右側通行
年取った男が歩いている。
彼は、家を出て少しいった、この幹線道路沿い、商店街へ通じる道を毎日散歩していた。 彼には、散歩をするときの悩みがあった。それは、「歩道の右側と左側、どちらを歩くべきか。」という問題だ。
右側通行が基本なのだから、当然右だろう。そう思ったこともある。だが、前方から左側によって歩いてくる人がいる。そうすると「どちらがよけるか。」という問題が生じる。彼は、見るからに人がよさそうなので押しが弱く、正面から来た人は、「あんたがよけろ。」という、無言の圧力をかけてくる。しかたなく左によけると、「右側通行」で前から歩いてくる人がいて、これをまた、よけなければならない。
よく考えると、前からこちらに向かって歩いてくる人も、こちらから向こうに歩いて行く人も、左右、好きなほうを歩いている。そうすると、彼は、毎回人をよけさせられ、ジグザグに歩かなければならない。
彼は、きょうもしかたなく、歩道を右に寄ったり左に寄ったりしながら歩く。そして、相手は、ずっとまっすぐ歩いているということだ。
「ああ、なんてしゃくなことだ。」
しかたがないので、彼は、すべてを受け入れて歩くことにした。
「これも、私の人生だな。」
などと、感慨にふけったりする。
右側を歩いていると、また前から人が来た。その後ろにも右に寄った人が続いている。そして、左側にも人が居る。
右にも左にも寄れずに歩いていると、後ろから、
「ちょっとっ、道の真ん中歩いて。じゃまよ!」
無理に追い越していく自転車に、彼は拳を突き上げた。
「うるさい、このヤローっ!」
おわり




