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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
1.Down,dawn,dawn…
10/102

Day-2




あれから大鳥家の本屋敷に移動し、暫く談笑しては食事を摂り、出された料理の大半を平らげた頃にアマンテスが口を開く。



「しかし、本当に礼はいいのか?お前にとって些事でもこちらは大助かりなんだ。美味い西洋料理が食いたいとか、旅行をしたいだとか何でもいい、全て叶えてやろうじゃないか」


「……さっきからその言葉を何度も聞いているのだが。そういえば……あまんてす?は欧州にある魔術結社のボスなのだろう?」


「人の名前をカタコトで言うな。ああ、無論そうだとも。『地を這う蛇』の権力は多大なものでな、世界中の魔術師を動かす事だって可能だ」


「ふむ……なんだか凄いような……」



 幼い風貌にこの子供の様な態度からして、失礼であったがこれ程までの事を叶えられる気が微塵にも感じられない。否、もしかしたらあり得るかもしれないだなんて妙な気持ちが拮抗する母禮。


 そんな母禮の態度に対し、少し気を悪くしたのか、少し顔を歪めてアマンテスは言う。



「『ような』ではなく、凄いのだ。魔術にも色々と種類はあるが、おまじないといった些細なものから戦闘に使える大規模な術式もある訳だ。核兵器や金がなくとも、それを叶えられる……魔法などと言ったら陳腐ではあるが、そう遠くもない代物だ」



 そう言っては味噌汁を啜って沈黙するアマンテス。酷くいたいけな冗談の様に苦笑して母禮は言ってみせた。



「魔術師や錬金術師であれば、なんでもできそうだなぁ」


「だからそうだと言っている。お前は何か叶えたいものとかあるのか?」


「ある、と言えばあるかな」


「それは聞いて良いものなのか?」


 

 流石のアマンテスとは言え、ある程度の礼儀は弁えているのか、母禮の言葉にまずワンクッションを置く。すると母禮はすんなりとその続きを言ってみせた。



「うむ、力が欲しいのだ」


「力?」



 勿論首を傾げるアマンテス。だが母禮もそこら辺には気が回らない上に素直な性分故、何もおかしい事はないのだとまずこの話を持ちかけた。



「ここ大鳥家ではな、珍しい呪いがある」


「ほう」



 興味が湧いたといわんばかりの感嘆。そしてそれはどんなものかと答えを促されれば、さらりと何もないように答える。



「非現実的な現象でなければ何でも起こせる。例えば、これは父様(とうさま)の能力だが重力に関しての干渉ができるといったものだ」


「それもなんだか反則的ではあるが……成程。しかし、お前にそういうものはない訳だな?」


「そういう事になる。けど、どうしても欲しいのだ」


「それもまた何故だ?」


「報復の為、人を殺す為だ」


「……」



 母禮が放った冷えた言葉に、一瞬時が止まる。当然だがこんな「人を殺す為に力が欲しい」などある意味正気な話ではない。

 

 暫くカチャカチャ、と食器の音だけが響き、無表情となりながらも食事を終えたアマンテスは「ご馳走様」と手を合わせては先程の続きと言わんばかりにこう言った。



「そんなお前に良い物があると言ったらどうする?」


「?」


 ()()()とは果たして一体なんなのか。それは人を殺す為に必要な知識か、それとももっと別の何かか――そう母禮は脳内でその言葉の意味を吟味していると、アマンテスがこう返す。



「報復を遂げる為の道具の話だ。お前がまだ『呪い』に縛られていないなら、()()と共に誓約を結べばいい」



 はっきりいってアマンテスが何を言っているのか分からない。頭の上にはてなマークを浮かべると、アマンテスは小さく嘆息した。



「解らんか。まぁいい」



 やれやれとした顔で答えては、アマンテスはポケットから宝石の破片を取り出し、コツコツと配置しては何かを唱え始めた。



「主よ、どうか我に幸福(ちから)を与え給え。我は無力だが、毎夜天使に誓い、此処にまたこれを願う。この祈りは傾国の美女によって答えを導き賜え」



 すると、宝石を置いた箇所から魔法陣が床に出現し、そこから鈍色の十字架が現れた。理解が追いつかずに驚愕する母禮だが、アマンテスはその鈍色の十字架を手に取る。



「こいつはスレイヴという、謂わば魔剣なのだが、別名では『傾国(けいこく)(おんな)』と呼ばれる特殊な物だ」


「『傾国の女』……?」


「つまり、はだ。お前の『呪い』をこれに流し込むんだよ、その名の通り魔力さえ通せばそこらの名刀より優秀だ。まるで国1つさえ傾ける程のな。本来なら儀式に持ちいるが、人を斬る事さえ()()()()()()()()



 そう言われ『傾国の女』受け取れば、それはとても重く、冷たかった。まるでその名の通り、国さえも動かしてしまう美女の冷笑の様に。


 国を動かす程までの力を秘めた魔剣。そして己の力量――ここで、ようやく母禮は『呪い』と共存する方法を知ったのだ。



 カシャン、とあの時『呪い』と共存する力を一瞥すれば、そっとベッドの横に置き、自身もベッドに横になっては目を瞑る。


 後悔しなかったと言えば嘘になる。しかしその反面、これが『傾国の女』があったからこそ、今の自分があるのだ。


 故に問題があるとしたら、呪いが暴走した原因にある。自分が知らない所で兄がしてきた事、そして自身の親を殺した男によく似た斎藤(おとこ)との邂逅。



「果たして……」



 本当に誰が自分の両親を殺したのか。小さな胸の痛みに少し魘されながらも、眠りについた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 未来の話でありながら、世界観のガワは逆に古めかしいのが退廃した雰囲気を演出しています 文体もどこかそっけなくて枯れた感じのあるのがいいですね [気になる点] 魔術師……この時点で型月の香り…
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