶された仮想空間で生きる権利を手にしている。


その『世界』のうちの1つである都市・『F-2000x66』に住まう者の理想についてだが、それこそ先にいった貴族制度の廃止。貴族制度を復活させ、過去の栄華を取り戻すという如何にも突拍子もない話だ。


仕事とはいったが、神崎自身これは極秘任務——外交官として自国の民を守るためには仕方なき犠牲として、調査も兼ねて、会合へと来たわけだ。


彼はまず東京湾へと向かい、東京湾に存在する『世界』への入り口であるコロニーへと移動した。そしてそのコロニーからこの『F-2000x66』へと来た。


先も説明した通り、この『世界』とは地上や空と隔絶された仮想空間の1つ。謂わばこの世界を地形ごとコピーし、また新たに文明を築くその発展途上中の場所だ。


言い換えれば、霊的なダイブ法——もしくは、フルダイブのVRゲームに近しい。


そのため、この『世界』はオカルト・科学の両方を用いて創られたという経緯があり、この『世界』に身を投ずるにはまず自身の肉体を捨てる必要があった。


つまり、もう今の時代、平和に暮らすためならば生身など不要——そういった狂った思考が浸透しているわけだが、神崎自身、それについての偏見はない。


彼は『世界』を訪れる約束(アポ)を事前に入れておいたため、『世界』の居住者の収容コロニーではなく、あくまで外来専用の区画へ肉体を置いて仮想空間へと向かう。



「では、こちらでお待ちを」


『F-2000x66』へ到着し、神崎はまずこの『F-2000x66』の首都へと向かった。


その首都には、地上にはない貴族という存在を謳うような屋敷が連なっている。その首都からさらに移動し、西へ。『F-2000x66』の外れまで連れてこられた後に、そこにあった洋館に着き、その洋館の一室へ神崎は通された。


いくら外交官とはいえ、普通であればこんな場所に呼び出された時点で怪しいと政府への報告をするだろう。しかし、会合の内容もあって、神崎はボディーガードの1人すら同行させていない。


なんとも危険にしか満ちていないが、彼自身呼吸を乱すことも、嫌な汗を流すこともなかった。彼の前職を考えれば、この程度のことなど日常茶飯事だ。


現在、神崎孝之と名乗っている彼の本名は、樹戸(きど)(さかき)


1年前まで存在した融合結社・『生命の樹(セフィロト)』での科学部門構成員で事実上のナンバー2だ。同年に特殊警察機構『新選組(イクスターミナー)』との間で起こった戦争に、『生命の樹』は敗北。その後、『生命の樹』は解体され、存命であった樹戸と首領であった高杉(たかすぎ)灯影(とうえい)は逮捕された。


しかしこれはあくまで表側での処理であり、裏では高杉と樹戸の能力を買い、現在政府の監視下の元、改名し、政府に属すというのが真実だ。


また樹戸は世紀の最悪とされる人体実験・『人智繁栄計画』の唯一の成功例で、『人智繫栄計画』後は、超能力者としての才能が開花している。


それゆえに、例え完全防備で銃を構えた軍隊が相手だろうと、彼1人に傷1つ付けることすら難しい、それほどまでの超人なのだ。


備わった能力と修羅場を踏んだ数も桁違いだが、なにより彼が数々の修羅場をくぐり抜けることができたのはその嗅覚の良さである。


危険をいち早く察知し、危険だと判断すれば即座に対処(にげる)——それが彼の数少ない信条だ。


樹戸がこの洋館のとある一室に通されるまで、彼はずっと脳内でこの洋館の間取り図を脳内で描いていた。


先もいったが、どうみてもこの洋館には罠がある。であるなら脱出のルートはある程度考えておかなくてはならない。


そしてある広間へ通され、部屋の扉を開いた瞬間、そこには優しく笑う老婆がソファーに腰かけていた。老婆は樹戸の姿を見るや、すぐに挨拶をする。



「ようこそ。わざわざ日本からお越しくださり、ありがとうございます。神崎様」



老婆は杖で支え、ソファーから立ち上がろうとするも、樹戸はそれを手で制す。



「そのままでお構いなく、どうかお座りになってください。ジパード元王妃」



ジパードと呼ばれた老婆は、樹戸の言葉を聞けばゆっくりと腰を下ろした。そして樹戸もジパードとは向かい合わせにソファーに腰をかける。するとすぐにジパードは樹戸へこういった。



「…さて。今回は急なお呼び出しに応じてくださりありがとうございます。1つお聞きしたいのですが、神崎様は約束通り、1人でここに?」



そういうと、ジパードは細い目をさらに細めて重く樹戸へ問いかける。その言葉に樹戸は薄く笑みを浮かべながらこう返した。



「はい。お約束通り、私はこちらに1人で来ました。なにせ今回は私の無理な申し出をジパード様がお受けしたことで叶ったこと。反故にはできません」



樹戸の言葉にジパードは「まぁまぁ」と撫でるような声音でそう返す。そして目を見開きこういった。



「では、お話しましょうか。魔術結社・『グレゴリオ』について」







そもそも樹戸がジパードと会合をするきっかけとなったのは、アマンテスから『グレゴリオ』という魔術結社の話を聞いたのが事の発端だ。


アマンテスは樹戸に相談するつい数か月前に、土方の力を借りて、『グレゴリオ』の追跡及び情報を得た。そして彼が次に求めたのは『グレゴリオ』殲滅の応援要請である。


無論、樹戸はこれを断った。元々アマンテスから話を聞いたとき、これは魔術協会及び、『地を這う蛇』が対処すべき事態だ。それをこの混乱がまだ冷めぬ日本を巻き込むなど、御免被るのは当然。


ただ樹戸はこのアマンテスの話を聞き、今自身が抱える案件を思い出す。それが『F-2000x66』内で肥大化する政治運動のことだ。


そもそも『世界』は、元よりあった地上とはまた別の世界。それゆえに向こうがこちらに干渉は出来ないし、互いに干渉しあわないのを条件にこの『世界』は成り立っている。


地に住まう者たち――樹戸もそんな話は流す。だがそうもいっていられない事態が起きたのだ。


実は日本でもこの『世界』の設立はすべきと推奨され、現在それに対する論議は国内で繰り広げられていた。


現に理想郷を求め、この『F-2000x66』への移住を申請した日本人も存在する。だが、その移住を申請した日本人の何名かが『世界』だけでなく、コロニーからも姿を消したのだ。


こうなってしまうと、いくら互いに干渉しあわないという約定があったとしても、こちら側が納得できない。なにせこの事件は徐々に表へと流れ始めている。


そうなれば、『世界』の設立は当然不可能。そもそも干渉しあわないという約定を無視して勝手を働いては平和という均衡が崩れる。その対処がどうしても必要なのだ。


そしてこれらの原因を洗った結果、『グレゴリオ』という魔術結社が全ての元凶だったことが判明したのだ。


それが分かるや否や、樹戸はすぐに土方に情報提供するように申し出た。そして土方から得た情報で『グレゴリオ』が隠れ蓑にしている勢力を突き止めたわけである。


それが、今『F-2000x66』で最大勢力を握る『鎮守派』という勢力。


そもそもこの勢力争いは、過去廃止されたフランスの王族・貴族制度を再起させる上で、どちらが上に立つかというのが事の発端だ。


勢力は3つに分かれ、その中でも最も権力があるのは元王妃であるジパードを筆頭とした勢力・『鎮守派(ちんじゅは)』である。


ジパードも廃止された貴族制度の中、フランス王族の血を引くものとし、自身を元王妃とした。これは他の貴族も周知していることだ。


そのため、なまじ権力と味方だけは多いのである。他の2勢力もまたジパードの孫であるが、彼らも彼らなりの信条がある。


要は、『鎮守派』が求めるのは貴族制度の復興・そして統治をすることでまた新たにこの『F-2000x66』を建て直すというもの。陳腐ではあるが、歴史とはそもそも同じことを何度も繰り返すことで、得るものがある。ジパードや『鎮守派』の支援者が求めるのは、過去の栄華だ。


また樹戸はアマンテスから『グレゴリオ』殲滅の要請が出たとき、彼らの危険性を伝えている。それも相まって、隠れ蓑にされた『鎮守派』を崩し、『グレゴリオ』の対策を立てる――それが樹戸の作戦だ。


ただこれは樹戸自身、苦肉の策である。誰でも分かるだろうが、明らかにこれは罠であり、樹戸にとってのメリットなど1つもない。だが樹戸も易々と考えなどなしにここにいるわけではない。


もっといってしまえば、『グレゴリオ』の情報などどうでもいいのだ。


なにせ先に言った『世界』での人攫いが判明してしまえば、本土と結ばれた約定を破ったことが露見する。そうすれば、黙っているものもいないのは自明。さらにどんな理由があれ、人を攫った以上、『理想郷』という美学は崩壊する。


樹戸はこの件については完全黙秘を貫かれると予想していた。なにせ向こうは樹戸達の要求を呑む必要もないし、そもそも関係性があるかといわれれば微妙な話なのだ。


あくまで『F-2000x66』に訪れた者が何人か行方は知らないが、調査を申し出てもそれは不可能だし、なにより『鎮守派』がなぜそんなことするのかも不明だ。


確かに『鎮守派』がこの事を隠しきらなければ、彼らの信頼は地に堕ちて、彼らの掲げる信念は灰となる。では、『グレゴリオ』の真の目的はなんなのかが読めない上に、理屈と繋がらないのだ。


ただアマンテスから聞いた話、『グレゴリオ』の祭り上げている主要人物はかの魔術協会が禁忌指定とした神の成り損ない。


それらを祭り上げ、こんな場所を隠れ蓑にするとなると、短絡的に考えれば彼らの目標は世界征服か何かか。


なんにせよ、ここで『グレゴリオ』の存在が露見すればアマンテスがそれを逃がさない。


だったらアマンテスらと『グレゴリオ』が勝手に争ってくれれば、彼らの問題は解決するし、樹戸自身面倒を抱えなくて済む。


ゆえに樹戸がこの会合を密会としたのは、恐らく今後自分たち――否、世界に危害を加えるであろう『グレゴリオ』の確かな炙り出しのためだ。


そこで叶うならば、ジパードをこの場で抹殺し、『鎮守派』の首を落とす。そして『鎮守派』に守られていた『グレゴリオ』を後はアマンテスらに任せればいい。これがこの会合の目的だ。


いつから自分は暗殺者に成ったのかと問いただしくもあるが、別にそれは構わない。そんなことは『生命の樹』で散々繰り返してきたことだ。


だからこそ、暗殺の面においても優秀な彼はこの場でたった1つの違和感を感じていた。


その違和感とは、この部屋に自分とジパード以外誰もいないということ。


確かに秘密の会合としてあるが、護衛の1人もいないとなると、警戒心が強い樹戸は逆に焦ってしまう。しかし彼はその焦りを微塵も見せることなく「どうぞ」と静かに返す。そしてジパードはこう切り出した。



「『グレゴリオ』は神の成り損ないであるディオニソスが立ち上げた魔術結社。全員が魔術師で、魔術師以外入ることなどできないところです。そんな彼らがここまで魔術にこだわるのはなぜか分かりますか?」



ジパードの切り出しは至って普通だ。しかし、どこか自身を誘導する節があると樹戸は察知する。そして樹戸はこう返した。



「…私は魔術に幾分疎いものですから、あくまで予想しかできません。…そうですね、恐らく魔術でしか成せないことがある。例えば…そのディオニソスという存在を神に昇華させる、というのが妥当でしょうか?」


「ええ、そうです。だからそのぶん昇華に必要な魔術媒体を集めるには、それなりの権力は必要にな

るのですよ。となると『鎮守派』(わたしたち)は非常に都合がいい」


「つまりは『鎮守派』の方々も幾分かの搾取を受けている、と?」


「そういうことです」



おかしい――このとき樹戸はいよいよ自身の警戒心が頂点に達するのを感じた。


『F-2000x66』で権力・発言力のあるジパードが、こんな小学生でも理解できるようなカラクリになぜ乗っかるのか、そこがどうみてもおかしいのだ。


なにかある、そう感じて樹戸はここで勝負に出た。



「では、あなた方が彼らに搾取されて、得られる対価とは?」



そう、核心をつく。

なにより、この言葉こそが合図だった。


それは樹戸も理解している。だから自身の超能力の演算をすぐさま行う――そしてジパードは不気味に嗤った。



「あなたの始末です、樹戸様」



瞬間、部屋のドアを黒い閃光が突き破る。


樹戸はすぐさま演算を開始し、念動力を利用して自身に来るであろう障害物を防ぐ手に出る。案の定、部屋を突き破った黒い閃光は、樹戸の喉元まで迫ってきたのだ。


ガキィンッと甲高い金属音が鳴り響けば、ジパードは煙のようにこの場から姿を消した。


杖を持っていたことから、ジパードは足が悪いのは容易に予測できる。なにより、ジパードは樹戸をこの場に呼び出す餌。だが『鎮守派』の頭を失えば、『グレゴリオ』にも支障が出る。あまりにも稚拙な利害関係だと思う中、樹戸はスーツの胸ポケットから、2枚の小さな金属板を取り出し、それらを宙に投げた。


そして演算をすまし、手をかざせば金属板からは光線が走る。光線は部屋の壁を射抜き、壁は砂糖菓子のように呆気なく崩れた。


粉塵が舞う中、樹戸の視線の先に立っていたのは1人の青年。



「君は……」



黒い髪に焼けただれた右半身と蒼く輝く眼孔。


右腕は黒いアームと化し、残った左腕すら3分の1しか残っておらず。


なにより、その鋭い目つきと有名私立高校の制服を着た青年は紛れもなく、高杉(たかすぎ)影踏(かげふみ)という死者を現わしていた。



「どうも、樹戸さん。もう2年近く経つんでしょうか、あの地獄から」



樹戸はあの一夜の戦争後、自ら警察に出頭したため、同時刻にアマンテスの処理を任された影踏の行方など知らない。


だが、影踏が超能力使用をするにあたり、彼の足りない脳のスペックを貸し出していたのは紛れもない樹戸だ。


彼が演算方法を誤り、挙句自身も花村への攻撃に多大な演算を用いたため、影踏の脳が負担に耐え切れずに自壊するのは目に見えていた。


だからこそ、なぜ彼がこうして生きているのか樹戸には理解できなかった。


樹戸ですら思考回路に支障をきたしたのに、ただの人間である影踏が思考回路の破損や脳へかかった負担の修復など出来るはずがない。


そんなことを出来るのは、この世で樹戸1人のみ。だからこそ樹戸が理解したことはただ1つ。



「……神の成り損ないに魂でも売ったのか。そんな地獄から抜け出したということは」


「さぁ?」



らしくもなく内心焦る樹戸を見て、どこか影踏は喜んでいた。


樹戸は影踏との付き合いは割と長く、彼の実兄である高杉灯影よりも交友はあったともいっていい。


さらに自身の脳を貸し出ししていたということは、一時的な記憶や感情の共有もしていた。


だからこそ、影踏には例外的になにも見えないはずの樹戸の思考回路が読んで取れる。この状況は樹戸にとっては()()だ。


だが、そんなことは影踏にとってはどうでもいい。



「…そうだね、君の目的は――」


「ええ、あなたの抹殺だ。それだけのためにジパードを餌にここに呼び寄せた。無論、あなたが表向きに追っている事案さえもね」



瞬間、黒い右腕のアームは霧散し、その場から消えた。


しかし、それらは上へと放たれ、下へと矢のように降り注ぐ。


これだけならばまだ防ぐ手立てなど、樹戸には腐るほどある。しかし、影踏が放ったのはこれだけではなかった。


霧散したアームは上だけでなく、樹戸の眼前、さらには背後を取る。()()()()()()


全方位からの攻撃を察知すると、すぐに樹戸は自身の周囲に念動力を張って、アームへの対処をとるが、ここでまた違和感を察知した。


超能力を使用するにあたり、それが相手にとって効果的なものなのか引き当てることは重要なことである。


例えばこの場合、影踏がアームを放っても、それが樹戸に弾き出せるものならば樹戸はそのままの状態を維持すれば防ぐことが出来る。


しかしこのとき、樹戸は演算を済ませた後、このアームの威力を自身が今展開した念動力でははじき出せないという結果を導き出した。


超能力者として戦闘において超能力を使用するなら、これを知っていなければ意味がない――ゆえに防げないと知ると、さらに演算を開始。


摩擦では防御不可。


重力の反発による威力半減、それではこちらが競り負け、全方位のうちどこかは防御できずに撃ち抜かれる。


ならば、一時的に空間を切除。さらに切除をした後に再構築——これならば一時的に防ぐことは可能。


自身の(アラート)に従い、樹戸は空間切除を試みた。しかし、空間切除の演算を追加で行うなど、脳への負担が尋常ではない。


なんとか樹戸は攻撃を防ぎ切ったが、影踏は間髪入れずに再び光線を放ち、それらは二重の膜を張った。つまり、今起こった全方位への攻撃を2発ほど撃ったわけだ。


さらに樹戸はこれの防御に対する演算を開始。一撃目を防いで二撃目が放たれるのに0.00003秒。回避は不可能。


そして樹戸はこの二重の光線による攻撃の他にも、自身の首が刈り取られるのを察知した。それに対する回避の演算も開始。しかし、これらを回避した後に回避するなど不可能。


導き出された結果は死。


どれも回避が不可能なら、空間ではなく自分自身が別の場所に転移すればいい。もはや苦し紛れの離脱策だが、これも樹戸にとっては詰み。


なぜなら、影踏も一時期だが超能力者としてその力を振るっていた。だからしようとすれば演算方法は覚えているし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


なにより樹戸の性格を熟知している影踏にとって、事前に樹戸がこの洋館の退路を覚えていることも読める。


だから、空間移動をさせたとしても自分にとって優位なのは変わらない。


そしてこの結果も、樹戸は知っている。


攻撃の回避どころか、この場からの離脱も不可能。ましてや影踏の攻撃を返すだけの演算をする暇もない。



「……なら、とっておきの方法を取らせてもらおうか」



影踏の攻撃に対し、これを上回れるだけの光線の威力を算出を開始。しかしどうあがいても間に合わない。


この洋館を燃やすための補助に使えそうな火炎瓶などは持ち合わせておらず、まともに使えるのは粒子型高速光線砲のみだが、それも間に合わない。



「だからあなたは虚空(そら)算出()すと?」



樹戸が演算を終えたその刹那、洋館は跡形もなく消し飛んだ。否、()()()()()()()()()


彼が選んだのは、一時的なブラックホールの精製。しかしそれは酷く不完全で、一時的な多大な重力崩壊を起こしただけ。


無論、不完全とはいえこれだけの超常現象を顕現()した以上、樹戸も無事では済まない。しかし、なぜか影踏は重力崩壊に飲まれることなく、今もなお樹戸の目の前にいた。



「馬鹿な……」



確かに樹戸の脳内(なか)でこれこそ影踏を追い詰める打開策だという結果が出た。だというのに、影踏は目の前におり、少しだけ咳き込んだだけ。


そして影踏は元々端正だったその顔を不気味に歪ませては嗤う。



「まさかこんなことしでかすとか、樹戸さん映画かなにかの影響でも受けました? ……まぁ、薄汚く臆病なあなたらしい回避法ですが」



尚、樹戸達の真上にあるはずの虚空は、消滅していた。


既に思考が追い付かない樹戸は、今度は脳ではなく自身の第6感に検知方法を替え、今のこの状況を知ることになる。


つまるところ、影踏は今の一瞬であの重力崩壊をさらなる圧力で壊したのだ。



お久しぶりです、織坂一です。


またもや、前の更新から間を置いて申し訳ありません。

なんかもう初めから『世界』だの『F-2000x66』だの色んな用語ばかり出てきて分かりにくいと思います。正直自分でも嫌気が射します。


まず、この『世界』についてですが、本文にもある通り地上とは別の世界です。

要は「この地上を全部コピーして、人類を、文明をもう一度創り直そう!!!」というものです。ざっくりというとね。

この『世界』の成り立ちにおいては第二部で明かされるので今は伏せますが、魔術と科学を混合させた結果、こんなものが爆誕したので、今では一部の権力者はみんなこっちに来てます。(他にも色んな事情を抱えている人もいますが)


…それで、『F-2000x66』というのは、この『世界』の一画区(地上でいう国のようなもの)です。他にも2つほどあるのですが、それもまた名前は違いますね。


後、『世界』の名前『パラソフィア』の意味は『パラ(ダイス)=楽園』+『ソフィア(英知)』といった感じですね。要は『英知の楽園』という意味です。即興でつけてしまったので、カッコよさもクソもない。



なにより、ツイッターでも呟いていましたが影踏君は生きていました。

どうみても復讐者へのクラスチェンジですね、ありがとうございます。


第一部を見てくだされば分かるのですが、正直影踏の自滅に関しては「自業自得」と思うかもしれませんが、彼の自己肯定感の低さ+樹戸が初めて影踏を認めた存在だからこそ、影踏は一時樹戸さんに依存して、彼に超能力者の師として仰いだわけです。


現に影踏の超能力者としての適性は並程度なので、超能力使用に必要な演算などそうできるはずもなく…であの自滅です。でも本人としては樹戸さんが憎いんですよ。その理由はまた追々……。


というより、樹戸さんの戦闘能力はもはや人間ではないので、なんでもやりたい放題です。そして易々とそれを誘発させる影踏も影踏。


そして割と知的に見える樹戸さんですが、割と脳筋です。だって普通生きてればこんな超常現象出さずとも生きていけるんですもん。戦闘慣れしてはいますが、彼は逃げられなくなったらゴリ押しするタイプです。天才ってなんだっけ?


なんにせよ、本文にもあるとおり影踏は以前超能力を使用していた際に、樹戸さんの脳をお借りしていたので、ある程度彼のことは分かりますし、超能力を使っていたため、どんなことが出来るか、その演算方法も分かっているんですね。

だから樹戸さんとしても、ありえないほどの演算を要する簡易ブラックホール出現を試みるも、影踏はブラックホールを上回る「何か」で対抗して無傷というわけです。



ここから先はひたすら悪夢しかありません。先に明言しておきますね。

めっちゃ影踏が活躍するので、影踏が好きな人・樹戸さんが不憫な目に遭うのを見たい方は次回の更新をお待ちください。(ぶっちゃけていうと、この後は別に読まなくとも第二部を理解できます)


では、また次の更新にてお会いしましょう!



織坂一

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ